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第19話「再開」


「やはり知らないのか……無知なヤツめ、低脳で無知な貴様にもわかるように教えてやる。〈ペタ〉の行ってきた所業を」


 〈ペタ〉の行ってきた所業とはなんだろう。


「〈ペタ〉は人間と人間を組み合わせて、改造している。それも自分の領地の人間も()()だ」


「は……?」


 どういう意味だ、領民を改造している?


 そんなのゆるされていいのか。


 いや、待てよ。もしかして……。


「いや、ちょっと待て、『含め』ってどういう意味だ!」


「ハァ……無能な貴様にもわかるように教えてやろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()|。いまでは〈果ての獣〉としてそこらを蔓延っているだろう」


「……は?」

 

 思考が止まる。

 旧世界……人類……改造……。


 何故〈ロレ〉が旧世界を知っているのか、なぜ旧世界の人類が改造されたのか……。


 情報の処理が追いつかない。考えることを拒んでいる。


 その隙に〈ロレ〉はまたヌボーを切りつけ、ヌボーは地に伏せる。


「もう一度、言ってやろうか? 旧世界の人類はみな、〈ペタ〉に改造され、〈果ての獣〉として――」


「――待て、お前に聞きたいことがいくつかある。お前はなぜ〈果ての獣〉の秘密を知っている。そして……お前は誰だ?」


「仕方ない、私が丁寧に教えてやろう! 過去に旧世界で〈ペタ〉が侵略してきたとき旧人類を〈ペタ〉はモルモットとして捕まえたのだ。軽蔑すべきことだが、それを私は見ていたからな」


 ――再度、思考が停止する。


 俺が殺してきた〈果ての獣〉が……旧人類だったっていうのか。


 俺は…………俺は…………!


