やるでしょ。ダンジョン周回
ワイトキングが完全に光の粒となって消滅し、最下層に静寂が戻る。あっちこっちに散らばる、戦利品達。やったね。
カッコよく剣を引き抜き、鞘に収めた俺は背後の二人にキリッとした顔で振り返った。
「……どうだった? 今の俺のカッコいいところ、ちゃんと見ててくれた?」
「あ、あはは、もちろんですよ。主様は、その……刺激的で素敵でした」
「そ、そうよ。私の主人なんだから、それぐらいやって貰わないと。ちょっと……体の芯まで響いちゃったわよ。あー、喉が渇いたわね」
なぜかアオイは顔を上気させてモジモジしているし、アカネは不自然に内股気味でそっぽを向いている……まぁ、あれだけの大軍を相手にして、俺の見せ場もしっかりあったんだ。感動して震えているんだろう。でも、『主様カッコいい』とかって抱きついてくるぐらいは、して欲しいよね。
「よし、それじゃあお目当てのモノを回収して帰ろうか」
俺は満足感に浸りながら、玉座の奥の祭壇へと歩み寄る。
そこには、薄暗い最下層の中で神秘的な青い光を放ちながら『嘆きの結晶』があった。これは高値で売れるよ〜。
「採取完了。ついでにワイトキングが残した最上級の魔石、それからボスの宝箱から出た豪華な宝飾付の短剣も回収っと……」
終わってみれば、本当に俺たちの身体には傷一つ、ついていなかった。アオイとアカネがキズついたら……俺はダンジョンを剣で切ってしまうかも。
かつて俺をゴミのように追い出した『リジェクテッド』が悲鳴を上げて敗走し、「ルディのせいで大失敗した」と言い訳に使っていた最難関ダンジョン。それを、俺たちは半日かからずに完全攻略してしまったわけだ。パーティーメンバーの違いがやはりデカいな。
「よし、回収は終わったよな。ならこのまま帰るのも、芸がない。アオイ・アカネ疲れはどうかな?」
「はい、主様。万全ですよ」「全然平気よ」
「なら、周回行こうか……」
「「えっ」」
隣村のギルド出張所……
「ふぅ……ルディ君たちが心配で、お仕事が手につきません……あの『嘆きの谷』に……」
カウンターで一人、落ち着かない様子で小さな手を合わせ、俺たちの無事を祈っていたフィオナさんの姿があった。そこに俺達が現れると
「ただいま、フィオナさん。言っただろ? 大丈夫だって。少しは仲間を信じてくれよ」
「え…… ル、ルディ君? お、お怪我は……なさそうって、えええ。あのこの辺り最難関と言われる『嘆きの谷』へ行って無傷なんですか?」
慌ててカウンターから飛び出してきたフィオナさんの目の前で、俺はニヤリと笑い、アオイとアカネに目配せをする。
「「それっ」」
ドササササッ
カウンターの上にぶち撒けられたのは、美しく咲き誇る『夢見の花』。それだけでなく、ワイトキングの『最上級魔石』と、宝箱から出たレアアイテムの数々。『嘆きの結晶』攻略しないと手にはいらないからこれ以上の証明もないだろうね。
「な、ななな……ええええっ? こ、これ、ビギナリアの指名依頼で、未だに未達成で大混乱している『嘆きの谷』のボス素材と依頼品……それを、本当に半日で?」
フィオナさんは驚きのあまり完全にフリーズし、口をあんぐりと開けてしまった。その顔もカワイイな。ちょっとホッペをつついてみる
「フィオナさんが見込んでくれた、俺たちだからね。これで『商業ギルド』の依頼完全達成、手続きをお願い。あ、もちろん、あの街の商業ギルドとの約束通り、リジェクテッドには最高額のペナルティを課すように即時伝達で」
「は、はい。わかりました。すぐに手続きいたします」
フィオナさんは興奮で顔を上気させ、猛烈な勢いで魔導ペンを走らせる。ホッペ触ったの気付いてない?もしかして違う所でも行けた?
「ルディ君はやっぱりエッチだね……」
あっ、バレテーラ。違う所をやらなくて良かった。
でもこれで、リジェクテッドの言い訳の余地は完全に消滅した。
「無能なスライム使いのせいで、失敗した」
と言っていたダンジョンを、そのスライム使いがパーティーメンバーを変えて、最高の仲間と共に無傷の半日で完全攻略したのだ。しかも、複数回周回してね。この事実が公になれば、あいつらの社会的信用は完全に失墜する。
「ちょ、ルディ君? 一回分の割に多いんだけど……まさか……『嘆きの結晶』がいくつも……」
「うん、何周かしたよ。物足りなかったから……」
フィオナさんは、机をバンと叩き立ち上がる。あまりの衝撃に、思考がフリーズしたみたい。スカートが捲れて美味しそうな太ももちゃんが……再起動したフィオナさんは、考えるのを止めたようだ。事務的に淡々とこなしている。
「よし、手続きありがとう……それじゃあ、フィオナさん。俺たちはこれから、この純鉄と魔鋼を持って、ビギナリアの街へ『挨拶』に行ってくるよ」
俺達は迷宮都市ビギナリアの商業ギルドへと、足を運んだ。さらに『リジェクテッド』と専属受付嬢エマールを追い詰める為に……相手は貴族も関わっているからな。ダメ押ししてからトドメを刺す、くらい慎重でないと殺られるのはこっちだから。
「こんにちわ。冒険者パーティー『セレスティアル・ガーデン』のルディが商業ギルドのギルドマスターへの面会を希望します」
俺は商業ギルドへ来て正式に面会を申し込んだ……




