表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寝取られ裏切られた最弱テイマー〜逆境を跳ね除け相棒のスライムと最強へ成り上がれ。許して?やり直して?絶対にイヤだね〜  作者: 月鈴
オークションと新しい仲間

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

116/117

悩める乙女

【白の女帝:ジェシカ視点】


 私は、ジェシカ・フォン・トロワと申します。


 ……いえ、そうではありませんでしたわね。今の私は家名を奪われ、首輪を嵌められた……ただのジェシカでございます。

 元貴族であり、実家の謀反の巻き添えを喰らって家門取り潰しとなった……トロワ子爵家の令嬢でございました。

 世間ではこの白い髪から『白の女帝』などと、呼ばれていますわ。私にとってはどうでもよろしいのですが。


 かつて、国の魔法学園に在籍していた頃の私は、常に歴代のトップを走り続け……魔導士としても同世代に、敵なしと謳われておりました。

 誰もが私に恐れを抱き、その才能を称賛し、私の未来は輝かしい栄光に満ちていると……あの日までは、信じて疑いませんでしたわ。


 それが、ある日突然、何の説明もないまま捕らえられ……冷たい鉄格子の奥に放り込まれ、気付けば奴隷として競売にかけられていたのです。そこでは断片的ではありましたが、事情を聞くことが出来ました。


「お父様が、謀反だなんて……そんなはず、ありませんわ……」


 お優しかったお父様が、国を裏切るような真似をするはずがない。

 けれど、今日に至るまで私を誰も迎えに来ないところを考えると……家族の身に、相応の非情な『処分』が下されたことは……想像するに容易うございました。


 そして、このお家取り潰しの茶番の裏に。

 あの、民衆から『勇者』と崇められている、軽薄な男……『勇者ランドルフ』が深く関わっているという噂を耳にした時、私の胸を焦がしたのは……血を吐くような激しい憎悪でした。


「本当に、虫酸が走るほど大嫌いな男でしたわ……」


 学園の式典でお会いしてから、事あるごとに私を品定めし……手籠めにしようと……おぞましい。

 それに他者を見下すような傲慢な瞳をして、常に女性を連れて歩いている。


 そんな男に、お父様を陥れられ私の人生を……家族を、すべてを奪って踏みにじったと……

 私が歩むはずだった輝かしい道は、黒く塗りつぶされ暗闇の中に続いている。


 その勇者への復讐を果たす力すらなく、地下オークションの檻の中で……ただ心を殺して、買い手を待つだけだった私。


「なんて惨めなのかしら……あそこで『勇者』に、下っていたら……家族だけは、助けられたの? 誰か教えてよ……」


 暗い檻の中には誰も答えてくれる者などおらず、私の掠れた声だけが冷たい鉄格子に跳ね返って消えていく。


 あの男……ランドルフに頭を垂れ、その穢れた手を取っていれば。

 子爵令嬢としての誇りも、魔導士としての矜持もすべてドブに捨てて……あの男の『玩具』になっていれば、お父様もお母様も、今頃はまだ生きて温かな食事を一緒に頂いていたのでしょうか……


 答えの出ない後悔と、それ以上に強固な……あの男への真っ黒な憎悪。

 冷たい床の上で膝を抱え、ただ心をすり潰すだけの抜け殻のようになっていた。

 私は、言われるままにあの地下オークションへ出品された。

 その地獄から連れ出したのは、他でもない私の主人になったルディでした。


 初めてその名を聞いた時、私は耳を疑いましたわ。

 あの、世界を救うと謳われる『勇者』から婚約者を奪われ、勇者パーティーからゴミのように追放されたという……哀れな『スライム使い』だと。

 私に自慢するランドルフから良く聞かされた、名前だったのです。


 けれど、私の前に現れたルディという少年は、憐れみを受けるべき敗北者などでは決してありませんでした。

 冒険者としても、商人としても、生産者としても、成功を収めている傑物です。私と同じ年なのに……


「ルディ……本当に、底の知れない男ですわ……」


 食堂の薄暗い窓の外、静まり返った運動場を見つめながら……私は小さく息を、吐き出しました。


 ランドルフに追放されたはずの彼は、誰も見たことのない強大なスライムという綺麗な娘達を従え……驚異的な能力で瞬く間に、この拠点を築き上げた。

 それどころか、奴隷であるはずの私を奴隷として扱わない。


 他の女性たちと同じように「家族」として迎え入れ、ふかふかのベッドと、美味しい食事と、何より……ジェシカという一個人の尊厳を、当たり前のように与えてくれたのです。身体を要求されるくらいは、覚悟していたのですが……もちろん、それなりの代償を貰うつもりでしたが……


「私は奴隷。ただの、暗い底に落ちた女……それなのに、どうしてそんなに真っ直ぐな目で私を見るの……? 優しくするのよ。これじゃ、期待しちゃうじゃない。希望を持ってしまうじゃない……もう、奴隷に戻れないじゃない……」


 それでも、私は信用しない。私の隙で、奴隷になってしまったから……今度は失敗しないように、気を張り詰めています。


「ジェシカ、私達はご主人様を、受け入れるべきだと思うの……多分、これ以上はあの子達に、居場所を奪われる。だから……」


 なんとなく、分かっていたわ。ルーナは私を気遣って、ルディを受け入れなかった。私が意地を張って、元エリートのプライドから『スライム』を受け入れないから……

 そうね。このままだと……また、あの暗い檻へ逆戻り……


 ルーナは仲良くなれた娘だし、道連れには出来ない。それにやっぱり、悔しいじゃない……だから


「ルディ、ゴメンなさい。私達にも『スライム』を貸して。お願い」


 つまらないプライドとは、今日でサヨナラ。私は女帝から、普通の女性になるの……

 本作品をご覧頂きありがとうございます。


 日曜日から新作を公開する事になりました。よろしければそちらもご覧頂けたら嬉しいです。初日は1章分15話をお昼過ぎから公開致します。次回作タイトルは……


『スローライフを送るはずが、スキル『育てる』の使い方を間違えて辺境の貧乏領地が最強へと花開く~前世の妻から枯れたと言われ意地になったオジサンが異世界で咲き誇る~』


 スローライフ×勘違い×戦記になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