 追い打ちをかけるようにそして、と〈ロレ〉は続ける。


「まだ気づいてないのか無能め。――それとも一緒に飯を食べた旧知の友のことも忘れたか?」


「――お前! もしかして芥徒(あくと)か……! 芥徒なのか!」


「あぁ、そうだとも! やっと気づいたか無能! いつ気づくのかと思ってほくそ笑んでいたわ!」


「……芥徒、生きていてよかった……だが、なんで俺と敵対する?」


「よくも……よくもお前がその口を利けたな! 俺はずっとお前を探していて恨んでいた! お前に復讐するために、俺はここまで生きてきた!」


 芥徒は背後に無数の【剣】を形成し、こちらに切っ先を向け、無数の殺意を俺に向かって発射する。


「………なんで、なんでだよォ!」


 こちらへ向かってくる無数の【剣】を大剣で迎撃しつつ、吼える。

 しかし何本かうち漏らし、右腕と左脚に突き刺さる。


 突き刺さった剣を抜きつつ、俺は芥徒に問う。


「なんで、なんで……俺を恨む……」


「――ッ! ほんとうに、ムカつくやつだなァ! 俺が1から説明してやらないと何もわからない無能が!」


 芥徒は先程までの口調とは打って代わり、昔のような砕けた口調で俺を罵る。


「だけど、お前の罪を思い出させてやる」


「俺の……罪?」


「そうだ、お前の罪は優和を見殺しにしたことだ!」


「――そんなことない! 優和は確かにあのとき……」


 俺は下を俯き、拳を握りしめた。


「いいや! 優和は生きていた! 俺が見つけたときには微かに息があった……! それなのに一緒にいたはずであろうお前は優和を……よくも、よくも見殺しにしたなァ!」


「芥徒……」


 優和はあのとき〈メタ〉の攻撃で確実に絶命していた。


 恐らく芥徒は受け入れられない現実から幻か何かを見ていたのかもしれない。


「芥徒……優和は死んだんだ!」


「そうだ、お前のせいでな! ――俺はお前に復讐する。優和もそれを望んでるはずだ!」


 また無数の【剣】を形成し、こちらに発射してくる。


「優和は復讐を望まない!」


 俺はそれを弾き返さずに、急所だけ外すように避ける。芥徒の叫びをひとつも聴き逃したくなかったからあえて弾き返さなかった。


 剣は腕などに突き刺さり、血が噴水のように溢れ出す。


「うるさい! お前に俺の苦しみも、優和の苦しみもわかるわけが無いだろう!」


「俺にはお前の苦しみはわからない。だが優和は復讐を望んでいない! あのとき、昼食を一緒に食べたとき言っていたじゃないか!」


「わからないのなら、余計な口出しをせずに死ね!」


 先程の量とは比べ物にならない程の【剣】を形成して、発射してくる。


 この量を真っ向から受けると死ぬ――。


 ――刹那。


 目の前に何者かが現れ、迫り来る【剣】の群れを凄まじい速さで撃ち落としていく。


「ルシアくん、無茶しないで。まだ愛殺してないから」


 ゆったりとした声でこちらを心配してくれるのはロゼッタ・マリィ。


「チッ――こんなところで油を売っていたのかロゼッタ。さっさとこちらに来い。いまなら世十字軍(せいじゅうじぐん)へ戻ってきてもいいぞ」


「ワタシは戻らない。愛殺する運命の相手を見つけたから」


 いつも見せるゆったりとしたイメージとは違う鋭い殺気を纏い言うロゼッタ。


「ロゼッタ達は知り合いなのか」


「知ってた人……もう知らない。ワタシのルシアくんを傷つける人はワタシの敵でしかない」


「――出来損ないのアバズレが……! なら貴様ら揃ってさっさと死ね!」


 無数の【剣】を形成し、発射する芥徒。


 短剣を持ち、迎撃のために身構えるロゼッタ。


 俺はロゼッタの前に立ち、大剣と手斧で【剣】を振り払った。


「――ロゼッタ……ここは俺にやらせてくれ。いや、俺がやらなきゃいけないんだ」


 ロゼッタは安全な場所にいてくれ、と俺が言うと、

 

「ルシアくんがいいなら……」


 ロゼッタはスッと安全な場所まで後ろに下がる。


「降りてこいよ、喧嘩だ。思う存分ヤり合おうぜ――芥徒」


 俺の右手からは黒い靄が溢れ出て、いつも通り両手には大剣と手斧が握られている。

 

「お前がその名前で俺を呼ぶな! ――ズタズタに殺してやる!」


 上空より降りては来ず、数本の【剣】を形成する。

 それらを俺に向ける殺意のまま発射させる。


「無駄だよ、芥徒」


 迫り来る剣の群れを払い除けるように大剣で一掃する。


 そのまま上空まで飛び、大剣で一閃。

 芥徒が避ける隙をつき鎖を投げつけ、弾き返す前に縛り付ける。


 その勢いのまま上空から叩き落とす。


「クソ! クソ! なんでだよ! なんでお前はさっきから余裕そうなんだよ!」


「一緒に、話そう……芥徒」


「俺は話すことなんてない! お前は優和の仇! お前は優和を見殺しにしたんだ」


「…………俺が優和を守れなかったこと、悪かった。お前の心にも、お前の優和への好意の気持ちも何も守ってやれなかった……全部、全部俺が悪かった。――だけど、もう優和は死んだんだよ、そろそろ現実を見よう芥徒」


「…………うるせぇ! 俺にだってわかってるよ。そんなのわかってる! だけど、このどうしようもない感情はどうしたらいい! 琉紫亜にも、誰にも責任なんてないんだってわかってる……俺は弱すぎた。だから〈メタ〉の神子になって、復讐するために、いるかどうかもわからないお前をずっと探し続けていた」


 俺は縛り付けていた鎖を自然と解いていた。


 芥徒からの殺意は消えていたから――。


 芥徒は泣いていた。静かに。

 

 あの時の想い出を噛み締めるように。


「すまなかった……琉紫亜、また俺たちやりなおせるかな」


「あぁ……やりなおせる――」

 

 ――刹那。


 光の槍が上空より降り注いだ。


 ――グサッ。


 先程まで芥徒がいた場所に鮮血の花が咲く。


 芥徒がいる場所には無数の光の槍が刺さっており、串刺しになっている。


「うぁ……あぁ……」


 声にならない声が漏れる。


 芥徒が死んだ。


 誰が?


 〈メタ〉だ。この光の槍は〈メタ〉のものだ。


 いや、また〈メタ〉の関係者かもしれない。


 この際どちらでもいい……許さない。


「うわあああああああ!」


 俺は吼える。このやりようのない思いを抱えて。


 殺してやる。――惨殺だ。必ず。


 ――瞬間。


 身体から黒炎がとめどなく溢れ出してくる。


 炎の勢いは止まらず、燃え盛る。


「制御……できない……!」


 俺は制御できない黒炎が溢れ出て止まらなかった。


 まるで復讐心に呼応するように。

 

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