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第22話「【No.2】」



「――作戦を決行する」


 俺は決意を固める。


「ルシアくん、無理しないで」


「ロゼッタの言う通りだよ! いつもみたいに無茶したらダメだよ!」


「あぁ……行ってくる」


 俺はそのまま走り出す。


 静寂とした市街地を、わざとバレるように黒炎を出しながら走る。


 周囲からこちらを覗く数々の視線を感じる。


 恐らくメタ領の住人の視線だろう。


 まるで監視されているみたいだ。


「見つけたぞ!」

 

 そんなことを考えていると白銀の鎧で身を包んだ世十字軍の1人に見つかった。


「【No.8】! 相手はひとりだ陣形を組み、取り囲め!」


 【No.8】と呼ばれる男性に【No.1】は指示を出す。


 俺は再度黒炎を出し、煙幕変わりに使い、相手の視界を奪っていく。


「【No.1】様! 視界が奪われました!」


「狼狽えるな! 引き続き陣形を組み、取り囲め!」


 俺は《神位》を開放し、左手に鎖付きの手斧を生成する。


 その後、引き続き黒炎を出し、視界を奪っていく。


 その隙を狙い上空にいる世十字軍の1人【No.8】に向かって鎖を飛ばす。


 【No.8】に絡みついた鎖を手繰り寄せ、手斧で首を掻っ切る。


 ――1人撃破。


 そのまま俺は黒炎で視界を奪い、鎖での奇襲をしかけて1人、また1人と世十字軍の連中を撃破していく。


 

 ――――――


 

 ――市街地の外れ


 半分ほど世十字軍を減らしたとき、俺はいつの間にか残りの世十字軍の5人に囲まれていた。


「貴様を随分と舐めていたようだな。あの出来損ないと、翠色のキャスケット帽をかぶった白髪の青年はどこに行った」


 【No.1】と呼ばれる男性は問うてくる。


「さあな」


 俺は素っ気なく、素知らぬ振りをする。


「まあいい、どうせ皆、死ぬのだからな」


「【No.1】様ぁ、あいつひとりに部隊が半壊ですよー。どうしますー?」


「【No.2】様! ぶっ殺せば死にますよ! ぶっ殺しましょう!」


「ぶっころそー! ぶっころそー!」


「何言ってんですか【No.4】【No.5】。当たり前のことをそれっぽく言うなー」


 【No.4】と呼ばれた少女は、三白眼の眼をキラキラさせながら、純粋そうに言い、【No.5】と呼ばれた瓜二つの少女はそれに賛同する。


「ともかく取り囲むことに成功したので、彼の命はここまででしょう」


「【No.3】油断するなー」


 気怠げに【No.2】は言う。


「数的有利をとっているのはコチラだ。このまま押し切るぞ」


 【No.1】は冷静に言い、右手を上げる。


 世十字軍の皆は【No.1】のその合図に合わせて、一斉に光の槍を構える。


「それで俺を殺せると思ってるのか?」


 俺はやや挑発的な発言をする。


「あ? ちょーしのってんじゃねぇぞ。まじぶっ殺す」


「殺しちゃえ! 殺しちゃえ!」


「殺しちゃお! 殺しちゃお!」


「落ち着け、【No.2】【No.4】【No.5】。安い挑発に乗るな」


「はーい」


「「面白くなーい!」」


 【No.2】は先ほどまでの殺気は失せ、気怠げに応答する。

 その横で双子らしき【No.4】【No.5】は不満を漏らしている。

 

