男同士の会話
「それでは主様。皆様を連れて、お風呂に行ってまいります」
「ルディ、覗くんじゃないわよ」
アオイとアカネ……それに女将さんと、看板娘達に連れられてお風呂に行く女性メンバー。
残されたのは俺とマスター、執事のハンス、獣人族の男、ドワーフ族の男が残った。見事に、華が無いな。
「自己紹介をしよう。まずは俺からだ。キミ達の主人になった、ルディだ。俺は冒険者でもあり、商人でもあり、生産者でもある。キミ達には、その手伝いをしてもらいたいんだ」
俺がそう締めくくると、男たちは一瞬だけ顔を見合わせたが……すぐに最年長の老執事が一歩前に出て、完璧な一礼を捧げた。
「では、次は私めに。旦那様、ハンスと申します。元はある侯爵家に仕えておりましたが、政争に巻き込まれ奴隷へ落とされました。書類仕事、屋敷の管理、ならびに最低限の護身術や礼儀作法などを少々……内政に関することなら、何なりとお任せください」
さすがは、上級貴族の侯爵家の執事だっただけはある。今後の拠点管理や商会の手伝いは、このハンスに丸投げできそうだ。頼もしすぎる。
「次、俺だな」
ハンスに続いて、丸太のような腕を組んだ獣人族のマッチョマンが不敵に笑った。
「俺はガルバ。ライオンの血を引く獣人族だ。前は一端のBランク冒険者をやってたんだが、ダンジョンで罠にハメられてな……こう見えて大盾を使った、前衛防衛が得意だ。ルディの旦那……あんたの盾になって、どんな敵の攻撃も弾き返してやるぜ」
なんと、Bランクのガチ前衛。しかも、防御主体なんだな……冒険者パーティーに入れるのも、戦えないメンバーの護衛など色々と使えそうだな。
「……最後はワシか」
ドワーフのオヤジが、モッサリとしたヒゲをガリガリと掻きながら……面倒くさそうに、口を開いた。
「ワシはバルカン。ドワーフの頑固職人よ。ちょっとばかり、納品先の貴族を殴り飛ばしちまって……奴隷に落とされたが、腕は信用してくれ。鉄でも魔導具でも、設備と酒さえありゃ何でも打ってやる……で、旦那は……酒は飲ませてくれるんだろうな?」
「ああ、バルカン。風呂上がりにマスターの美味い料理と一緒に、エールを奢ってやるよ。あ、ハンスもガルバもいいぞ。酒が好きな飲みたいヤツはな」
俺が笑ってそう言うと、バルカンは
「ガハハ。話のわかる主人だ!」
と大喜びし、ガルバも
「美味い肉も頼むぜ」
と目を輝かせた。ハンスだけは、
「これこれ、旦那様に催促するなど無礼ですよ」
と窘めていたが、その目元は嬉しそうに緩んでいる。
「んで、ルディの旦那よ。あの色っぺえ青髪と、ナマイキそうな赤髪のどっちが……旦那の女なんだ?」
突然、ガルバがぶち込んできた……
「コラコラ、旦那様に失礼ですよ。ガルバ」
ハンスが諌めるが……
「いや、聞いた方が良いぞ。主人の女に手を出したとか、目も当てられん。ワシは、ヒゲの無い女には魅力を感じんがな……」
バルカンのその言葉に、俺の思考は完全にフリーズした。
……え? ヒゲのある女? ドワーフ族って、女もヒゲが生えてるの?
いや待て。俺を裏切った『リジェクテッド』のミラも、ドワーフ族だったはずだ。あいつ、小柄で気の強い、普通のロリっ娘だったぞ。ヒゲなんて、一本も生えてなかった気がするんだが……
「……あの、バルカン。ドワーフの女性って、みんなヒゲが生えてるのか? ミラっていうドワーフの知り合いがいるんだけど、ツルツルだったぞ?」
俺が恐る恐る尋ねると、バルカンはフンと鼻を鳴らして……心底呆れたように、首を振った。
「旦那、それはまだ『産毛』しか生えとらんガキ……あるいは人間に色目を使う為に、ヒゲを剃り落とした不届き者よ。ドワーフの真の美女ってのはな、編み込みを入れた見事な顎ヒゲを蓄えとるもんだ」
「マ、マジか……」
文化の違い、恐るべし。ミラがヒゲ面じゃなくて本当に良かったと、今更ながら元パーティーメンバーの顔を思い出して戦慄してしまった。
「おいおいバルカン、ドワーフのヒゲ談義はどうでもいいんだよ」
ガルバがニヤニヤしながら、俺の肩に丸太のような腕を回してきた。
「それより、旦那の答えを聞かせろよ。あの青髪と赤髪、どっちが本命なんだ? それとも、さっき連れてた没落貴族の白髪や、エルフも、これから手を出していく予定なのか? くぅ、羨ましいねぇ!」
「おう、アオイもアカネも俺の嫁だな。やらんぞ……手を出したら……」
俺は一瞬で、少し魔力を開放した。最初が肝心だからな。それと……アオイがハーレムを作れと言ってたしな。
「……ガルバ、ガルバ。旦那様、申し訳ありません。ガルバには、後で言って聞かせます……失礼ですが、ハンスの見立てでは、あのお二方はどちらも旦那様に『心も身体もすべて捧げている』ように、見えましたので。話を聞いている限り旦那様は冒険者としても、商人としても、生産者としても、成功なさっておいでだと……ならば沢山の娘を娶るのではないでしょうか?」
さすがは元侯爵家の執事、観察眼が鋭すぎて心臓に悪い。
「ガハハ。つまり全員ってことか。旦那、細身なのに絶倫だなぁ。まぁ、あの魔力量は異常だしな。元Bランクの俺でも、ビビったからな……」
「そうですよ、ガルバ。旦那様に黙って、女性へ手を出さないように……」
俺達の話は、女性メンバーが風呂から出るまで続いた……




