第113話 閑話:楽しいプール
閑話4話の3話目です。
「遊びに行こう!」
「いきなりどうした……」
宿の部屋に来るなり叫ぶライラ。
「一仕事終えたらパーッと遊ぶ! それが楽しく生きるコツだよ」
「お前が言うと重いんだが……」
今まで一仕事どころかどれだけ仕事をしても、そうそう遊びになんて行けなかっただろうライラにそんなことを言われると、どこへでも連れて行ってやりたくなる。
「どこに行くんだ?」
「プールに行こうよ。行ってみたかったんだ」
前にも泳いだことがないから気が進まないって言ったはずだが……。そんなにプールに行きたいのか。
「何でそんなにプールに行きたいんだ?」
「楽しそうだろう?」
それだけ? まあ良いけどな。
「クラリスとエイミーにも……」
「さあ行きますわよ!」
「準備はできてるッス!」
「……そうか。少し待ってくれ。俺は準備ができてない」
明らかにあらかじめ準備していた2人の様子を見れば、もともと知っていたのは察することが出来る。何をたくらんでいるのやら。
「へぇ、これが水着ってやつか」
プールには水着売り場があった。もちろん俺は水着なんて持っていないので、ここで買うことになる。
「下着との違いがあまりわからんな。材質が違うのはわかるが」
「一般公開されているプールなんてこの国にしかないッスからねー。あたしも初めて見るッスよ」
「これで……人前に出るんですわよね……? 流石に恥ずかしいですわね……」
俺たち以外にも客はいるはずだ。この格好が一般的とわかっていても、確かに恥ずかしさがあるかもしれない。
「君たちが恥ずかしく思うのは予想済みさ。そこで王侯貴族御用達、個別プールだよ!」
ライラが指差した先には「個別プール 自由にのびのびと遊びたいあなたに」という貼り紙がされている。
そこそこの値段だが、見知らぬ人が入って来れない隔離されたプールがあるようだ。
「自宅に作るほどではないけどプールが楽しみたいという貴族なんかが利用するものだね。貴族用だから警備も万全、不逞の輩の侵入なんて許さないよ」
「そこまでしてプールで遊びたいのか……」
「行こう。お金はウチが出してあげるよ」
プール内で女性陣を待つ。個別プールなのにかなり広い。円形のプールの中央に島があり、寝ころがることが出来る椅子が並べられている。ボールとかの遊ぶ道具も色々置いてあるようだ。
現在俺が身に着けているのは、腿にぴったり張り付く感じの黒い水着だ。見知らぬ人はいないとはいえ、やはり下着姿で外に出ているようで落ち着かない。
「兄さん、ジャーン! どうッスか?」
真っ先に来たのはエイミー。着ているのは上下が一体になった水色の水着だ。普段はあまり気にならなかったが、こうして肌が見えると普段出ている部分が日焼けしているのがわかる。
「うん、良いんじゃないか? 可愛いと思うぞ」
「そんなチラチラ見ないでちゃんと見て欲しいんスけど」
「いや……流石に多少の慣れを要するというか何というか……」
「さあユーリさん、いかがです? エイミーさんで慣れましたでしょう? しっかり見て感想を聞かせてくださいな」
次に来たのはクラリス。身に着けている白い水着は、完全に上下が分かれていて下着にしか見えない。白く透き通る肌が見えるのを視界に捉え、目を逸らした。
「ああー、うん。良いと思う」
「全く見てませんわね……」
「そこでウチの登場って訳だよ。ほら、ユーリ君。これならしっかり見られるだろう?」
ライラが身に着けているのは、なんというか、物凄い可愛らしいピンクの水着だ。形状的にはエイミーの水着にスカートをつけた感じだが、フリフリがそこらにあしらわれて可愛さを前面に押し出している。
「それ……可愛いとは思うけどさ……」
「何か文句でもあるのかい?」
「文句はない」
とても似合っている。どこからどう見ても可愛い女の子だ。実年齢さえ考えなければ何の違和感もない。
「さて、泳ごうじゃないか」
「泳ごうと言っても、誰も泳いだことがない訳だが」
「水に入ってうろうろしているだけでも楽しいはずさ」
そう言ってプールに入っていくライラ。
「まあここで突っ立ってても仕方ないか」
プールに入ってみる。思ったより冷たくない。遊びやすいように良い感じの温度に調節しているんだろう。
「あたしも行くッスー!」
エイミーが飛び込んでくる。水が盛大に飛び散った。
「ちょっと!? こういうのはゆっくり入るものですわ」
そう言って、足先から少しずつ少しずつプールに入ってくるクラリス。
「さっさと来るッスよ!」
「きゃあっ!?」
そんなことをしていると、エイミーがクラリスを引っ張ってプールに落とした。おいおい……大丈夫か?
「ぷはっ! 何するんですの!? 死ぬかと思いましたわ!」
「さあ、追いついてみるッス! あたしに追いついたら、これ返してあげるッスよー」
そう言ってプールを走り出すエイミー。テンション高いなー。……ん? あいつ、何持って……
「ちょ!? 私の水着返しなさい!!」
!? ……何も見てない、何も見てないぞー。
「ユーリ君、じっくり見ても怒られないよ。さあ、クラリスちゃんの方に目を向けて……」
「止めんか」
誘惑してくるんじゃない。しかも自分じゃなくてクラリスを使って。
「クラリスちゃんを使わなければ誘惑しても良いってことかな?」
「だから自然に心を読むんじゃない。誰もそんなこと思ってないぞ」
「君は、ウチみたいな体にも興味を持てるのかな?」
ライラみたいな体? 妖精の体ってことか? 何か人間とは違うんだろうか。
「魔力でできてると何か勝手が違ったりするのか?」
「そういう意味じゃないんだけど……。まあ答えようか。ほとんど人間と変わらないと思うよ。食事して、睡眠して、動けば疲れて、お風呂にも入るし」
「へえ、魔力があれば生きていけるって訳でもないんだな」
「魔力をある程度の食事代わりに出来るっていうのはあるね。ただ、そういった性質はウチが人工妖精だからなのか、妖精はみんなそうなのか、それはわからないな」
そうか、自然の妖精は別の可能性もあるのか。アクアの北にいたあの妖精はどうやって生活していたんだろうな。
「で、ユーリ君はウチの幼い体にも興味あるかい?」
「……そういう意味かよ」
興味、ねぇ。ライラの体を見る。身長としては140くらいか。もちろん幼いんだが、正直エイミーとあまり変わらない気もする。
そう考えるとイケる気もしてくるな。……いやいや、何を考えているんだ。
「ふふ、脈ありかな。今はそれで良いや。さあ、遊ぼうか、ユーリ君。何がしたい?」
「……はぁ、何か疲れたよ」
「あ、そうそう。ウチの体って多分大きくも出来るから、それなら悩むこともないよね?」
「……はぁ!?」
大きく出来る!? え、自由に変えられるのか!?
「今色々試してるんだ。そのうち自由に出来るようになるはずだから、期待して待っててね?」
「何をだよ……」
「ふふふ」
エイミーに全く追いつけず泣きそうになっているクラリスの声を聞きながら、俺はライラとプールでのんびり遊んだ。




