第112話 閑話:剣たちのお話
閑話4話の2話目です。
『ご主人はまだまだ剣の扱いに慣れてないところがあるよね』
「ん? そうなのか?」
宿の部屋でくつろいでいると、急にヴィラからダメ出しを受けた。何か問題があっただろうか。
「あ、もしかして戦闘中に手放したりしたことか? 悪かったよ、ああしないと間に合わないと思ったんだ」
鞘に収めるのはもちろん、体内に戻す時間すら惜しかった。悪いとは思うが、仕方がなかったんだ。
『そんなことじゃないよ。それは仕方ないのもわかってるから良いんだ』
「違うのか。じゃあ何の話だ?」
『あたしの能力! 使えば良かったでしょ?』
「能力?」
適応能力か? 使えばって……
「もしかして、デスディが使ってきたあの良くわからない光にも適応出来るってことか?」
『そう! 何で使わないかなぁ。使ってればあんなにボロボロにならずに済んだのに』
「そんなこと言われてもな……。あの光がなんなのかわからなかったし、適応しようがなかったんだよ」
『わからなくても、今の環境に適応ってすれば良いでしょ?』
「そんなことが出来るのか?」
『出来るの! わざわざ○○に適応するって具体的に考えるより、今の状況に適応するってした方が楽でしょ?』
そりゃそうだが、出来ることを知らなかったんだから仕方がない。
『ヴィラ、それは自分の能力をちゃんと説明していないあなたにも問題があると思います』
『えー、だってわかってると思ってたし……』
『わたしの能力みたいに複雑なものでもないと、なかなか詳しく説明しようとは思わないんじゃないかしら』
『そうそう! カフィ良いこと言った!』
『調子に乗らない! あなたの説明不足でマスターが余計に傷ついたんですよ!』
『もう……ゴメンってば。今後は使えるんだから良いでしょ?』
「喧嘩するなって。フィー、俺は大丈夫だから」
『最近マスターはボロボロになりすぎなんですよ! もっと気をつけて戦ってください!』
『……それは同意』
こっちに飛び火してきた。確かに最近は怪我が増えている気がする。
「それは最近強い敵と戦うことが多いせいだって。俺が油断してる訳じゃないはずだぞ」
『でしたらもっと私を……』
『居合狂は黙っててください!』
『フィーはアンに厳しすぎるんじゃないかしら。アンだってもっと使って欲しいと言っているだけなのよ?』
『その通りでございます。私の想いは剣として当然の想いであって、そのように発言を遮られるような悪ではないはずでございますよ』
『アンが抜かれる度にマスターの腕が折れるんですよ! そんなしょっちゅう使われては困ります!』
「フィー、落ち着けって。アンも、つい先日使ったばかりだろ? またしばらくは我慢してくれ」
『むぅ……』
『ええ、ええ、もちろんでございます。またその時をいつまでも待っておりますよ』
『剣としての本分と言うのなら、黙って使われていれば良いのだ』
『えー、そんなのつまんないよ。もっとコミュニケーション取ってこうよ!』
『わたしももっとお話したいわ。ただでさえ普段はご主人様の邪魔にならないように静かにしてるんだから』
『剣として、主の要求に応えるのが全て。余計な会話など不要だ』
『ちょっとそれには同意しかねますねぇ。マスターとの会話がより戦いを有利に運ぶ可能性だってあるはずですよ』
『……マスターが知らないことを教えるのも大事』
『そういうことです。マスターはそんなに物知りな方ではありませんからね。わたしたちが知っていることを教えるのも大切なことだと思います』
『ふむ……。主、わたしの能力を使うだけでなく、わたしを盾にするとより守りが堅くなる。覚えておくと良い』
「え、大丈夫なのか? 折れたりしないか?」
『あまり舐めないでもらおう。わたしはより堅くと造られた剣だ。そう簡単に折れたりはしない』
「そうか……。わかった。機会があったら頼らせてもらうよ」
あまりそんな機会はない方が良いんだけどな。ソルの能力に頼るときって要するに傷つくときだし。
『……マスター、不審なものを見る目で見られてるよ』
「え?」
部屋の中にクラリスとエイミーがいた。いつの間に……。
この部屋は1フロア丸々使った大部屋で、全員一緒に泊まっているから、2人がここにいるのは不思議ではないんだが、全く気づかなかった。
「あ、やっと気づきましたわね。こちらから見ると、ひたすら独り言を呟く不審者以外の何者でもありませんでしたわよ」
「剣と話してるのはわかってるッスけどね。そろそろ兄さんの許容量に収まらなくなってきたんじゃないッスか? 6本なんて」
確かに、剣たちが全員話していると、周囲に気を配る余裕が全くなくなってしまう。
とはいえ、一生黙ってろなんて言えないし、言いたくない。俺が気をつければ良い話だ。
「大丈夫だ。剣と話すのも大事なことだしな。周りの様子も気にかけるようにするよ」
「まあ兄さんが良いって言うならあたしが言うことはないッスけどね。人前でやらないように気をつけるッスよ」
「剣たちだってその辺はわかってくれてるんだぞ。人との会話中に割り込んできたことなんて全く……」
砂漠の街リセルの服屋で騒いでいたフィーを思い出す。
「ほとんどないからな!」
「何で言い直したんですの?」
「きっと心当たりがあったんスよ」
『うう……すいません、マスター……』




