専属受付嬢ゲット
俺達はフィオナさんが飛ばされたという、迷宮都市ビギナリアの隣村にやって来た。感想は……のどかだ。
俺の故郷だった村よりも、農村って感じだな。
ただ、ここも迷宮都市ビギナリアに近いだけあって、ダンジョンが周りにもあるし魔物もいる。
冒険者活動をするのに、支障はなさそうだね。
俺は冒険者ギルドに向かい歩いている。もちろん俺の両隣には、ニコニコしながら腕にしがみつくアオイと、反対側には恥ずかしいのか服を掴んでプイッと反対側を見ているアカネ。
正反対の対応に笑ってしまう。
俺の再出発はこんなのどかな所から、必ず始まるのかもな。三人で並んで歩いてると、村人とすれ違う。
「あんれ、まぁ。お兄ちゃん、別嬪さんを二人も連れて……色男ちゃね。ウチの爺さまも……」
お婆ちゃんに捕まった。どうやら余所者にも、寛容な村のようで安心したよ。
俺達は話もそこそこに、冒険者ギルドの出張所へ向けて足早に歩いていく。足が、俺の気持ちを代弁しているようだ。
俺達はまさに、掘っ立て小屋という感じの建物の前に立っていた。あの華やかな迷宮都市ビギナリアでトップ受付嬢になりかけていたフィオナさんが、こんなボロ屋に押し込められているなんて……。エマールの奴、本当に胸糞悪い真似をしてくれる。
「主様、ここがフィオナ様のいる場所ですか? ずいぶんと……寂しい場所ですね」
アオイがちょっぴり悲しそうに、眉を下げて建物を見上げる。
「フン、あの高慢ちきな女ギツネに、嫌がらせされたんでしょ? ちょうどいいじゃない、ここで私たちがドカンと成果を上げて、あの街の連中の鼻を明かしてやればいいのよ」
アカネが腰に手を当てて、勝ち気に不敵な笑みを浮かべた。相変わらず頼もしい相棒たちだ。
「ああ、そのつもりさ……よし、行こう」
俺は一呼吸置き、木製の古びた扉を押し開けた。
『キィィ』と建物の外観にふさわしい、建付けの悪い音が響く。くしゃみしたら扉がぶっ飛びそう。
中に入ると、外の強い日差しが窓から差し込む中、カウンターに肘をついて今にもあくびをしそうなフィオナさんの姿が見えた。
アハハ、暇そうだな……
俺たちの足音に気づき、彼女は慌てて背筋を伸ばし、丁寧にお辞儀をして顔を上げる。
「冒険者ギルドへようこそ。ご依頼ですか? 報告ですか?」
少し元気のない、だけど聞き覚えのある愛らしい声。
顔を上げたフィオナさんは、目の前に立つ俺の姿を見て、完全にフリーズしてしまった。
「あ〜、悪い。忙しかったか? なら別の……」
俺がわざと意地悪く、初めて出会った迷宮都市ビギナリアと同じセリフを口にすると、フィオナさんの大きな瞳がみるみるうちに潤んでいく。
「……ウフフッ、もう。申し訳ありませんでした。少しボーとしてました。改めまして……いらっしゃいませ、ルディ君」
泣きそうなのを堪えて、精一杯の笑顔を作るフィオナさん。その健気な姿を見て、俺の胸の奥が熱くなる。もう彼女を一人ぼっちにはさせない。
「やぁ、フィオナさん。仲間のキミを迎えにきたよ」
俺が手を差し伸べると、フィオナさんの目からついにポロポロと涙がこぼれ落ちた。
だが、感動の再会はそこで終わらない。
「ちょっと主様ー? 私たちの紹介がまだなんですけどー?」
「そうよ。全く……抜け駆けは禁止なんだからね」
俺の両脇から、アオイとアカネがひょっこりと顔を出す。涙目を丸くして、
「え……? えっと? どちら様ですか?」
と固まるフィオナさん。その視線は、アオイとアカネの顔、そして……二人の『とんでもない胸部装甲』へと吸い寄せられていく。
フィオナさんもなかなかの巨乳だ。それと目の前の二人はそれを凌駕せんばかりの存在感を放っているのだ。ん〜、マーベラス。
「ル、ルディ君……? その、ものすごく可愛い……っていうか、ルディ君に張り付いてる女の子たちは、一体だれかな……」
フィオナさんの声が、感動の涙から一転して、ちょっと怒ってますか?
俺の新しい冒険は、最初から難しい選択を迫られるようだ。
可愛らしい三人が、それぞれ見つめ合ってる。
「ウフフッ、お久しぶりですね。フィオナ様。私の事、分かりますか?」
青い髪の毛を耳にかけて微笑むアオイ。人化してもその仕草は……最高です。どこでそんな、大人の魅力を身につけてきたんだ。
「え? 私、あなたみたいに綺麗な方と、お会いした記憶は……」
困惑するフィオナさんに、アオイはクスリと笑う。
「いつも私をぷにぷにしながら『ルディ君ってちょっとエッチよね』って内緒話をしていたじゃないですか……」
「えっ? な、なんでそれを……って、え? アオイ、ちゃん? スライムの?」
フィオナさんの顔が、一瞬で真っ赤に染まる。青い髪と気配で、ついに正体に気づいたらしい。
「うそ……スライムのあのアオイちゃんが、人間になったの?」
「はい。主様のご寵愛で、この姿にしていただきました」
嬉しそうに俺の腕にスリスリしてくるアオイ。いや、ご寵愛って言い方は誤解を招くから……フィオナさんの目が据わってるから……こわ。
「ちょっとアオイ、ずるいわよ。私のことだって知ってるでしょ?」
ここでアカネが前に出て、プイッと横を向いた。
「私はアカネよ。あんたが泣いてた時、ルディと一緒に怒ってあげたんだからね……フン、感謝しなさいよね」
「ア、アカネちゃんまで? あんなに小さかった子が……」
フィオナさんは信じられないと驚きながら
「スライムが人間……しかも爆乳……ルディ君はやっぱりエッチ……」
とブツブツ呟きながら、頭を抱えている。
「あー、フィオナさん。色々驚かせたけど、俺たちは戻ってきたよ。これからはこの村で、また俺たちの受付嬢をやってくれないか?」
俺が改めて告げると、フィオナさんはゆっくりと顔を上げた。
まだ頬を赤くしたままだが、その瞳には嬉しそうな光が満ちていた。




