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貫き通せ我が騎士道  作者: 神木ユウ
第3章 清風国ウィンド
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第107話 落ちる絶望、吼える希望

 残酷な描写があります。ご注意ください。

 気づくと、故郷の村にいた。


「は?」


 どうなっている? なぜこんなところに……。

 意味がわからない。だが、この視線は覚えている。



 黒髪……


     恐ろしい……



  こっちを見るな……



      何であんな子が……



 存在しないものとしているくせに、こちらをチラチラ見てはこそこそと話している村人たち。

 思い出す。あの頃を。生きるだけでも大変で、両親に頼ることしか出来なかったあの頃を。


「気を強く持て。恐らく敵の精神攻撃。どうにかして脱出しないと」


 煩わしい村人たちの視線を気にしないようにしながら、ここを脱出する方法を探す。

 その時、視界の端に見えた。


「あれは……父さん!」


 思わず駆け出していた。父さんの背を追って走る。

 たどり着いたのは家だ。両親と一緒に暮らしていた、家。

 父さんはそこに入っていく。


「父さん!」


 戸を開けて家の中に入る。そこには、父さんだけでなく母さんもいた。


「父さん! 母さん!」




「何しに来た」




「…………え?」


 聞き間違いだろうか。


「出て行ってよ。疫病神」


「お前さえいなければ、俺たちは幸せに暮らせていたのに」


「災厄以外の何者でもないわ。本当に」




  あなたなんか生まれてこなければ良かったのに




「そんな……こと……」


「何を傷ついたような顔をしているんだ。お前にそんな顔をする権利なんてあるものか」


「あ、あ……」


「やめてよ、わたしたちが悪いみたいじゃない」


「さっさと消えてくれ」



「あああああああああぁぁぁぁぁ!!!」












「エイミー、起きて。エイミー」


「はっ!」


 ここは……迷宮都市のスラム? あたしとお母さんが暮らしていた住処だ。何で……。


「起きた? 朝ごはんにしましょう。ゴメンね、今日はこれだけしかないの」


「え、あ、いや、大丈夫ッス! これだけあれば充分ッスよ!」


 夢か幻か。ともかくお母さんが取ってきてくれた食べ物に文句なんて言える訳もない。

 差し出されたほんの少しのパンを食べる。


「じゃあ、お母さんはまた食べ物探してくるから、良い子で待っているのよ」


「え、あ、あたしも……行く……」


 声をかける前に行ってしまった。仕方ない、ここで待とう。勝手にいなくなったら心配をかけてしまう。




 しばらくして、お母さんが帰ってきた。


「ただいま。ゴメンね、あんまり集められなかったの」


「大丈夫ッス!」


 そんなに申し訳なさそうにしないで欲しい。お母さんはここまで気弱だっただろうか。

 なんだか、病気になってからのお母さんがそのまま活動しているような違和感がある。




「邪魔するぜ」




「な、誰ッスか!」


 急に住処に知らない男が入ってきた。


「うるせぇな、ガキ。用があるのはテメェじゃねーよ」


「わ、わたし……ですか……?」


「そうそう、お前さん、だっ!」


「ぐぅっ!?」


「な!? 何するッスか! やめろ!!」


 何でお母さんが殴られなきゃいけない! 助けないと!


「うるせぇって言ったよなぁ!」


「かはっ!!?」


 体が思うように動かせない。何で……。こんなろくに鍛えてもなさそうな男、いつもなら簡単に倒せるのに……。


「お前、俺のナワバリから食料奪ってんじゃねーぞっ! あそこは俺専用の食料ポイントなんだよっ! このっ! クソがっ!」


「がっ!? ぐっ!? ごほっ!?」


「や……やめろ……」


 何で、何で動けない……!


「ふんっ! おらっ! あ、首が折れちまった。もっと痛めつけてやるつもりだったのに」


「そ、そんな……」


「じゃあ代わりにテメェを痛めつけて遊ぶとするかなっ!!」


「がはっ!?」


 お母さんが倒れている。あらぬ方向に折れてしまった首が見える。

 もう、死んでしまった。何で、こんな。強くなったはずだったのに……。


 何で……。











「クラリスさん! 聞いていますか、クラリスさん!」


「はっ! え? は、はい! なんでしょうか?」


「もう、なんでしょうかではありません。今の問いの答えは?」


「え、えーと、申し訳ありません、聞いていませんでした……」


「もう、授業はちゃんと聞かないとダメですよ」


 ここは……教室? 7回生の教室。何で……?


「では、授業の続きを始めましょう。この問いは……」



  ドガアアァァァン!!



「! 今のは、まさか!」


 聞き覚えがある。あの日、襲撃の日。都市の結界が破壊された時の音。


「皆さん、落ち着いて! 神殿前の広場に集まってください!」


 先生の指示で、神殿前の広場に向かう。神殿を、流水剣を守らないと。




 神殿前の広場には、既に大勢の生徒や教師、神殿職員が集まっていた。

 皆一様に緊張や怯えの顔をしている。今も鳴り響くこの音のせいだろう。


 そして、結界が破壊される。


 都市の門から坂を上ってくるのは、これも見覚えのある巨体。魔王軍四天王、ドラゴだ。

 石畳を踏み砕きながら歩いてくるその威容は、相変わらず威圧感に満ちている。




「俺流格闘術・覇」




 気づいた時には、奴は既に駆け抜けていた。


 そして、奴の進路にいた人たちは皆、例外なく



 ひき潰されて、血が飛び散る。



「……は?」


 何だ……それは……。何の躊躇もなく、


「俺流格闘術・震」


 奴が足を踏みしめる。そこから吹き荒れる衝撃が、また何十人もの友人たちを引き裂き、潰す。

 血が舞っている。雨のように、赤い血が降り注ぐ。



「や、止めてええええぇぇぇぇ!!」



 結界を張る。奴の周囲を囲うように。

 しかし、奴は全く意に介さない。軽く腕を動かすだけで破壊される。


「何で! 何でそんなに簡単に!!」


 何度も結界を張りなおす。何度も、何度も、何度も。

 でも、無意味だった。ついには、腕を振るうことさえせず、ただ歩くだけで破壊されていく。



 そして、友人が、恩師が、潰されていく。



 目の前で、まるで虫でも潰すように、淡々と。何の感情も見せずに黙々と。

 赤が舞う。雨が降る。


「止めて……! 止めて……ください……」


 何も出来ない。ただ目の前で、仲間たちが潰されていくのを見ているだけ。

 ただ、血の雨が降るのを、浴びているだけ。


 何も……出来ない……。











「いかがでしょう? 楽しんでいただけていますか?」


 都市中に声が響く。さっき名乗っていたな。魔王軍四天王、創造のデスディ。

 悪趣味な野郎だ。ここに来るまでに見かけた誰もが倒れていた。

 俺も、一度は囚われた。だから倒れている人々がどういう状態なのかはわかっている。

 街中がこうなのか。本当に悪趣味だ。ふざけやがって……。


「さて、ではわたしは目的を達成するとしましょう。皆さんはそのまま倒れていてください」


 そして、ここ、城の謁見の間にそいつはやってきた。予想通りだ。清風剣ウィンディルは、ここから続く祭壇に安置してある。

 よれよれの白衣を着た、紫髪の痩せた男だ。こいつが、創造のデスディ。


「おや……? あなた、なぜ倒れていないのです? 例外なく影響があるはずなんですが……」


 わからないのか。まあこんなヒョロい奴にはわからんだろうな。




「これが! 武術だ!!」




 教えてやろう。ガルジュ・ヴィードの武術を。

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