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第24話「処刑」


「最初から全力だ……! ――《神位》放流」


「ほう、さすれば我も対抗しよう! ――《神位》放流」


 世界が侵食を始める。


 神殿の中心でお互いの【理想】が衝突し、せめぎ合いを始める。


 俺は、「【復讐】のために!」


 〈メタ〉は、「【正義】のために!」


 なにが正義だ、ふざけるのも大概にしろ!


 必ず殺してやる! 微塵も残らないくらいに!


 ――惨殺だ!


 お互いの世界の侵食は依然、拮抗状態を維持し続けている。


 俺の復讐心は《放流》され続け、放流世界内では復讐心に比例して黒炎がけたたましく燃え盛っている。


 お互いの世界の侵食が続く中、このままでは埒が明かないので、先制攻撃を仕掛けたのは俺からだった。


 黒炎を〈メタ〉目掛けて放射。


 〈メタ〉は光の槍で一掃。


 その隙をつき、大剣を大振りで斬り込む。


 しかし、その斬撃を光の槍で防いでくる。


「なかなか良い攻撃だ」


「そりゃどうも」


 激しい攻防が続く中で、〈メタ〉は問うてくる。


「――復讐の果てに貴様は何を望む」


 ――瞬間、思考が止まる。


 そんなことを考えたこともなかった。


 〈メタ〉を殺せば俺の復讐は終わる。


 その先に待つものとは――。


「――そこが貴様の脆さだ、復讐者」


 気づけば光の槍が心臓へ迫っていた。


 すんでのところで躱したが左肩を光の槍が貫く。


 拮抗状態にあった放流世界は〈メタ〉が優勢に傾く。


 ジリジリと迫る死の予感は俺を焦らせる。


 好機とばかりに〈メタ〉は光の剣を生成し、上段の構えから勢いよく振り下ろしてくる。


 俺は直前で、手斧を盾にし防ぐ。


「貴様はただ我に復讐をして、自分の欲望を満たしたかっただけではないか?」


「俺は……」


 俺は自分の欲望を満たす為だけに復讐を……?


 俺は全て自分勝手で、我儘を正当化しようとしていたのか……?


 優和も復讐は望んでいなかった……。


 俺の行いは間違っていたのか……?


 ――いや、違う。


 この復讐は確かに欲望を満たすための身勝手なものかもしれないが、だからといって誰かを無差別に殺していい理由にはならない。


 凛、父さん、母さん、芥徒……そして優和、ごめん。


 俺は無差別に殺された命たちを見過ごして、それを許してまで、のうのうと生きていけるほど器の広い人間じゃないみたいだ。


 だから俺は復讐をする。


「俺が復讐をするのは自分の欲望のためだ。俺はお前に殺された命たちを見過ごせるほどできた人間じゃないみたいだ」


 手斧を盾にして、何とか耐えていたのを、勢いよく弾き返す。


 その反動を利用して、手斧で攻撃を仕掛ける。


 しかし生成された光の剣で防がれる。


 押されつつあった放流世界を、再度互角の状態まで持ち直して、距離を取り大剣と手斧を構え直す。


 復讐心に共鳴するように激しく黒炎が燃え盛り、大剣は黒炎を纏う。


「ほう、自らの悪行を開き直り、正当化したか。しかし、我が理想の下では許せぬ。終わらせてやろう、その貴様の復讐劇を」


「お前の理想がどんなものか知らないが、ここで終わらせてもらう」


 勢いよく踏み込み、大剣と手斧のコンビネーションで相手に攻撃を仕掛けていく。


 〈メタ〉はそれを光の剣と光の槍で上手くいなしていく。


 だが、大剣の一振りが〈メタ〉に届く。


 傷口からは黒炎が溢れ出し、燃え盛る。


「――ッ! 貴様ァ!」


 〈メタ〉は光の槍で俺を振り払うような横薙ぎ。


 俺は1度距離を取り、再度、武器を構え直す。


「俺はこれからお前を殺す。――お前は許されるべきじゃない、惨殺してやる」


「我は貴様を舐めていたようだな。ここからは本気でいかせてもらおう」


 〈メタ〉は右手を上にあげると、


「――荘厳なる槍々よ、我が正義の名のもとに罪深き愚者を……」


 詠唱を唱え始める。


 その隙を見逃さず、勢いよく鎖を投擲する。


 しかし、それは弾かれ、自身ののもとへ戻ってくる。


「――チッ!」


 なにかこのままでは危険な臭いがする――! なんとかして詠唱を止めないと。


 俺は勢いよく走り出す。大剣の柄を強く握り、引きづられている大剣は地面と擦れ、火花を散らす。


 そのまま下段から思い切り振り上げる。


「――断罪せよ!」


 刃が迫るその瞬間、詠唱が終わりを告げる。


 ――刹那。


 身体中に筆舌に尽くし難い痛みが走る。


 思考が唐突の痛みに追いつくまでさほど時間は掛からなかった。


 気づくと左腕、右腕、腹部、右脚、左脚と光の槍が刺さっていて、身動きが取れなくされていた。まるで磔にされているようだ。


「――ッ! ウアアアアアアアア!」


「私の《神位》の能力《処刑》だ。詠唱を必要とする代わりに必中必殺の攻撃となっている。いまのお前、『復讐者』にはお似合いの光景だ」


 なんとか引き抜こうとするが、四肢全てに光の槍が刺さっているため身動きが取れない。


 いまの姿は初めて〈メタ〉と対面した時のように四肢全てが拘束されている。


「クソ! クソ!」


 早くどうにかしなければ……。


 こちらに迫り来る〈メタ〉。


「形勢逆転だな……貴様との戦闘は久々に楽しかったよ。さらばだ。復讐者」


 〈メタ〉はこれから俺の首を断ち切ろうとする光の剣を生成し、その獲物を振り上げる。


 俺は命を刈り取られるのを今か今かと待つことしか出来ない。


 しかし、〈メタ〉の背後に誰かの陰が現れる。


「――ッ! 貴様!」


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