商売無双
今日は『フォルトゥーナ商会』の店舗の方に、来ている。リネットに任せっきりになるのも悪いと思って時々、冒険者活動の合間を狙って店舗にも時々いる事にしている。
そして奴隷のみんなの働きぶりも、見ている。
「みんなさん。今日も稼ぎ日和だよ。さぁ、唱和して下さい……今日も、ニコニコ現金払い……信用は、金を払って買うモノだ……」
「「「今日も、ニコニコ現金払い……信用は、金を払って買うモノだ」」」
「ストップ、ストップ……リネット、いつも朝礼でこれをやってるの?」
俺が思わず頭を押さえながら止めに入ると、リネットは今日はメイドではなく店員をしているココアたちの前で……ピシッと背筋を伸ばしたまま、不思議そうに首を傾げた。
「はい、ご主人様。商人たるもの、手元の現金こそが最大の武器であります。それを毎朝身体に叩き込むのは、基本中の基本ですが……何か、問題がございましたでしょうか?」
凛とした、一切の曇りもないプロの商人の瞳。
イヤイヤ、間違ってはいないけど……ねぇ〜。
「うん、何でもない。続けて……」
「はい。本日はご主人様もアオイ様・アカネ様も、みなさんの働きをご覧頂けるとの事ですが……あまり、意識しすぎるのもダメですよ。まずは目の前のお客様に、全力を尽くして下さい。それでは、今日も頑張りましょう」
「「「はい!」」」
それを合図に、各持ち場へ散っていく。ちなみに『フォルトゥーナ商会』の店舗では8時〜17時まで。
残業もなし。土日は休業日にしているので、必然的に商会員も休みになる。
「「「いらっしゃいませ。フォルトゥーナ商会へようこそ〜」」」
可愛らしい女の子の店員に男性客がデレデレしてると、同伴している女性に抓られている。そしてこの世界では、珍しい制服を採用している。
「そう……ついに、フォルトゥーナ商会の店舗を持てた。そう、ならばやるしかないよね。ミニスカ店員さんを……」
隣にいたアオイとアカネは……
「ウフフッ」「バッカじゃない」
今度は、アオイとアカネにも着てもらおう。そうしよう……
次々と訪れるお客様の波を完全に乗りこなす、リネットと商会員達に心からの拍手を送った。
「はい、冒険者レーションの12個パックを4つですね……一緒に、ポーションなど如何でしょうか? 今ならポーション6本セットで、もれなく……もう1本サービスですよ」
「……買います」
何だろう? この深夜のテ○ビショッピングみたいな売り文句は。まさか、俺と同じ転生者でも……
イヤイヤ、そんな事はないかな?
「こちらの槍など、お客様にピッタリですよ。やだ〜、カッコいいです〜」
「……買います」
おいおい、このお客さんは槍を見てないで接客している女の子の太ももばかり見てる。俺もだけど……
あと少しでパンツが見えそうで、ドキドキするよね。
「リネット店長〜、ビギナリア商業ギルドの使いの方から商談でいらっしゃいました……」
そう、大口の商談は店長のリネットと、副店長を任せたセシルが担当している。セシルは普段は物静かだが、良くリネットをサポートしている頼れる副官といった感じだ。他の商会員からの信頼も厚い。
「セシルさん。またビギナリアの『ガメツ商会』から、商品を寄越せと催促が……」
「全ての取り引きを中止! 今後一切の取り引きを、禁止します」
そう、リネットでは若さゆえ……こういう判断がまだ出来ないけど、セシルは非情な判断も出来る。そこもまた、魅力なんだ。俺はセシルに向かい、親指を立てて『良くやった』と……それを見たセシルは赤い顔をして、ニッコリと笑った。うん、これからもリネットを支えて欲しい。
「おい、ウチの商会と取り引きしないというのは……」
どうやら『ガメツ商会』というのは、たちの悪い商会みたいだな……ガラの悪いチンピラみたいなのが、怒鳴り込んで来たようだ。俺が解決するのは早いが、ここはみんなに任せてみよう。
そのチンピラの前に立ち塞がるのは『フォルトゥーナ商会』の護衛でもある、レナとミアの獣人族コンビだ。
「あたいらの、商会に何の用だい?」
「ウチらを、通して貰わないとニャ」
指をボキボキ鳴らして、2m近い身長ではあるが女性らしい肉体の2人……レナは狼の獣人で、ミアは猫の獣人だ。
「私が取り引きの中止を、申し上げました。それが、どうかしましたか?」
副店長のセシルが、獣人族コンビの間から出てきた。凄い度胸だね。
「ちょっとゴメンなさい。通して下さい……」
店長のリネットも、来たね。さて……どうなる?
「話は聞きました。結論から言うと『フォルトゥーナ商会』は今後、『ガメツ商会』とは取り引きをしません。それだけでなくこんな騒ぎを、おこしたのです……『ガメツ商会と関係ある』団体・個人とも、取り引きを禁止します。これは、店長としての命令です」
おお、リネットも頑張った。チンピラ相手に……
「何だと……黙って聞いてりゃ……商会長に合わせる顔が、ねーじゃねーか」
リネットに殴りかかるチンピラ達に、レナとミアの獣人コンビがアッサリと撃退した。
ん〜、今回は上手くいったが……レナとミアだけでなく商会員……イヤ、こうなったら全ての奴隷達の、レベルアップをしたほうがいいのでは? そうだな……そうしよう。




