武術訓練
「せい、やぁー」「はい、とりゃー」「あっ、きゃ〜」
今、拠点を建てた時に作った運動場に集まり、全員で武器の素振りや模擬戦などが行われている。
最初は俺も得意な事をしていければと、思っていたけど……先日のチンピラ達みたいに、家族を害する可能性がある。
それにここは、異世界だ。常に、暴力に晒されている。それは人間の悪意だけでなく、故郷でも起きたスタンピードなどの魔物なども含まれる。だからこそ、自衛出来る力は必要なんだ。
これも、家族を守る手段になるはずだしね……
ドラン親方とバルカンのドワーフコンビに、刃を潰した模擬戦用の武器を作ってもらった。そして現在は、みんなで適性武器を調べる為に振っていた。
もちろん、武術なんてやった事のない女の子が多い中でも、みんな真剣な表情だ。
冒険者組やレナやミアみたいな基礎が出来てるメンバーが、みんなに教えながら訓練をしている。
アオイやアカネも、そこの輪に混ざってるね。
「体力も少ないからすぐにバテるけど、こればかりはしょうがない。焦らず、少しずつ慣れていくしかないね」
俺が運動場の隅でドラン親方たちの作ってくれた木剣を手に呟くと、隣にいたリネットやセシルが……額の汗を、ハンカチで拭いながら小さく頷いた。
「はい、ご主人様。ですが、みんな驚くほど前向きです。『旦那様やフォルトゥーナ商会の足を引っ張りたくない、自分たちの家は自分たちで守りたい』と……昨日ココアたちメイドからも、直訴されたほどですから」
リネットの視線の先では、茶髪のおさげを振り乱したココアが……レナの指導のもとで、必死に短剣を突き出していた。
「せい、やぁー!」
と声を上げるココアの足取りはまだ覚束ないが、その瞳にはかつてオークション会場で怯えていた面影は一切なく……未来を生きようとする、強い光が宿っている。
「ミリーは意外と筋が良いニャ。体幹がしっかりしてるから、槍の才能があるかもしれないニャ!」
猫獣人のミアが、緑髪ボブカットのミリーのフォームを直しながら嬉しそうに尻尾をパタパタと揺らしている。
一方で、ピンク髪ロングのネネは杖を両手で持ったまま……
「うぇ〜ん、もう筋肉痛になりそうです〜」
とおっとり泣き言を言っているが、アオイがその背中にそっと手を当てて回復魔法を使っている。
「あら? なんだか身体がポカポカして軽くなりましたぁ」
と、不思議そうに目を丸くしていた。アオイの細やかな気配りと魔法は、こういう初心者の育成でも本当に頼りになる。
「ふん。ほら、そこの新人冒険者たち……情けないわね。私より先にバテてどうすんのよ。シャキッとしなさい」
アカネは相変わらずのスパルタっぷりで、地面の上で倒れていたあの新人たちをビシビシとシゴいている。でも、その表情はどこか楽しそうだ。
「ガハハ。ルディの小僧、なかなか壮観じゃな。ワシらの打った得物が、こうして若い連中の血肉になっていくのを見るのは悪くない」
「ふん、これなら近いうちに、商会の将来を狙う若者が野盗なら返り討ちにできるようになるだろうな。どれ、ワシらも……」
工房から顔を出したドラン親方とバルカンも、腕を組んで満足げに訓練を眺めているだけでなく自前の大槌を振り回す。風切音がハンパない。
「ホッホッホッ……」「フッフッフッ……」
そして、1番可笑しいのが……ハンスとマーサの夫婦だ。イヤ、アナタ達この中で最年長だよね。先ほどからハンスは、短剣の二刀流で手が見えないほどの手数……
マーサは薙刀を、器用に振り回す。
しかも、動きに無駄がない。それを見ていたアオイがハンスと……アカネがマーサと打ち合いをしている。
アオイ・アカネは俺と合わせて、この中でも最強だよね? でも致死性の高い攻撃を控えているといっても、互角なんだけど……
しかも、息を切らしてないし。本当はこの2人が、1番の拾い物かも……嬉しい誤算だね。
◆◆◆◆
武術はある程度、分かった。今は魔法の訓練場で、特訓をしている。俺とアオイ・アカネは魔鋼を使った訓練場で頑丈だが、さらに魔力で強化している。
そこで力を見せたのは、シークレット奴隷として売られていた3人だね。
『白い女帝』ジェシカ嬢、『蒼穹の月』のルーナ、のじゃロリ娘『天狐』のリンの3人だ。
ジェシカ嬢は元々、魔法が得意で学園でもトップだっただけはありどの属性でも器用に使いこなす。
ルーナは魔法が得意なエルフだ。風魔法と水魔法が特に良い。
そして、リンは獣人族で唯一魔法が得意な天狐族だ。
特に炎魔法と幻惑魔法に、特化している。
逆にはドワーフコンビやライオン獣人のガルバなどは、魔法が苦手だ。ハンスもそこそこ止まり。つまりは、俺以外の男性は……
男性とは違い、女性は魔法に才能がある者もいた。
男女の違いは、あるのだと思ったが……獣人族のレナとミアも、苦手みたい。まぁ、生活魔法程度の魔法は、扱えるみたいだけどね……
まぁ、こっちも日々、特訓をしていけば迷宮都市ビギナリアではトップクラスになれる日も多分遠くないだろうね……特に誰が敵になるのか分からない状況だから、鍛えておくことで備えたい。




