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第15話「戦士」


 〈果ての獣〉は殲滅した。


 俺が殲滅する頃には既に日は落ちていた。


 獣たちの死体が積み上げられ、月明かりがその上に立っている俺を照らす。


 両の手に握られていた大剣と手斧は黒い靄となって、霧散していく。


 現状、虚しさだけが残る。

 失われたセリウスと市民たちの事実は変わらない。


 俺はこれから先、背負っていく十字架が増えた。


「ルシアくん、お疲れさま」


 ゆったりとした口調で、声を掛けてきたのはロゼッタ・マリィ。後ろで手を組み、首をちょこんと曲げている。


 彼女から初めて会った時に感じた、殺気は全くというほど感じられない。逆にたまに見せる恍惚とした表情から察して、特殊な感情すら向けられているように感じる。


「……あぁ」


 どこか人と喋る気になれない俺は素っ気なく返事をしてしまう。


「どうかしたの……体調悪い?」

 

「いや、なんでもないんだ」


「……なんでもよくない。ルシアくんは私のモノだから全てを把握していないといけない」


「ハハッ……なんだそれは」


 俺は軽く笑みがこぼれた。


「早く話した方がいい」


 俺は少し悩んだ末、セリウスのこと、市民たちのことについて打ち明けた。


「なんだ、そういうこと」


 そう言うとロゼッタは唐突にこちらに、にじり寄ってきて俺の身体を抱き締めた。


 ロゼッタの胸からはほんのりと薔薇の香りがして、俺の鼻腔をくすぐる。


「大丈夫、あなたの傍にはワタシがついてる。例え、世界があなたの敵になったとしても、ワタシはルシアくんの味方」


 そう言うロゼッタはどこか優和を想起させた。


 俺はロゼッタの身体から離れると、


「ハハハッ……ありがとう、すこし元気がでたよ」


 と言った。


「よかった」


「シルがまた心配しているだろうから戻ろうか」


 俺たちはシルの下へ戻ることにした。



 ――――――



 ――旧世界でのとある日常


「琉紫亜! 一緒に帰ろ!」


 優和が俺のいる机までやってきて、亜麻色の髪をなびかせて元気よく言う。


「あぁ、一緒に帰ろう」


 僕たちは教室を出て、校門へ向かい、いつも通りの帰路に着く。


「優和……」


 僕は道路の真ん中で子犬が倒れているのを見かけた。


 近くに寄って、抱きかかえると既に魂は抜けていて、まるで人形のように軽くぐったりとしていた。


「優和……」


「……轢かれちゃったのかな」


「埋めてあげよう」


「うん……そうだね」


 僕たちは近くの河川敷に行き、子犬を埋めてあげた。


 僕は少ししんみりとしてしまった。

 優和は何となく察したのか、そっと抱き締めてくれた。


「大丈夫、きっとこの子は天国で元気にしてるはずだよ」


 ふわっと柔軟剤の香りが鼻腔をくすぐる。

 不甲斐ない気持ちと、少しの羞恥心で、僕はすぐ離れた。


「もう大丈夫だよ、優和」


「そう? ホントかなぁ?」


 イタズラな笑みを浮かべ、ニヤニヤとこちらを覗き込んでくる。


「嘘じゃない!」


「ごめん、ごめん! からかいすぎちゃったね。さ、帰ろっか」


 僕たちはまた同じ帰路に着いた。



 ――――――


「ルシア、生き残ったゼタ領の人達はどうしようか?」


 生き残った人達、どうすれば良いだろうか。


 このままでは〈果ての獣〉の脅威に晒されるのは、目に見えている。

 カリンのときのような町を形成するにしても、時間がかかるだろう。


 ……どうしたものか。


 するとゼタ領の市民の人々がこちらへ歩いてきて、険しい顔をしてこちらを睨みつけてくる。


 睨めつけながらゼタ領の市民の1人は告げる。

 

「俺たちは住むところと、〈ゼタ〉様を殺したことは許さない。だが、俺たちを救ってくれたことは感謝せねばならない。俺たちは『戦士』だ。自分たちのことは自分たちでどうにかしよう」


 俺は彼らは守るべき「弱者」ではなく、「戦士」だということを忘れていたようだ。


 彼らならきっと大丈夫だろう。


 ――そう願って、俺は踵を返した。

 

 

 ――――――



 「ルシア、次の目的地は決まってるのかい?」


 シルは唐突に尋ねてくる。

 次の目的地か……。


 考えることは山積みだ。


「もし、何も決まってないならペタ領に向かわないかい? ここからそう遠くないからね」


 ペタ領、今現在いる場所が南に位置するとしたら、西側に光の柱が見える。


 いま《神位》が《放流》段階まで至ったとはいえ、〈ロレ〉と戦闘の後に〈メタ〉との戦闘はリスクがある。


 ここはペタ領を目指した方が賢明か。


「あぁ、ペタ領に向かうことにしよう。ロゼッタとそれでいいか?」


 沈黙を貫いていたロゼッタへ確認のため話を振る。


「大丈夫、問題ないよ」

 

「じゃあ! ペタ領目指して、いざしゅっぱーつ!」


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