私も冒険者パーティーの一員です
【ある二年目の冒険者ギルド受付嬢】
私は迷宮都市ビギナリアで受付嬢をしております、フィオナと申します。
私の担当している冒険者パーティー『リジェクテッド』の専属受付嬢を巡って、先輩受付嬢であり貴族令嬢のエマール様から、専属受付嬢を譲るように脅されていました。
それは冒険者ギルドの業務内容に関わるのですが、受付嬢の中でも優秀な冒険者パーティーの専属受付嬢は、仕事内容も優先的に免除され、また受付嬢間の発言力も強くなります。
冒険者パーティー『リジェクテッド』が結成される前は、エマール様が迷宮都市ビギナリアの受付嬢で長らくトップを独占しておりました。
貴族令嬢という事もあって受付嬢は、皆さんエマール様に頭が上がりません。私も同様です。しかし、こればかりは譲る事など出来るはずがありません。
私は始めて、エマール様に反抗しました。勇気を振り絞ってお断りしたんです。でも……ダメでした。
田舎に住む父と母を引き合いに出され、引き下がるしかありませんでした。
本当に、悔しくて情けない。結局は私は自分の担当した専属受付嬢を、辞退するしかありませんでした。ルディ君は、何があったのか察してくれたようでした。成人したばかりの子だとは思えない位の深読みです。
私が専属受付嬢を外れてからルディ君は何か別の事をやるようになり、冒険者ギルドへ顔を見せてくれることも無くなりました。少し寂しいですが、しょうがありません。
あの日以来エマール様はもちろん、他の受付嬢からも私に対して嫌がらせが続いていました。それをたまにルディ君に聞いて貰い、ストレス発散に付き合って貰ったりしました。
そんな日々も長くは続かず、ルディ君以外のメンバーが冒険者ギルドへ訪れるようになりました。私はもう専属受付嬢ではありませんが、お話ぐらいはさせて貰いました。
彼女達はダンジョンで得た成果を、換金に来ていたのです。冒険者ならば普通の事でしたので特に何も思わなかったのです……それが良くなかった。
彼女達はリーダーであるルディ君には内緒で、ダンジョンの成果を換金して着服していたようでした。私がその事実に気がついた時には既に手遅れで、冒険者パーティー『リジェクテッド』は別の冒険者パーティーになってしまったのです。
エマール様に着服がバレたエスナさんとミラさんは、エマール様の言う通り新メンバーを受け入れるしかないみたいでした。
「ちょ、ちょっと。エスナさん・ミラさん。ルディ君は知ってるの? 勝手にメンバー増やしたり……」
「……フィオナさん。ゴメンなさい」
エスナさんは、下を向いてしまった。
「リーダーには黙っていて。お願いよ」
ミラさんは、手を合わせてお願いしている。良いのかな? でもこれがキッカケで、仲違いにでもなったら……私は頷くしかなかった。これには、今になって後悔しかありませんでした。
私は見ているだけで、何も出来ません。エスナさんもミラさんも、しばらくしてから私を避けているようでした。
それでも遠くから見守っていこうと思い、彼女達が冒険者ギルドへ訪れる度に、心の中で応援してましたが……ある時を境目に、急に新メンバー達と仲良くなる彼女達に注意をしたのです。
「ちょと、貴方達。本気ですか? これはルディ君には話をしているの?」
新メンバーと腕を組みながら冒険者ギルドへ入って着た、エスナさん・ミラさんに思わず問い詰めてしまったのです。
二人は『マズイ』っといった顔をしましたが……
「あらあら、専属受付嬢でもないアナタが、横から口を挟まないでくださる。いい加減目障りですわよ。私の『リジェクテッド』はこの迷宮都市ビギナリアで、トップの冒険者パーティーなんですから……これで売上が落ちたら、どうする気ですか?」
騒ぎを聞きつけてきたエマール様から、お叱りをいただいた。周りを見ると、同僚の受付嬢がエマール様に密告したようですね。
「も、申し訳け……」
「いえ、もう結構です。このことは、ギルドマスターへ報告させて貰います。覚悟しておきなさい」
エマール様は周りに、先程の受付嬢をお供に去っていく。その日の帰り際に私の左遷は決まり、迷宮都市ビギナリアの隣村へと移動になったのです。
私は、それを受け入れるしかなく……今は日々、暇な時間を過ごしています。村の方々は良い方ばかりですが……やはり迷宮都市ビギナリアでの受付嬢で忙しく仕事をしていた時の事を、思い出してしまいます。
今日も野菜を差し入れてくれたお婆ちゃんとお話して、畑に出たスライムの魔石の買取りをしてから何もありません。ここには私以外、受付嬢はいません。職員も、ギルドマスターと解体士のおじさんの三人のみ。
その日は、朝から雲一つ無い清々しい青空です。冒険者ギルドの窓からも、強い日差しが注ぎ込みます。
私はいつものようにカウンターに肘をついて、時折出そうになるアクビを噛み殺してます。
そして……扉を開く音が聞こえましたので慌てて立ち上がり、お辞儀をして顔を上げる。
「冒険者ギルドへようこそ。ご依頼ですか? 報告ですか?」
…………?
「あ〜、悪い。忙しかったか? なら別の……」
イタズラが成功したという顔で、ルディ君がそこに立っていた。それにそのセリフは、ルディ君が始めて着たときの……
「……ウフフッ、もう。申し訳けありませんでした。少しボーとしてました。改めまして……いらっしゃいませ、ルディ君」
「やぁ、フィオナさん。仲間のキミを迎えにきたよ」
ルディ君は変わらない笑顔で、私を受け入れてくれました。仲間だと言われた事が嬉しかったです。




