第109話 創造のデスディ
リィンで気配を感じながら城内を駆け抜ける。あと少しで謁見の間に着く。
極光が謁見の間から飛び出してくるのが見えた。そしてその極光に飲まれる3人。
このままでは間に合わない……!
「連花・影吹雪!」
鏡花水月による高速移動を連続で行う。高速で白衣の魔族に接近、そのままヴィラを振り抜く!
「はぁっ!」
「っ!!」
銃を両断したが、避けられてしまった。回避して崩れた体勢の奴にそのまま追撃する!
「花吹雪・三分裂き!」
右手のヴィラによる三連撃。直撃する、その直前、
奴が急に落ちるように横に移動した
「なにっ!?」
「ラピッド・ブラスト!」
そして残ったもう片方の銃から噴き出すように細かい弾がばら撒かれる。
「ぐぅっ!」
何発か食らいながらヴィラを落としてソルを取り出す。多少の怪我にはなったが致命には程遠い。問題ない。
「鏡花水月!」
奴は完全に体勢が崩れている。高速移動で接近しながらソルをしまい、そのままフィーを抜きざまに斬る!
「チィッ!」
奴が再び落ちるように移動する。だが、今度はそれに追いつく。
「くっ!」
「花吹雪・三分裂き!」
捉えた! 三連全てが直撃。奴の体を引き裂き、確実に仕留めた。
「ユーリ君! まだだ!!」
「え?」
デス・ブレイズ
迫る極光。だが警告があったこと、リィンを抜いていたことが幸いし、回避が間に合った。
「な、なぜ生きている!?」
「簡単に言えば、あなたが斬ったのはただの人形だからですね」
言われて見てみると、確かに俺が斬った奴はそこに倒れている。今撃ってきたのは、同じ姿の別の奴だ。
ヴィラを拾いながら問いかける。
「お前の本体はここにはいないってことか? 卑怯者め……」
「なぜ敵だらけの危険地帯にわざわざ出向かなければならないのです? 卑怯と言うのなら、あなた方だって複数人で戦って卑怯とは思わないのですか?」
「だったら俺が1人で戦うと言えばお前はここまで来るのか?」
「まさか。そんな訳ないじゃないですか。わたしは行きません。代わりと言ってはなんですが……」
もっとたくさん人形を差し上げましょう
その声と同時に、謁見の間に奴の姿をした人形が2体入ってくる。あわせて3体になった。
1体でも厄介だった奴が3体同時。絶体絶命と言って良い状況だ。
だが、
「ユーリ君……! 逃げろ……!」
「ユーリ、もう良い。お前は逃げるんだ」
「まだだ……! まだ俺は戦える……!」
ボロボロの体で、俺を逃がすために立ち上がろうとしてくれる人たち
何もわからないまま、絶望に叩き落されてしまった街の人々
絶望の中で再確認した、自分の誓い
見ていてくれ、母さん、父さん
今こそ、俺なりの騎士道を天まで示すとき
俺を囲むように位置取る3体の敵。そして同時に放つ極光。
「デス・ブレイズ」
先ずは数を減らさないと話にならない。だから、
あえて、極光に突っ込む!!
「鏡花水月!!」
左手にソルを持ち、右手にヴィラを構えながら、一体の敵に突撃する。
体が焼ける。押し戻そうとする力が強い。だが、逆にそのお陰でリィンなしでも制御できる。
そのまま突き抜けて、
「三分裂き!」
右手のヴィラで1体を仕留める。あと2体。
体が焼け、重い。だが、まだ動ける。これをあと2回繰り返すだけ。
「余裕だ……! かかって来い……!」
「あなたは……!」
奴が慄くようにうめく。
「来ないのか? なら、このまま……」
もう1体を撃破するため、駆け出す。
俺から逃げるようにバラバラに走り出す敵。
追いつき、ヴィラで斬りかかる。
それをまたしても、横に落ちるように避けられる。
予想はしていた。だから、
「鏡花水月!」
リィン無しでの高速移動。制御できなくとも直線移動して体をぶつけてやるくらいは出来る。
ぶつかって止まった瞬間、斬りつければ……!
「足元注意ですよ」
「え?」
急に何もないところで躓いた。そして、
「ピラー・スルー」
「ぐううぅぅぅ!!」
下から噴き出す光。それが更に体を焼き、意識を飛ばそうとしてくる。
まだだ……!
「居合・一閃!!」
倒れながら両手の剣を手放し、アンを取り出す。そしてそのまま抜き放つ!
どんな体勢でもその居合は理想の一閃。謁見の間を両断しようという勢いで放つ斬撃は、敵の1体を真っ二つにする。
「ぐうぅっ……!」
そして、代償に右腕が折れる。あと1体……!
「デス・ブレイズ」
残りの1体が撃ち出す極光。避ける術がない。これは……流石に……!
「魔封壁・御式塔!!」
「流転・電光石火!!」
俺を囲む結界が極光を防ぐ。そして、同時に駆け込んできたエイミーが残り1体の敵を斬り裂いた。
「ユーリさん! 無事ですの!?」
「すぐ回復させるッス!」
朦朧とする意識を繋ぎ止め、何とか返事を返す。
「ああ……大丈夫だ……」
落とした剣を回収する。流石に終わったかと思ったな……。
「もう、全然大丈夫じゃないッス! ほら、ネックレスの魔法を使うッスよ」
「いや、使わなくて良い」
戦いは終わったんだから姫様の魔法を使うのはもったいない。
「使うッス!! ボロボロなんスから!!」
「あ、ああ……。わかった……」
残り1回になってしまった。あとはバーンを経由して帰るだけだし、何とかなるか。
その時、感じた。
清風剣ウィンディルの気配が……移動している……!
「馬鹿な! どうやって!」
「城に大穴が開いているのに、どうやっても何もないものです」
どこからか響いてくる声。大穴……謁見の間を貫いて城に開いている穴のことか!?
まさか、戦っている間に清風剣を取りに来ていたって言うのか……!
「では、さようなら。確かに清風剣はいただきました」
清風剣の気配を追って、穴から空を見上げる。魔力を噴き出して空を飛ぶ乗り物が浮かんでいる。
そして、大陸の中央、封印の地の方向へと飛んでいく。
「また……守りきれなかったって言うのか……!」
クソッ……毎回その場に居ながら……!
「ユーリ、気に病むな。お前がこの国のため戦ってくれたこと、しかと見ていた」
「ああ。俺たちだって戦って負けちまったんだ。お前の責任じゃねぇ。お前は良くやってくれたよ」
この襲撃では、幸運なことに死者は出なかった。
街の住民全員が何らかの影響を受けたが、その後は問題なく日常に戻れたらしい。
だが、またしても剣を奪われてしまった。これで3本。
バーンの無事はまだ確認出来ていないが、無事だとしても、もう1本しか残っていない。
魔王の復活が近づいている。何とかして、状況を打開しなければならない。
しかし、その術は見つからないままだ。




