私がガメツだぁ!
【迷宮都市ビギナリア・ガメツ商会会長ガメツ視点】
この世で勝者とは『金』を持ってる者だ。貴族でも王族でも、金の前ではペコペコと頭を下げる。
そう、金さえあれば……。
迷宮都市ビギナリアで一番の金持ちは、このガメツ様だ。
領主でさえ、ワシに意見を言うことなど出来ん。
ワシはこの新人冒険者が集う街……迷宮都市ビギナリアの特性を活かし、冒険者向けに武器・防具や携帯食料、サバイバル用品を扱う『ガメツ商会』を運営している。新人冒険者など品質の良し悪しなど分からない連中だ。粗悪品で十分なのだ。
そしてこれは表の顔であり、裏では冒険で親を亡くした子供を奴隷にしたり、冒険者として失敗した者を奴隷にするための高利貸しを行っている。これにはこの地域の貴族や、冒険者ギルドのギルドマスターも一枚噛んでいる。そう、これも金の力で……。
だが……一つだけ、最近不安な出来事があった。
『フォルトゥーナ商会』と名乗る商会だ。初めは小規模な商会ゆえ眼中に無かった。名前すら覚えていなかったくらいだ。だが、それが『魔鋼』という特殊金属を扱うようになる。その『魔鋼』を手に入れればどれほどの儲けが出るのか……。特殊金属を用意出来る職人を探したが、商業ギルドに阻まれた。あそこのギルドマスターとはワシは馬が合わず、いつもぶつかり合っているのだ。
「チクショウ、あのギルドマスターの弱みはまだ掴めないのか!? フォルトゥーナ商会の代表も職人も商業ギルドが隠しているから何も出来ん。王族を動かそうにも例の『勇者』が……ならば、貴族だな。この辺りで使えて権力志向の強いのは……『あの伯爵』か」
ワシは早速連絡を取り……援助を約束して貴族を動かすことに成功した。その効果が出たのは少したってからだった。冒険者ギルドに『あの伯爵の娘』が働いていることは知っていたが……まさかフォルトゥーナ商会の代表を割り出すどころか、正体まで掴んでくるとは。
「なるほど……フォルトゥーナ商会の代表は、あの冒険者パーティー『リジェクテッド』のリーダーだったとは……『特殊金属』の仕入れ先などを探っても情報が上がって来なかったのは、自分で採集していたからか……ならば……」
『あの伯爵』に更なる資金援助を約束し、冒険者パーティー『リジェクテッド』の乗っ取りを依頼した。これでワシは『リジェクテッド』と『フォルトゥーナ商会』の両方を得られるはずだった……。代表さえ追放してしまえば……と思っていたが、リーダー自身の力でのし上がっていたようだ。
「……これは誤算だ。まさかリーダーを追い出して、エースパーティー『リジェクテッド』と一緒に『フォルトゥーナ商会』も手に入るはずが……リーダー自体が重要だったとは……。これも商業ギルドに情報を隠蔽されたのが原因だ!」
「会長……只今、オークションが終了しましたが、一部の奴隷の落札資金が割れてしまった貴族がおりまして……今、連絡が入ったのですが……『例の伯爵』様より、バイキング『虐殺の悪魔』シーデビル二世の購入資金を借りたいと使いが来ております」
おお、バイキング『虐殺の悪魔』シーデビル二世といえば、北の海で悪事を働きS級冒険者パーティー『トライデント』に捕まって奴隷にされたという……なるほど。ヤツの圧倒的な暴力ならば『リジェクテッド』で活動させれば損失の補填が出来るかもしれんな……。
「よろしい! 伯爵に『リジェクテッド』へ入れさせて冒険者として働かせ、いずれはフォルトゥーナ商会や商業ギルドに向かわせよ。フフフッ、ヤツなら……」
◆◆◆◆
「会、会長……大変です! 我が商会へシーデビルが押し寄せて暴れ回っております! また、飲食した金を払わずに全て伯爵が肩代わりしているので、もう破産しそうだ、と……! 伯爵が捕まれば、我々の悪事まで……!」
「何故だああああぁぁぁぁーーーー!!!!」
こうも上手くいかんとは……ぐぬぬ……金が……無くなっていく。ワシの金がぁぁ……!
苦しんでいると、別の従業員が飛び込んできた。
「会長……大変です!」
「今度はなんだ!!」
「はい! 今、大通りでシーデビル二世が倒され、騎士団に捕まりました! 倒したのは……『セレスティアル・ガーデン』リーダーのルディ、とのことです!」
「………………?」
バイキングが? シーデビル二世が? 倒された……?
ワシはわざわざ遠方から高い金を払ってS級冒険者を呼び出したというのに? またもや『ルディ』だと……! もう我慢出来ん!
「集めろ! ゴロツキや傭兵、冒険者に至るまで全てを集めて『セレスティアル・ガーデン』リーダーのルディを始末する……! 分かったらさっさと行け!!」
◆◆◆◆
ダンジョン【乾いた台地】にヤツがいるとの情報が入り、精鋭達を伴ってリーダー・ルディの抹殺に来た。
「居ましたぜ、会長。アイツらです。ここまでコケにしてくれた『フォルトゥーナ商会』のメンバーです」
ヤツは何か言っているようだが、今更怖気づいたらしい。絶っっ対に許さん〜!
「ば、バカ。周りをよく見ろ。自ら爆心地へ足を踏み入れる……遅かったか……せめて苦しまずに行ってくれ」
直後、轟音が辺りに響き渡る……。
ヒュ〜・・・・ドッカァーン!
「汚い花火だったぜ!」
「……ぐふっ、この、まま……」
「む? 兄様、何か落ちてきたのじゃ? 魔物か?」
「リン、触っちゃダメだ。手が汚れちゃうから……」
「む、そうか! ならば、もっと撫でるのじゃ!」
そのやり取りを最後に、意識は暗転した。
そして、気がついた時には……。
「ガメツ商会会長ガメツ……。商会や伯爵からの証言などから、様々な悪事が発覚した。商業ギルドとして『ガメツ商会』の解散請求を提出し、国より承認された。これにより、資産は全て被害補填のために没収となる……。これで迷宮都市ビギナリアが変わるのだ」
ワシに引導を渡しに来たのは、大嫌いな商業ギルドのマスターだった。
こんなことなら……『ルディ』に手を出すんじゃなかった……。




