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貫き通せ我が騎士道  作者: 神木ユウ
第3章 清風国ウィンド
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第115話 引きこもりの体力

 王子たちの剣の鍛錬を見たり、遊んだりしているうちに1週間は過ぎ去った。

 あっという間だ。その間、魔王の封印が解けた様子もなく、平和そのものだった。


「では陛下。我々は旅を再会しようかと思います」


「うむ、そういう約束だったからな。いつでも戻ってくると良い。歓迎しよう」


「ありがとうございます」


「ユーリ! 今度来たときは武術を教えてやる!」


「ええ……。では機会があればお願いします」


 宰相が武術を教えるなんてことが出来るのか疑問に思ってしまうのは、失礼だろうか。


「ユーリさん! また来てくださいね!」


「その際は僕たちの成長をお見せします」


「ええ、楽しみにしています」


 王子たちはきっとどんどん強くなるだろう。何年かしたら、追い抜かれているかもな。俺も頑張らないと。


「ああ、ユーリ。ライラを頼む」


「ライラはわたしが何かせずとも自分でどうにかしそうですが……。わかりました」


 そう、俺たちの旅にライラがついてくることになった。本人の希望らしい。理由を聞いたら、


「未知の物を見に行きたいだけさ」


 なんて言っていたが、どこまで本気なのやら。


「では、失礼します。またお会いしましょう」


 城を後にした。







 城から出るとエイミー、クラリス、ライラが待っていた。


「一緒に来れば良かったのに」


「出発の準備がありましたので」


「女の子は色々必要なんスよ」


 よくわからないがそういうことらしい。


「じゃあこれからよろしくね」


 目指すは火炎国バーン。まだ無事だと良いが……。






 王都リーズトルストから南南西に40~50日ほど行ったところに、グリントという街がある。街を抜けて更に進むと火山があり、その先が火炎国バーンだ。


 道中、今までの旅路をライラに話しながら歩く。

 その中でライラが興味を持ったのは、アクアの旧都の話だった。


「その研究ファイル、持ってるんだよね? 見せてもらって良い?」


「結構な量があるぞ?」


「大丈夫、袋に入れておくよ」


 旧都の地下から持ってきた悪性魔力の研究資料をライラに渡す。


「そんなの読んでどうするッスか?」


「この手の研究資料っていうのは研究の過程も事細かに記されている物だからね。どんな研究をしてどんな結果になったのか、それがわかるのは大きいよ。ただでさえウチは悪性魔力に全く触れてこなかったからね」


 今は悪性魔力に触れても大丈夫なはずだが、これまでは近づくことも出来なかった訳で。もしかしたらライラが悪性魔力について詳しくなったら、もっと開発の幅が広がるのかもしれない。


「そんなに山ほど袋を持って……。一体どれだけの物を持ってきたんですの?」


 ライラは腰に4つ拡張袋をぶら下げている。それだけでも多いが、背に大きいかばんを背負っており、その中にもいくつも拡張袋を持ってきたらしい。


「完成品の道具もいっぱいあるし、材料も色々持ってきたし、ウチの研究資料も持ってきたし、いくらでも必要なものはあるからね」


「旅しながら道具開発するつもりですの?」


「時間があるときにね。流石に歩きながらは出来ないよ」


「出来る出来ない以前にやろうとしたら止めるけどな」


 歩きながらなんて危なくて見ていられない。出来たとしてもやらせなかっただろう。


「あ、そうそう。君たちにこれをあげるよ」


「なんスか?」


 渡されたのは片手サイズの黒くて四角くて薄い道具。何やら番号スイッチがついている。


「通信機だよ。番号スイッチを押すとその番号に登録した通信機と繋がるんだ。複数押せば複数と同時通信も出来るよ」


「おおー! 便利道具ッス!」


「これ、俺でも使えるのか?」


 俺は魔力がない。俺には使えない道具っていうのは結構多い。


「これは魔力補充式だから大丈夫。魔力補充はユーリ君じゃ出来ないから誰かに頼んでね」


「良いですわね。エイミーさんの索敵もやりやすくなると思いますわ」


 確かにな。いちいち見えるところまで戻ってきて合図を出す必要がなくなる訳だ。

 流石魔法技術局の室長。便利なものをたくさん持っているんだな。







「はぁ……はぁ……旅って……大変だね……」


 しばらく歩いていると、ライラが疲れた様子を見せ始めた。


「まだ2時間くらいしか経ってないッスよ」


「仕方が……ないじゃないか……。ウチはずっと引きこもってたんだよ……?」


 確かに体力に関しては仕方ない部分もあるか。むしろよく2時間もったと言って良いのかもしれない。


「俺が背負っていくか?」


「それじゃユーリ君が大変なんじゃない?」


「いや、俺の体力に関しては心配しなくて良いぞ」


 今までの旅で、普通に歩いていて疲れたことはない。流石に雪山の時とかは疲れもしたが、ただ歩くだけならライラくらい背負っていても問題ないはずだ。

 ただのわがままなら自分で歩けと言うところだが、ライラの体力がないのはライラのせいじゃないしな。


「そう? じゃあお言葉に甘えようかな……」


 ライラが俺の首に腕を回してくる。持ち上げてみると、軽くて何の負担にもならない。


「軽いな。見た目よりも更に軽い気がする」


「人間よりは軽いかもね。もしかしてこんな風にしがみつく必要もなかったりする?」


 ライラの腿の下に片腕を回して持ち上げる。これでも余裕だな。片腕で運ぶことが出来る。


「おおー、何か楽しいね、これ」


 そう言って俺の上ではしゃいでいるライラ。腕から肩に乗り移って肩車の体勢になったり、腕に戻ってきたり好き放題している。


「そうしていると子供以外の何者でもありませんわね」


「ふふ、パパーって?」


「止めろ。年上の娘なんてできてたまるか」


「見た目年齢的に言っても流石にキツイッスね。兄さんは20代前半くらいに見えるッス。ライラが見た目通りの年齢としても、娘は無理があるッス」


「じゃあ、お兄ちゃん♪」


「っ!」


 そんな甘えた声で呼びかけないで欲しい。本当にもう1人妹が出来た気分になる。


「おや? お兄ちゃん♪」


「止めんか!」


「ユーリさんって妹が好きなんですの? ……お兄様?」


 更に広がってしまった。3人とも妹になってしまう。別に特別妹が好きって訳じゃないはずだ。新鮮な呼び方が何となく良さ気に感じてしまうだけで。


「やめるッス! 兄さんの妹はあたしだけッス!」


「ふふ、冗談冗談。なかなか楽しいね?」


「ライラ、自分で歩くか?」


「ああ、ゴメンって! もうしないから降ろそうとしないで!」


 まったく、すぐからかってくる。ライラのこの性格は、もしかして妖精のイタズラ好きな性質が出ているんだろうか。


「お兄様?」


「クラリスも止めろ」


 南南西に向けて歩を進める。

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