第104話 閑話:恋バナ
閑話3話の2話目です。
「遊びに来たよー」
「……暇なのか?」
「だって、こんなに自由に遊びまわれるなんて生まれて初めてだし……」
今日もライラが遊びに来た。今が楽しくて仕方がないらしい。
当たり前か。150年だもんな。
「今日は外に行きたいな。連れてってよ」
「1人で行けば良いだろ……」
「君は女の子が遊びに誘っているのに断るのかい?」
断りづらい言い方を……。ニヤニヤするんじゃない、まったく。
別に良いけどな。嫌な訳じゃない。
「どこに行くんだ?」
「言っただろ? 外だよ」
外。宿の外とかではなく、本当に街の外まで来た。
「何しに行くんだ?」
「色々見たいだけだよ。ウチは未知の物を調べるのが好きなのに、ずっと閉じ込められてろくに調査出来なかったからね。そこらを歩き回るだけでも良いんだ」
エイミーとクラリスをおいてきてしまった。後で怒られそうだ。
「ふふ、君は女の子が大好きだねぇ」
「言い方ぁ!!」
エイミーとクラリスのことが気になっていたので間違ってはいないんだろうが、その言い方だと俺が目の前の女の子、ライラに手を出そうとしているみたいだ。
実年齢で考えれば年上過ぎる、見た目年齢で考えれば年下過ぎる。ライラはあまりそういう対象ではないと思う。可愛いけどな。
「と、思うだろう? しかし、この体には君が知らない魅力がいっぱい詰まっているのさ」
「自然に心を読むんじゃない」
魅力ねぇ。そういう物だろうか。実際に女性と交際したことすらない俺には良くわからない。
「まあでも実際のところ、ウチも恋愛がどうのこうのはあまりわからないんだけどね」
「そうなのか? 王子に求婚されたんだろ?」
「断ったって言っただろう? その王子の人となりをよく知らなかったというのもあるんだけれど、そもそも恋愛感情がよくわからなかったというのが大きい。流石にそれを知りたいからしばらく交際しますなんて言えないから断ったんだ」
「そうだなぁ。俺も恋愛感情がどんなものなんだって聞かれてもわからんなぁ」
「エイミーちゃんやクラリスちゃんならわかりそうだけどね」
「……そうかもな」
きっとわかるんだろう。実際にそういう気持ちになってみればわかるのかな。
『マスターは姫が好きなんじゃないんですか?』
(姫様? 大切な人なのは間違いないけど、好きかって聞かれるとどうだろうな)
『あれ、違うんだ? 話を聞く限りリリエル王女が好きなんだと思ってたよ』
『そうね。違うなんて意外だわ』
(どうなんだろうな。違うとも言い切れないって言うか……。それはエイミーやクラリスに対しても同じなんだけど……)
「難しいな……」
「やっぱり、2人の気持ちはわかってるんだね」
「ん……。まあ……なぁ……」
「あれだけアピールしてれば気づかないなんてあり得ないもんね。どっちにするか、もしくはどっちも選ばないか。もう決めてるの? あ、どっちも選ぶっていう選択肢もあるかもね?」
どっちを選ぶか、か。正直なことを言うのなら、
「どっちも選びたい気持ちはある」
「わぉ。意外だね。1人に決めないなんて不誠実だって言うタイプかと思ってたよ」
「平等に愛せないならきっぱり断るべきだ。でも、きちんと平等に愛し、きちんと養える財力があるのなら、それも一つの誠実さだとは思う」
「そうだね。手を出すだけ出して捨てる最低男もいるんだ、その考え方はありだと思うよ。あの2人はどっちもを選んでも納得してくれそうな程度には仲が良いし」
「だからこそ、今は気持ちに応えられないんだけどな……」
「どういうこと?」
「言っただろ? 俺も恋愛感情ってのがよくわかってない。それで平等に愛することが出来るなんて断言できる訳ないだろ」
「あー」
「旅をしている以上、安定した財力もないし、2人には悪いと思ってるけど、現状維持しか出来ないんだよな……」
「ウチの予想を言っても良い?」
「予想? まあ良いけど」
「君は絶対にハーレムの主になる」
「……なんだそりゃ」
「財力の心配なんていらないだろう? もうすぐ陛下からの褒美も入るし、君ならいくらでも稼ぐことが出来る。そして平等に愛せるか、なんて更に心配いらない。君が誰かをないがしろにするなんてあり得ないと断言出来るから」
「何を根拠に」
「初対面の相手すら大切に出来るんだ。一緒に住んでて誰かを寂しがらせるとは思えないな」
ここまで断言されると、本当にそうなんじゃないかと思えてくるな。
「ま、その分苦労するのも君だけどね。皆幸せにしなくちゃって気負ってふらふらになってそうだ」
いつものニヤニヤ笑いを浮かべるライラ。でも間違ってないかもしれない。俺が複数人と同時に付き合おうとなんてしたら、そうなりそうだ。
(だからきっと、君が息抜き出来るような気安い相手も必要になるんだろうね)
「ん? 何か言ったか?」
「何でもないよー。君の傍に可愛い女の子がたくさんいる未来が見えるなーって」
「何か増える前提で話してないか?」
「ふふ、どうかなー」
なんだか良いようにからかわれている気がする。幼い見た目でも、やっぱり年上なんだな。
「まあゆっくり考えれば良いさ。実際、旅をしている間はあの2人を待たせているなんて考える必要はないだろうし」
「そうか? 既に待たせてるんじゃないかと思っているんだが」
「例え君が彼女たちの気持ちを受け入れようが受け入れまいが、旅は続けるだろう? 彼女たちは君のものになるために旅をしている訳じゃないんだから。どうせ離れないんだから、旅の最中は変わらないさ。旅を終える時には、ちゃんと答えを出すべきだと思うけれどね」
なるほど、そうかもしれない。これも勝手な考えなのかもしれないが、そこまで気負う必要はないのかもな。
「悪かったな。遊びに出てきたはずなのに、何か相談みたいになっちゃって」
「いやいや、大丈夫だよ。こんな所謂恋バナってやつも知らなかったことさ。とても楽しいよ」
「ライラも、何か困ったことがあったら言ってくれ。出来るだけ助けになれるように頑張るから」
「何言ってるんだか。もう困りごとは解決してもらったでしょ。だからウチは君たち3人には幸せになって欲しいのさ」
この相談もその一環ってことかな。見た目に似合わず年上らしい対応をしてくれるし、案外頼れるのかもしれないな。




