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第18話「進軍」


 俺たちはペタ領を出て、メタ領に向かっていた。


 道中、特に何事もなく進んでいく。


「ルシアはさ、なんで復讐なんてしようと思ったんだい?」


 唐突にシルは復讐について聞いてくる。


「……〈絶対者・メタ〉に俺の大切な人たちを殺された。だから俺は〈メタ〉をゆるさない」


「それならさ、〈ゼタ〉様とかは関係ないんじゃないのかな? ルシアの大切な人たちを直接殺したわけじゃないんだろう?」


「あいつらは俺の故郷も奪い、自分たちの新世界を創世した。遠因だとしても大切な日常を奪った〈絶対者〉は同罪だ。俺は〈絶対者〉をゆるさない」


「そうかい……」


 シルはどこか遠い目をして、ぽつりと呟いた。



 ――――――



『やあやあやあやあやあやあやあ! 会いたかったよ!』


 ――俺は会いたくなかったよ


『なんでそんな事言うんだよぉ……拗ねちゃうぞ♡ 今回は可愛く言ってみました。どうですか? 楽しい? 嬉しい? もしかして悲しい?』


 ――あぁ、たのしいたのしい


『やったー! たのしいって言ってもらえてボクは嬉しいヨ!』


 ――それで今日もなにか言いに来たんだろ


『そうだとも! 君は《放流》状態に至ったもの同士の闘いをきちんと理解してるかい?』


 ――どういう意味だ? 〈ゼタ〉との戦闘があるじゃないか。それではダメなのか?


『あぁ、わかってないよ……ボクは悲しい! 〈ゼタ〉くんは特殊だよ。《放流》状態に至ったもの同士の戦いは「理想の押し付け合い」になったりするんだよ! 自分の思い描く理想、こうしたい、あれしたいを《放流》するんだよ。君の場合、「〈絶対者〉を殺したい」だネ。まあ、その理想が具現化して君たちの武器になったりするわけだけどね。《神位》所持者はスケールの違いはあれど、みんな常に理想の押し付け合いをしてるわけだ。』


 ――なるほど、《放流》段階に至ったもの同士の闘いは、己の理想を押し付け合いになるということだな。


『そうさっ! ただね、理想は《放流》されるから理想の押し付け合いになるとぶつかり合うよね。ぶつかり続けると、いつか負けちゃうときもある! そうなったら相手の有利な条件で闘わなくちゃいけない! そうなったら大変だろう! だから理想は強く持たなくちゃネ!』


 まあ、と〈ゼロ〉は続ける。


『ここまで長々と話したけど、闘ってみればわかるヨ! あ、展開する時は「――《神位》放流」ってカッコよく言うんだよ〜! アハハ!』


 楽観的な笑い方をする〈ゼロ〉。


『じゃあ僕はそんなところだから! いつも何もわからないキミに説明してあげてるボクに感謝するんだよ〜! まったね〜』


 ――ズブン


 沈む、いつも通り慣れた様子で沈んでいく。


 深く、深く海の底へ。



 ――――――

 


 俺たちはヌボーが待つ、目的地に到着した。


 そこにはヌボーがいつもと変わらない、ぼーっとした様子で立っていた。


「またせたな」


「…………」


 俺の一言には何も反応せず、光の柱を指差した。


「いく」


 ヌボーはそう言うと、歩き始めた。


 ――刹那。


 空中より剣の雨が降り注ぎ、ヌボーの脳天を突き破り、彼は呆気もなく地に倒れた。


「ヌボー!」


「よくもぬけぬけと私の前に現れたな――貴様!」


 そう言うのは空中からこちらを見下してくる〈ロレ〉の姿。


「〈ロレ〉……なんとなくお前と会う気がしていたよ」


「『感動の再会』というわけか……!」


 皮肉を言う〈ロレ〉。


 俺は何も言わずに《神位》を顕現させる。


 右手からは黒い(もや)が溢れ出し、両の手には馴染んできた大剣と鎖付きの手斧を持っている。そこから黒い炎が闘争心に呼応するように燃え盛っている。


「ほう、貴様もそこまで至ったか。どれ程のものか遊んでやろう」

 

 〈ロレ〉は高圧的に言うと、背後に【剣】を無数に出現させた。

 全ての切っ先が俺の方に向き直り、【剣】として形をなした殺意は一斉に放たれた。


 俺はそれを大剣で一掃する。


「舐めてるのか? 芸がないじゃないか」


 俺は〈ロレ〉に対して挑発をする。


「貴様ごときにはその程度で充分かと思うてな!」


 さらに先程の倍の【剣】を形成して、撃ち込んでくる。


 大剣と手斧で弾き、落としながら、距離を詰めていく。


 ――隙を着き鎖を蛇のように、うねらせ〈ロレ〉に投げつける。


「小賢しい!」


 ――カキィン。


〈ロレ〉は鎖を難なく弾くと、再度【剣】を形成し始める。


 ――しかし。


 何度も続くのが鬱陶しく、形成した【剣】を鎖でまとめて撃破していく。

 

「チッ――やるようになったではないか」


「だいぶ色々合ったのでね」


 軽い会話を挟む。


 ――刹那。


 倒れていたヌボーは突如起き上がり、〈ロレ〉へ勢いよく拳を振り下ろす。


 ヌボーはまるで何事も無かったかのような傷ひとつない状態で起き上がった。


 振り下ろされる拳を〈ロレ〉はスッと避ける。


「チッ……〈ペタ〉の人造人間か」


「人造人間……?」


「〈ペタ〉の人造人間すら知らないのか――低脳め。低脳の貴様にもわかりやすく〈ペタ〉の行ってきた所業でも話してやろうか?」


 いちいち鼻につくやつだ。


 わざとやってるのか。


 いや、心の底からやってるのだろう。


 ここまで嫌われる行いはしてないはずだがな。


「〈ペタ〉の行ってきた所業……?」


「やはり知らないのか……無知なヤツめ、低脳で無知な貴様にもわかるように教えてやる。〈ペタ〉の行ってきた所業を」


 〈ペタ〉の行ってきた所業とはなんだろうか……。


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