メイド道は1日にしてならず……
「せい! やあ!」「魔法撃つよ……そっち行ったよ」「右よ! 左は任せて……」「了解。ハァ!」「完了ね。みんなお疲れ様」
完璧な連携を見せてくれたのはココア、ミリー、ネネ、シャロン、ユリの元村娘5人組だ。現在は初級ダンジョンでも簡単な【新緑の森】で魔物と戦いながらも、メイドとして俺のお世話をする? という難題を、課せられていた。
誰に? もちろんメイド長の……
「……ダメです。魔物に全員で斬りかかって、どうするのかしら? ご主人様を、1人残した状態で……言語道断ですよ。最悪を考えて1人は残り、自分の身を投げたしお守りする位でないといけません。そもそも……」
うわ、スパルタだな……ってか、ダンジョンで守られるご主人様というのもな……
「「「はい! メイド長」」」
ちなみに5人もマーサさんも、メイド服を着ている。俺がいくら言っても……
「ご主人様、私共の戦闘服は、メイド服以外にございません。ダメなら全員が、裸で戦いますが……いかがなさいますか?」
……とか、言ってくるからね。村娘5人組ならともかく、マーサさんもかな? ちょっと断ったのが……もったいなかったかな?
でも、防具で固めてないから……ほら、目の保養に……イヤ、毒になるからね。ポヨンポヨン、してるしね。全く……けしからん。
「ご主人様? けしからんのは、アナタ様ですぞ」
隣にいたハンスが、横から口を出してくる。ぐふっ、やるな……ハンスよ。
「ならば……女性用の胸当てなど、作ってみたら如何でしょうか?」
ほう。胸当て……『ブラジャー』ってヤツだな。アレのホックの構造って分かってる男子はいるのか? 前ホックとか良く分からなかったなぁ〜。
後は片手ホック外しとか、前世でやったな〜。
「ですから、ご主人様が1番けしからんですよ」
「待てハンス、俺は至って真面目に新商品の開発と防御力の向上について、考えているんだ。決して『片手ホック外しの技術を、異世界で伝承したい』とか、むしろ……それが出来て始めて成人として、認めるような『成人式』として採用しな……」
「しっかり口に出ておりますぞ、ご主人様……」
ハンスが呆れたように、深い溜め息をつく。
だが、言われてみればハンスの提案はかなり筋が良い。確かに実り豊かな『セレスティアル・ガーデン』の花達には、支えるモノが必要だろうな。冒険者として、動き回るからな……無いと痛いと、前世でも聞いた事があるし……
この世界の女性用防具といえば、無骨な金属の胸甲か……布製の服の下に着込む、革のプロテクターくらいだ。冒険者なんかはサラシみたいに、布をあてたりしてるらしいしね……
もし、軽くて動きやすく、なおかつ魔力を通しやすい特殊な素材で『ホールド力と防御力を兼ね備えたブラジャー』を作り出せたらどうだ? 売れるだろうな。何より、セクシーな女の子がみたいじゃない。色とりどりの華を咲かせてこそ、『セレスティアル・ガーデン』だろう……
(……それに、うちの『フォルトゥーナ商会』の目玉商品に、なるんじゃないか? 冒険者以外にも、売れるしな)
戦闘中の胸の揺れを抑えて動きやすくし、さらに付与魔術で『防御力強化』や『衝撃吸収』をかければ……女性冒険者や騎士たちに、爆発的に売れるはずだ。フィオナさんのあの黒レースみたいな、デザイン性に優れた……あの芸術的と組み合わせれば、世界中の女性を敵に回す……いや、味方にできる!
「ふふふ……来た! おお、降りてきたぞ……ハンス。商会に大儲けをもたら、す新たな技術革新の光が……」
「またご主人様が、良からぬ笑顔を浮べておられる……マーサに言ったら絶対に、フライパンが飛んできますぞ」
ハンスが、引きつった顔で後ずさりする。さすが夫だな。しかし、俺のインスピレーションが、ピコピコしてるから諦めてくれ……
「コラそこッ。男連中でコソコソと何をバカな話をしているのですか!」
案の定、説教を終えたマーサさんが、仁王立ちでこちらを睨みつけていた。後ろでは、ココアたちが「助かったぁ……」という顔で、胸を撫で下ろしている。
「いいですかご主人様。ココアたちも初級ダンジョンとはいえ、連携は形になってきました。ですが……一番の問題は、ご主人様自身が『守られる側』という意識をまったく持っていないことです!」
「いやぁ、マーサさん。俺も一応、冒険者だし自分の身くらいはね……」
「ダメです! ご主人様は、我が商会の宝であり、みんなの『ご主人様』なのですから! ほら、ココアたちも言いなさい!」
マーサさんに促され、村娘5人組がキュッとメイド服の裾を握りしめ……顔を真っ赤にしながら、俺の前に並んだ。
「あ、あの……ルディ様! 私たち、もっと強くなって……絶対にルディ様をお守りしますから!」(ココア)
「ルディ様に怪我なんてさせたら、私、自分を許せません!」(ミリー)
「だから……ちゃんと私たちの後ろに隠れていてくださいねっ」(ネネ)
シャロンとユリも、深く深く頷いている。
お胸様達も、上下に首を振っている……けしからん。
そのあまりの健気さと可愛らしさに、エロさに俺の心の中の『けしからん感情』は一瞬で吹き飛びは……しなかったが、なんとも言えない温かい愛おしさが胸を満たした。
「……そっか。ありがとな、みんな。じゃあ、俺の護衛は任せたよ」
俺が優しく笑って頭を撫でてやると、5人は一斉にポッと頬を染めて嬉しそうにはにかんだ。可愛らしい笑顔の裏で、俺は彼女達に似合いそうなブラジャーのデザインを考えていた。




