それでも私は……
【元パーティーメンバー・エスナ視点】
私達はようやく、ルディさんと会う事が出来ました。
一刻も早く、謝りたかった。そして、私達をまた同じ冒険者として……パーティーリーダーとして、やり直して欲しかった。
ルディさんを探して回る日々で、少し疲れが……
少し諦めかけていた時に、目の前の華やかな女性達の集団がいた。みんな綺麗で、今の私達からは輝いて見えた。
美女・美少女だらけで、何の苦労もしてない人生なんだろうなって……黒い気持ちが、出てきてしまう。
その集団の中に、目当ての人を見つけてしまう……
「……ルディさん?」「えっ、ルディがいるの?」
ようやく会えた。だけど女の人達に囲まれて、幸せそう。なんか、ドロドロとした感情が溢れそう。
声をかけると、青い髪の美女と赤い髪の美少女が……私達の前に立ち塞がります。
……ルディさんの隣には、金髪の美女が寄り添ってる。
「お久しぶりでございます。エスナさん」「本当ね……ミラ」
青い髪の美女と赤い髪の美少女は、私達を知ってるみたいでした? こんなに綺麗な人なら、忘れる事はないと思います。
ただようやく会えたルディさんを前に、自分達の境遇など……精神的に追い詰められていた私達は、涙が出てしまう。
「ルディさん、アナタに謝りたくて……うわぁぁ〜ん」「私達が悪かったわ……クスンクスン」
ここは大通り……かなり、注目されてるでしょうね。それでもルディさんに、私達の今を分かって貰えるなら……しかし、
「そう、アナタ方もようやく自分の愚かさに、気が付きましたか……」
「私は、絶っ対〜に赦さない」
青い髪、赤い髪の2人は何か怒ってるみたい。少し怖かった。当のルディさんは……
「おっ、久しぶり。大きなケガしないように冒険者を頑張ってな。忙しいから……じゃあな〜」
えっ、それだけ? 久しぶりに会えて、私達の姿を見たのに? 昔のルディさんの優しさは、嘘だったの?
「主様、皆様を連れて、先にお買い物をしてらして下さいな。私達が、話を聞いておきますので……」
「おう、アオイとアカネに任せた。じゃあな……」
ルディさんが全く私達に、興味がないような態度でいたのがショックでした。その現実を、受け入れられないままに……路地裏へと連れて行かれる。
その道中で通行人が、話をしているのが聞こえた。
「おい、見てみろ。すげー美女だな」「ああ、セレスティアル・ガーデンの女の子達だろ」「そうだな、フォルトゥーナ商会も揃ってるな。眼福眼福」「手を出すなよ。リーダーのルディさんに狙われるぞ」
一般人にも噂される程、高みに昇っているみたい。
「改めまして、お久しぶりですね。エスナさん、ミラさん」
青い髪の女は、にこやかに挨拶をされた。
「……私はアナタ達を、知りません。ルディさんとは、どのような関係なんですか?」
「嘘ね。良く知ってるはずよ……ねぇ、ミラ?」
「ルディに、アナタ達みたいな……確か名前は……アオイとアカネ?」
私の隣にいた、ミラさんが何か気がついたようだ。アオイとアカネ? どっかで聞いたような……
「ええ、そうですよ。少しの間、行動を共にした『スライム』ですよ。その節は、お世話になりました。いつ、殺してやろうか……いえ、はしたないですね」
アオイと呼ばれた青い髪の女から、殺気が放たれている。
やけに辺りは、静まり返り私の生唾を飲み込む音が響いた気がした。
「全く、本当に分かってないのね。私達がルディを裏切り続けるアンタ達に力を貸していたのも、ルディに『エスナさんとミラさんの言う事を聞いてくれ!』って命令されて……自分達からは、離れられなかったのよ」
赤い髪の女が続く……まさか?
「まさか……スライムのアオイちゃんなの?」
「フフフッ、気安く『ちゃん付け』ですか? 主様を裏切った女だけはあり、礼儀知らずですね……」
アオイちゃんからさらに、濃密な殺気が……どうして? 私には、優しくしてくれたじゃない。
「ダメよ、アオイ。殺したらそこで、楽になってしまうわ。ルディを傷つけた以上の苦しみを、与えないと……」
こっちは、アカネちゃんなんだ。私とは、合わなかったけど……
「アカネ、頼むよ。また私と合体しておくれよ。目が……見えないんだ。魔力感知も温度感知も出来なくて、目を治す為の『女神の涙』を手に入れるまで、でいいんだ……」
やっぱり。アカネちゃんは、ミラさんとコンビを組んでいたから……アカネちゃんがいれば、ミラさんはまた冒険者として活躍出来ます。
「……ダメね。アナタ達に、何の価値もないわ。ルディを見たでしょ? 自分達が、入れると思うのかしら」
「そんなぁ〜。わっ、私達だって見た目なら……」
私達だって、まだ男の人達からエッチな目で見られてますから……あの私達を見捨てた男達や、あの憎きバイキングの男も……
「見た目ですか? アナタ方は、綺麗なつもりですか? その汚れた姿と心で、主様に取り入ろうとするのですか? それを私達が、赦すとでも?」
「そんな事を言っても……ルディさんだって、私達の事を……」
確かにルディさんを選ばなかった私達だけど、一次期は良い雰囲気だったのに……手を出して来ないルディさんも、悪いと思うの。
「それはない。ルディのあの興味の無い顔を、見なかったの? ルディは故郷でも、婚約者を他人に取られて……イヤ、婚約者だけでなく信頼していた家族も、友人も、ルディが親友と呼んでいた男に、全て取られたのよ。そしてここに来て……アンタ達、仲間もね」
アカネちゃんが、その強気な目をさらに力強くさせる。その目は、非情な魔物としての……捕食者としての、目だった。正直、ダンジョンの魔物を思い出してしまって、身体が固まってしまいます。
「私達だって……こんな事になるとは、思わないじゃ……ひい!」
「ウフフッ、ゴメンなさいね。アナタ方があんなグダらない男に惹かれていくのを、見てるしかなかった私達自身にも怒ってるのですよ……あの頃の私達では、人化出来なかった。それが結果、主様をさらに傷つけてしまうとは……この際、その元凶を殺したくなってしまうじゃないですか……」
アオイちゃんが、美しい声で私達に投げかける言葉は……さらにその全身から路地裏の建物を、ミシミシと軋ませるほどの濃密な殺気でした。
アオイちゃんとの関係はもう戻れないと悟るには、それで十分でした。




