学園天国
【勇者ランドルフ視点】
バキッ、ボキッ、ドガッ……!
「これで分かったかぁ!? 『覚醒勇者』である俺様に舐めた態度を取った罰だ! 今すぐにここで土下座しろ! 命乞いをしろぉ! 勇者様への侮辱は貴族だからって許されねぇんだよ!」
『俺様を平民に負けた落ちこぼれ勇者』と罵ってきた貴族のバカには、しっかりと教えてやらねぇとなぁ?
貴族の坊っちゃんの護衛ごと……お仕置きだ、バカヤロウ!
女どもは顔と身体で合格・不合格を判断して罰を与えている。合格した女は俺様が直々に味見をしてやり、不合格の奴らは新しく配下にした男子生徒や教師どもに貸し出してやっているのだ。
こうして、俺様に逆らう奴は学園から一目散にいなくなった。
そりゃそうだろ、誰もこの俺様に勝てねぇんだからな。武術でも魔法でもな……!
「ウフフッ、さすがは『覚醒勇者ランドルフ』様でございますわ。ランドルフ様のお力なら使いこなせるのではと思い、特注品を作らせましたの……どうぞ!」
セルフィーナ姫から、一振りの長剣を手渡された。
黒い刀身が鈍く光を反射している。作り自体は無骨だが、手に吸い付くような……いや、まるで手の一部になったかのような最高の感触だ。
「セルフィーナ、コイツはすげーぜ! 一体どんな武器だ? こんな刀身が真っ黒な剣、見たこともねぇぞ!」
「ええ、迷宮都市ビギナリアという片田舎の都市なんですけれど……そこに腕の良いドワーフ鍛冶師がおりますの。その者に勇者様が装備するにふさわしい特級武器を作らせましたのよ……。ふふっ、私はこんなに頑張りましたのですから……この後は……ウフフッ」
なるほどな! ついに俺様専用の最高峰の武器が手に入ったというわけだ。
(※特級魔鋼を使い、ドラン親方が打ち上げた至高の剣である)
◆◆◆◆
「何度来られようとも……お断り申し上げます、勇者様」
あの美しく澄んだ白髪を、俺様のモノにしたくてたまらない。
俺様は『覚醒勇者』なんだぞ? それなのに、どれほど圧力をかけようが脅そうが、俺様に絶対に膝を折らない女がいた。
学園の誰もが知る、魔法の才能においては俺様をも凌ぐと評される『白い女帝』——ジェシカ・フォン・トロワ嬢だ。
腰まで伸ばした美しい白髪に、学園歴代トップの成績。魔導士としても圧倒的に優秀な女だ。
「クソッ、またあの女に断られた……! 勇者をバカにしやがって……!」
「フフフッ、勇者様。どうやらジェシカ嬢には、少々『沈んで』いただくしか無いようですわね。『白い女帝』などと呼ばれていても、所詮は下級貴族の出。ふふ……私にお任せくださいな……」
セルフィーナ姫が妖しく微笑み、俺様の胸元にすり寄ってくる。
俺様を拒絶したあの高慢な女がどんな顔で泣き叫ぶことになるのか……今から楽しみで仕方がなかった。
◆◆◆◆
「さぁ、トロワ子爵! もはや言い逃れは出来ませんぞ! 何より世界にたった一振りしか存在しない『勇者ランドルフ様の至高の剣』を盗み出したのは明白だ! 誰も立ち入ることの出来ぬ貴殿の書斎から、現物が出てきたのが何よりの証拠!」
「し、信じてくれ……! 私は何も知らん! このような禍々しい剣など身に覚えがない……!」
「フン、その弁明は国王陛下の御前でなさるが良い。だが、子爵本人しか所持していない鍵がなければ入れない書斎から証拠品が出てきたのだ……。何より、貴殿は我が国における『非勇者派』の中心人物ですからなぁ」
現在の王国では、俺様を支持する『勇者派』と、それに反対する『非勇者派』が激しく対立していた。
その『非勇者派』の有力者として知られていたトロワ子爵は、哀れにも地下牢へとぶち込まれたのだった。
後日、トロワ子爵家は領地没収の上で取り潰しが決定。トロワ子爵夫妻は速やかに斬首され、残された一人娘のジェシカ嬢は……奴隷へと落とされることとなった。
(※なお、後に開催された闇オークションにて、ランドルフは使いを出してジェシカを競り落とさせようとしたが……新ビジネスで莫大な資金力を得ていたルディにあっさりと競り負け、資金不足で断念することになる)
◆◆◆◆
「クックック……! ざまあみろ、ジェシカ! 俺様をバカにした報いだ!」
俺様は自室で高級酒をあおりながら、高らかに笑い声をあげた。
あの高慢ちきな『白い女帝』が、今頃は奴隷の首輪をつけられて泣き叫んでいると思うと、たまらない快感が全身を駆け巡る。
「ウフフッ、これで学園にアナタ様へ刃向かう者はいなくなりましたわ、ランドルフ様」
「そうだな。ところでセルフィーナ……アイツらの仕上がりはどうなんだ?」
「はい、まもなく完了するようですわ。残りの三人とも、まるで別人のようになっておりますの。……ですが、ラウラ様につきましては残念な結果となってしまいましたわ。まさか、勇者様の従者を務めるような方が『ラヴァーズブラッド』の毒性に耐え切れず、負けてしまわれるとは……」
「フン、情けない奴だ。『覚醒勇者』たる俺様の隣に立つ資格が無かった……ただそれだけのことだ。セルフィーナ、アイツの処分はお前に任せるぞ」
俺様はグラスを置くと立ち上がり、バルコニーから王都の街並みを見下ろした。
背後からセルフィーナが、そっと身を寄せて囁いてくる。
「ウフフッ、どうぞお任せくださいませ。既に我が父や重臣たちの『玩具』として進呈いたしましたから……。ふふっ、それこそが『ラヴァーズブラッド』を使わせていただく条件でしたもの。約束はしっかりと果たしましたわ」
俺様の背中に胸を押し当てて微笑むセルフィーナ姫。
その瞳が、暗がりの中で不気味に、紅く禍々しく輝いていた——。