「……最期に何か言いたいことはあるか?」


「ないな」


「なら、死んでもらおう! ――総員攻撃準備! 放て!」


 【No.1】の攻撃開始の合図とともに放たれる光の槍。


 5本の光の槍が迫り来る中、俺はやけに落ち着いていた。


 俺は棒立ちのまま、静かに呟く。


「――《神位》放流」


「――ッ! まさか! 急げ! 総員退避!」


 一瞬にして場の空気が変わる。


 いや、俺の《神位》が世界を侵食する。


 放たれた光の槍ごと巻き込むように、変化していく世界は血が付着した数々の武器が存在しており、肌がピリつくような黒炎が至る所で燃え盛っている。


「貴様、まさか《神位》の放流!」


「悪いな、こんなところで負けてられないんだ。本気でいかせてもらう!」


 世十字軍の連中を鎖で縛り付け、円柱の黒炎を浴びせる。


「【No.3】! 《神位》で皆にバリアを貼れ!」


「かしこまりました!」


 【No.1】は【No.3】へ指示を出すと、世十字軍の面々はみな黒炎から透明な緑の球状のバリアに守られる。


 俺の攻撃の後、【No.4】【No.5】が鎖と黒炎を抜けて、光の槍を持ち嬉々として襲いかかってくる。


「アハハ! 楽しいね! 死んじゃえ!」


「ウフフ! 楽しいね! 死んじゃお!」


 ふたりは抜群のコンビネーションで攻撃を仕掛けてくる。


 しかし、その攻撃をいなし、目の前に迫ったときに無惨にも円柱の黒炎で消し炭にする。


 黒炎が消えた場所には消し炭になった2人の死体。


「貴様ァ!」


「待て! 【No.3】」


 【No.2】の静止も無視して、立ち向かってくる【No.3】。


 【No.3】の攻撃を軽く交わし、左手に出現させた手斧で首を断ち切る。ぼとりと落ちる【No.3】の首。


「次は誰が来る?」


「どうしますかー【No.1】様ぁ、状況的にも圧倒的不利ですね」


「奴がここまでとは……! 想定外だ! こんなはずでは、私たちが負けるわけがない……! 嘘だ、嘘だ!」


「あー、ダメだこの人…………アタシ、降参します! 《神位》の放流までされたら勝てっこないんで」


「【No.2】! 貴様何を言っている! 最後までたたか――」


 【No.2】と呼ばれる女性は瞬時に光の槍を手に生成すると【No.1】の心臓を貫いた。


「グフッ……【No.2】貴様ァ!」


「普通に考えて勝てるわけがねーでしょ、頭沸いてんのかキモ上司」


「恨むぞ……【No.2】」


 【No.1】は呪いの言葉を吐くとその場で絶命した。


「いいのか、そんなことをして」


 俺は問う。


「おっけーです。放流世界内なんで身内殺しも無効でしょうし。何より死にたくないんで」

 

「そうか、淡白なんだな」


「そーですねー……んで、私は降参したわけですけど、何したらいいですか?」


「お前は〈メタ〉の居場所を知ってるか」


「あー、それは教えられないですね。アタシら〈メタ〉様に監視されてて、裏切りに値する行為をした場合、殺されちゃうんで。……ただ、この放流世界内でなら大丈夫か。〈メタ〉様は上空に存在する神殿にいます。この放流世界を解除して、上見たら一発でわかるです」


「あぁ、わかった。教えてくれて助かった」


「いーえー、こちらこそ助けてくれてありがとです」


 【No.2】は気怠げに言う。


 俺はそれだけを聞くと、《神位》を解除した。


 けたたましく燃え盛る黒炎は鎮火されていき、血塗られた武器たちは消え去っていく。


 侵食していた世界が元に戻っていく。


「んじゃ、アタシは部隊が全滅したこと〈メタ〉様に報告するンで」


「あぁ……」


 ――刹那。


 【No.2】に光の槍が飛んでくる。


 俺はそれを左手に生成した手斧で弾き返す。


「――ッぶねぇ! やっぱり許されなかったかぁ……その、ありがとです。また貸しが増えたですね」


「いや、敵対してない人物が目の前で死なれるのは胸糞悪いからな」


「……バレてたんならもういいかぁ、〈メタ〉様のところまで案内しますわ」


「本当か……!」


「はい、いつ殺されるかもわかったもんじゃないんで……んじゃお仲間さん連れてれっつごー」


 気怠げに、間延びしたように言う彼女は先をそそくさと歩き始めた。

 

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