俺様は勇者だぞ!
【勇者ランドルフ視点】
※時は遡り、ルディがモラーザを去ってから3ヶ月後……
「クソッ、あのババアのせいで学園の入学式に間に合わなかったじゃねーか。行くぞ……クリスティ、ウルリケ、ルイーゼ、ラウラ」
俺たちも刺された傷がようやく癒え、王都へやって来た。真っ先に王城へ向かっている最中なのだが……
「ご覧になって。アレが『平民』に負けた勇者様よ」
「なんと! 英雄の中でも特別な『勇者』様が平民に……」
「なんでも相手は元奴隷だとか……卑しい出自のせいかしらね」
「まったく、我が王も何をお考えなのか……」
周囲の貴族や臣下どもから、ヒソヒソと蔑むような視線と声が突き刺さる。
「今は我慢してね! アナタは『伝説の勇者』なんだから……確かに今は厳しい状況だけど、それもきっと勇者としての実力が覚醒したら変わるはずよ」
グフフフ、クリスティも分かってきたじゃねーか。もっと胸を俺様に押し付けやがれ!
「そ、そうね。私たちでランドルフ君のサポートをすれば……」
「うん、お姉ちゃん。お義父さんとお母さんを奴隷から解放するには、それが一番だよね」
ルディの義理の姉妹であるウルリケとルイーゼだ。コイツらも役に立つからな……。
「そうだね。僕たちが強くなれば、きっと周りも認めてくれるし……ランドルフならその気になればできるって僕たちは分かってるからね」
ラウラも文句はないみたいだな。
「ああ、分かった。今だけは我慢してやる。いずれはこの国を丸ごと頂くからな。その時は貴族だろうと殺してやる。ルディ……お前もな!」
◆◆◆◆
まさに俺様に相応しい赤絨毯の上を歩き、ファンファーレが鳴り響くなか……王との謁見に臨んだ。
サスーニア海洋国。海に囲まれた島国である。その海のおかげで古代から続く王家が統治してきたのだが……結果、内部はすっかり腐敗していた。
そこに現れたのが、サスーニア海洋国の建国神話に登場する『魔王』を討伐し、魔王の居城があった当時の地域を平定した存在——それが『初代勇者』であり、現王家の初代国王でもあった。だからこそ、この国において『勇者』は神聖視されているのだ。
「ほうほう、そなたが伝承に出てくる『勇者』かえ? なんか小汚い平民が頑張りましたという感じで……気分が悪くなるえ〜!」
「恐れながら陛下。何度も鑑定して確認をしておりますぞ……さぁ、勇者殿。陛下へご挨拶申し上げる名誉を授けてやりますぞ。頭を下げなさい!」
今にも殴りかかりそうになる俺様を、周りの女たちが必死になって押さえつける。……その時だった。
「お父様……勇者様にそのような事をおっしゃってはいけませんよ。勇者様あってのサスーニア海洋国ではありませんか。ああ、勇者様。その凛々しいお顔をお見せくださいな……」
綺麗な絹のような髪は光を反射させてキラキラと輝き、長いまつ毛に整った顔立ち。豊かな胸元にキュッと引き締まったウエスト。ドレスからのぞく健康的で美しい脚。すべてが完成された美を思わせる、サスーニア海洋国の至宝『水宝玉』と称される第二王女であった。
その姿を見た俺様は、思わず『ニヤリ』と口角を上げて近づいていった——。
「おお、我が愛娘セルフィーナよ! 相変わらずワシには厳しいのう。しかし、最初が肝心と言うではないかのう……」
「ここは私にお任せくださいな……ねぇ、勇者様?」
俺様の耳元まで口を寄せてくる。ウホ〜、良い胸してるね。しかも良い匂いがするな、このお姫様……確かセルフィーナとか言ったか。
「ウフフッ、勇者様とは『良い関係』を結べそうですわね。もちろん、私のお願いを聞いてくださるなら……私自身を差し上げても……ね。お互いをもっと良く知りたいと思いませんか? 不思議なんですが、私と勇者様は同じ学園の、同じ学年の、同じクラスなんですのよ」
俺様の胸をツンツンしながら、不意に乳首をギュッと強く掴んできた。思わず叫びそうになるのを、なんとか耐える。
「勇者様はこれから覇道を歩まれる方ですわ。あのような小物たちに頭を下げたところで、何も感じないはずですわ。だって、その辺の石ころに頭を下げて悔しがる人なんていませんもの……」
フフフッ、と悪戯っぽく笑いながら俺様の耳元から離れていく。自分の父親を小物扱いかよ。最高の女じゃねーか!
「勇者ランドルフです。これからはサスーニア海洋国国王陛下や貴族の皆さんの力になれるよう、努力していきます」
「ふむ、それで良いのじゃ。しかし平民に負ける勇者が役に立つとは……」
「お父様。ならば勇者様を含め、従者の側女たちも鍛え直したらどうかしら? 何なら……」
国王の側で、コソコソと耳打ちをするセルフィーナ姫。すると、国王や側にいた重臣たちの顔色がガラリと変わり……
「さすがはセルフィーナじゃ。良かろう! 騎士団長と魔導師団長に、勇者と従者の訓練を命じるのじゃ。学園に通いながら、放課後と休日を使って一日でも早く一人前になるのじゃ!」
国王や重臣たちの鼻の穴が膨らんでいてキモいな。それを見た俺様は一瞬嫌な予感がしたが……
「勇者様。私も一緒に特訓をしますわ。まるでデートのようでドキドキしてしまいますわ……」
「……!」
その甘い囁きを聞いた瞬間、嫌な予感なんてどこかへ飛んでいってしまったのだった。




