第23話「〈メタ〉」
「どうもー、よろしくです」
気怠げな調子で挨拶をする【No.2】。
「え、あの、ルシア……このひと世十字軍の人だよね?」
「あぁ、色々あって〈メタ〉の場所まで道案内をしてくれることになった」
「えぇ……」
困惑した様子を見せるシル。俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
すると唐突に腕をぎゅっと抱き締められる。――ロゼッタだ。
決して小さくはない程よい大きさの胸が腕に当たり、内心ドギマギしてしまう。
「……ワタシのルシアくん」
ロゼッタは俺の腕を強く抱き締め、【No.2】の方に殺意を向けている。
「あー、大丈夫です、ロゼッタ様。アタシとコイツはそういう関係とかじゃないンで」
両手を挙げて、無実だというポーズを取る【No.2】。
「……ん」
「とりあえず、この人はいまは味方だと思っていいんだよね?」
シルは【No.2】のことについて俺に問うてくる。
「あぁ、その認識で間違いない」
「なら挨拶した方が良いよね! 僕はシルファ・ストームベルトだよ、よろしくね」
「ファル・リチウムですー。【No.2】だと呼びづらいと思うンで、ファルって呼んでくださーい。まぁ、道案内するだけの短い付き合いですが、よろしくですー」
【No.2】もといファルは己の名前を名乗り、相変わらず怠そうに挨拶をする。
「ルシアだ、よろしく頼む」
「じゃあ、早速ですけど、〈メタ〉様のところに行きましょうか」
「あぁ、早速だがよろしく頼む」
ファルの先導で〈メタ〉のいる場所へ案内を受けることになる。この先に何が待っているかはわからないが、ついに〈メタ〉のところに……!
――必ず殺してやる。奴だけは許さない。
「――待って、〈メタ〉の神殿まではどうやって行くの?」
シルは疑問をファルに投げ掛ける。
「そうですねー、直通のリフトがあるンでそれで行きましょうか」
「そんなのがあるのか」
「そうなんですよー」
「じゃあ早速行こうか」
シルはいつもより真剣な顔をして、キャスケット帽を直しながら言う。
――――――
――リフト前にて
リフトは白銀の装飾が施されており、華美な雰囲気を纏っている。
「これがリフトですねー」
「――何が起きるかわからない。早く乗ろう」
何が起きるかわからない、というのは口実だった。
実際は〈メタ〉が目の前に迫っていることを考えると内心、気持ちが急かされていた。
早く、早く、1秒でも早く〈メタ〉の下に行き、復讐を果たしたい。
気持ちだけが先走ってしまう。
「ルシアくん、様子がおかしい」
ロゼッタは唐突に不思議なことを言い出す。
いや、いつもの事なんだが、それ以上に含みがあるような……。
「……別にそんなことはない」
「いや、おかしい」
ロゼッタはやけにしつこく問い詰めてくる。
こんなことは初めてのことだった。
「…………なんでそう思うんだ?」
俺は問う。
「わからない。だけど、ルシアくん落ち着きがないように感じる」
「……そんなことはない」
心中を覗かれたかのように当てられて内心焦る気持ちに襲われる。俺はその焦りを悟られないように冷静に告げた。
「……ん」
ロゼッタは感情の読み取れない相槌で返事をする。
「じゃあ乗るですよー」
「行こう」
「……そうだね」
俺たちは緊張の面持ちで白銀のリフトに乗り込んだ。
――――――
――〈メタ〉の神殿にて。
荘厳な建物。神々しさがあり、重くのしかかってくるような重圧感がある。
「ここが〈メタ〉様の神殿ですねー」
「……やっとここまで」
遂にここまでやってきた。
ここまで色々なことがあった。長かった。
優和、父さん、母さん、凛、芥徒。
――お前たちの仇は必ず俺が取る。必ずだ。
「早く行こう。いますぐに」
「ルシアくん……」
「なんだ?」
「いや、なんでもない……」
「なんでもないなら、呼ばないでくれ」
俺は語気が強くなってしまったことが、申し訳なく思った。
「……ん」
必ず復讐を成し遂げる。誰にも邪魔させない。これは俺だけの復讐だ。
「んじゃあアタシは道案内も終わったンで、この辺で失礼しますねー」
「あぁ、短い間だったが助かった」
「いえいえー」
ファルは手をヒラヒラとさせ、その場から立ち去って行く。
別れというのは呆気ないものだ。
そして眼前には豪華な装飾が施された重々しい扉がそびえ立つように鎮座している。
「ついに入るんだね」
緊張感を孕んだ口調でシルは告げる。
「あぁ、行くぞ」
その重々しい扉に俺は手をかけ、開け放つ。
――刹那。
光の槍が殺意を持って襲いかかってくる。
――不意打ち!
「――《神位》開……」
俺は《神位》を開放する前に右手に光の槍が突き刺さる。
「――ッ! クソッ! シル、ロゼッタ俺の後ろに隠れろ!」
シルとロゼッタを俺の後ろに退避させ、右手に刺さった光の槍を抜く。《神位》のお陰で傷は一瞬で塞がる。
「ルシアくん!」
「ルシア、大丈夫!」
「あぁ、大丈夫だ……」
「よくぞここまで来た。あの時、殺した筈だが、やはり死んでなかったか。ようこそ、我が神殿へ。挨拶は如何だったかな」
「あぁ、最高の挨拶だったよ。そして――ずっとお前に会いたかったよ」
「ほう、それは光栄だな。〈ゼロ〉に愛されし者よ」
〈ゼロ〉に愛されし者……?
〈メタ〉はよくわからないことを言っている。
「言ってることがよくわからないが、お前にはここで死んでもらう!」
俺は今度こそ《神位》を開放する。
右手からは黒い靄が溢れ出て、両の手に大剣と手斧が生成される。
大剣を中段に構え、手斧を逆手に持ち、その上からクロスする。
「お前だけは許さない。――惨殺だ!」
「我を惨殺とは大口を叩けるようになったな。来い、相手をしてやる――!」




