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寝取られ裏切られた最弱テイマー〜逆境を跳ね除け相棒のスライムと最強へ成り上がれ。許して?やり直して?絶対にイヤだね〜  作者: 月鈴
迷宮都市ビギナリア編

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鬼の子と呼ばれて

【エスナ視点】


 私は生まれた時から、罪を背負っていた。偉いお坊さんなどは『違う』と否定してくれるのかもしれないが、私の生まれた村では……私は明確な『悪』だったようです。


 ゴブリンという魔物を、知ってるだろうか? 人を攫い、殺し食料にする。ただし女の人は……子供を産ませられる。それは偉い人でも、貧乏人でも、冒険者だろうと、村人だろうと……


 よく英雄譚とかで謳われる、ゴブリンからのカッコいい救出劇。女の子は皆さん、憧れがあるはずです。私もそうでした。それは母親の話を聞くまでは……


『鬼腹』……ゴブリンやオークといった人族とまぐわい子を成す種族から、陵辱された女性に送られる蔑称です。

 そうです。私の母親は、ゴブリンに連れ去られた中の一人だったのです。そして、運好く助けられた。


 しかし、地獄はまだ続くのです。村へ戻った母は同情や温情ではなく、罵声と軽蔑の嵐だったようです。

 実際に母は碌な仕事にも就けず、好きな男にも見限られ……絶望の毎日だったようです。


 しかしその中で私が産まれ、生きる希望が出来たとよく聞かせてくれました。父親は……誰か分からないそうです。村人達は……その、全員母と……その中には、母が恋した男もいたようです。


 私が生まれてからは、母は笑うようになったと聞いた事がありました。

 二人での生活は不自由なモノでしたが、母は優しくとても美しかったので気にはなりませんでした。


 しかし、物心が付く頃には私には『鬼の子』と呼ばれ、石を投げられたり、押されて転ばされたり、酷い時には暴力も……


「うえ〜ん、お母さん痛いよ〜。エスナは、悪い事をしてないのに……」


「ゴメンね。お母さんが悪いのよ。エスナはいつも良い子だからね」


 幼少期は、まだ良かったのです。しかしそれが、成長してくると……私は母譲りらしく美しい母と同様に……悔しかった。何も出来ない自分が一番キライだった。


 だから私は母に頼んで、自分を鍛える事にしたのです。母は私にだけ教えてくれた、秘密がありました。

 私達はある王族に仕えていた、影の一族の末裔だと。

『忍者』という斥候でも珍しい、最上級のジョブを持っていると……

 しかし、これは掟で縛られている為に、他人に口外出来ない。


 母が時折居なくなるのも、この『忍者』で何かをしているからだろう。それでも私には、たった一人の母親なんだから。


 私は一生懸命母の教えを守り、時間のある限り特訓をした。そんな日々も、少しずつ削られてていく。

 ある日、左腕を失って帰ってきた母。

 玄関に入ってすぐに、崩れ落ちた。

 それから、三日三晩看病して一命は取り留めたのです。


 私がルディさんを見て嫌悪しなかったのは、母と重ねていたからかもしれませんね。

 その後、二年間は平和な時期で母から様々な事を学んだ私は、村人では太刀打ち出来ない程の腕になっていました。


 ただ、幼少期の暴力などがあり、人との接触はいまだに恐いですが……私に全てを伝え終わると、母は眠るように亡くなったのでした。


「エスナ、アナタは私の宝物でした。アナタがいたから、この世界を憎まずにいられた。エスナ、愛してますよ」


 パタンと落ちる母の手にすがり、私は声が枯れるまで泣き続けた。なんで母は、この村をでなかったのかな? なんで村人よりも強いのに、やり返さなかったの? 母ぐらい強いなら、ゴブリンぐらい倒せるのでは?

 私には、分からない事ばかり……だけど、一つ言えるのは。『村を出て冒険者になろう』


 お母さんを裏山の綺麗な花が咲く場所に静かに埋葬した後、私は家財道具のすべてを燃やした。


 私を『鬼の子』と呼び、石を投げ、お母さんを理不尽に虐げ続けた、この忌々しい村に未練なんてこれっぽっちもない。私は、お母さんみたいに黙って理不尽を、受け入れるつもりはなかった。


 私は母の形見である『忍者』の力を胸に秘め、人との接触への恐怖を必死に抑え込みながら、一人で村を飛び出した。


 目指すは、広大な外の世界。

 お母さんの言っていた、誰もが己の実力だけで生きることを許される『冒険者』になるために。


 だけど、現実は甘くなかった。

 長年、村という狭い世界で迫害され……心を閉ざして育った私にとって、外の人間たちはみんな怖かった。向けられる視線一つ、かけられる言葉一つに怯え、まともに人と話すことすらできない。

 察知能力や隠密能力は『忍者』のおかげでプロ以上だったけれど、精神的な脆さのせいで、ギルドに登録してもまともにパーティーを組むことすらできなかった。


 結局、私は世話を焼いてくれる受付嬢のフィオナさんにお願いして、パーティーを組んでくれそうな人を探して貰いました。そこで紹介されたのがルディさんです。


「おっ、ルディ君も来ましたね。こちらの女性は、エスナさんです。エスナさん、こちらはルディ君です。お二人共、私が担当する新人冒険者さんです」


 最初はフィオナさんかの紹介でした。そしてパッと見てすぐにわかりました『左腕が無い』事に……それからはパーティーを組む事になり、私のトラウマ克服まで付き合って貰いました。スライムのアオイちゃんとも仲良くなり、私は安心してしまって忘れていたのです。


 そう、世の中が悪意で満ちている事に……


 キッカケは、ミラさんと一緒にお小遣い稼ぎのつもりでした。冒険者ギルドでルディさんに渡す素材を、誤魔化した。それがクセになり……受付嬢エマールさんに見つかり、彼女の言いなりに。それから組まされた男の人にお酒を飲まされ、私はまた自分から汚れる事になるのです。


 こうして本当は大事だった、ルディさんとの関係も自分の意思で捨て去りましたが……今はルディさんの優しさに、すがりたいのです。身体は汚れても、心までは……と信じて。

 だから必ずルディさん探して、謝り仲直りをします。

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