第103話 閑話:楽しいカジノ
閑話3話の1話目です。カジノで遊びます。それだけです。
「やあ。遊びに来たよー」
宿でのんびりしていると、ライラが来た。もちろん部屋まで来る許可を出したのは俺だ。宿の従業員が勝手に入れた訳ではない。
「いや、遊びにって、宿に来ても何もないが」
「この宿は遊べる施設がいっぱいあるでしょ。一緒に遊びに行こうよ」
確かにこの宿は豪華だ。プール、カジノ、エステ、レストラン。どれも最高レベルの設備が整えられている。
俺は遊戯施設には今まで行ったことがないのでまだ利用していないんだが、この機会に一度遊んでみても良いかもしれない。
「ねえ、良いでしょ? ウチは今までずっと自由に出歩けなかったから、こういう所は初めてなんだよ」
「いや、俺も初めてなんだが。ライラが遊び方を教えてくれる訳じゃないのか」
「え? 世界を回っているのに遊戯施設の利用が初めてなの? 硬派だねぇ」
「そもそもこんなに充実した施設はこの国にしかないぞ」
賭け事を楽しめる施設はガイアにもあったが、それはもっと簡単な遊戯だ。
少なくともここのように、何だかよくわからない魔法道具がズラッと並べられていたりはしない。
あとは、プールは確か上級貴族が戯れに作ることがあるって聞いたな。俺は見たことがない。
「まあ良いか。行ってみようよ」
「抜け駆けは!」「許しませんわ!」
ドアをバンッと開けて入ってきたのはエイミーとクラリスだ。鍵閉めてなかったな。
「お、良いところに来たね。皆で行こうか」
「え? ええ、行きましょう」
「素直ッスね……」
「ふふ……。心配しなくても、君たちからユーリ君を取ったりしないよ」
「なら良いのですが。どこに遊びに行くんですの?」
どこが良いかな。まあカジノが無難か。あまり金を使いすぎないように気をつけないと。
「カジノで良いか」
「プールじゃ駄目なのかい?」
「ライラも含めて誰も泳いだことがないからな。俺は川で水浴びくらいならしたが、泳ぎの練習とかはしたことがない」
「そっか。ウチも確かに泳いだことなんてないし、カジノで良いかな。じゃあ行こう」
「じゃあそれぞれにチップを渡すけど、これ以上は金を使わないように」
エイミーとクラリスにチップを渡す。そんなに多くはない。せいぜい2ヶ月分の生活費といったところだ。……結構多いな。
「ウチにはないのかい?」
「なんで俺がライラの分まで払うんだよ……」
「ふふ、冗談冗談。行こうか。何からやろうかな」
「うーん……。ヒット! ……ああ」
手元に来たのは9。もともと持っていた3と10を合計して22。バーストだ。
今やっているのはブラックジャックというカードゲーム。簡単に言えば自分の手にあるカードの合計を21にするゲームだ。
これがなかなか難しい。手が13なんてもう一枚引いたら良い感じになりそうなのに、何故か21を超えてしまう。
「ほい、ブラックジャックっと」
「おおー!!」
「スゲー!!」
ライラが荒稼ぎしている。なぜだ……。俺は何か間違えているのだろうか……。
「ユーリ君、君はカードゲームには向いてないんじゃないかな」
「やっぱりそう思うか?」
「ルーレットとか行こうか」
ルーレットか。玉がどこに落ちるか予想するだけのゲームだし、そっちの方が運の要素が大きくて良いかもしれない。
「行くか」
「フルハウスですわ!」
「フォーカードです」
「何でですのーー!?」
勝てない……。良い手にはなるのに、何故か相手の方が強い。
「おい、あれ……」
「ああ、伝説の……」
まだ、まだです! まだチップは残っている。
「もう一回ですわ!!」
私はクラリス! こんなところで諦める女ではありませんわ!!
ルーレットに来てみたが、なんだか人だかりが出来ている。
「なんだ?」
「さあ? でもカジノでこういう状態になるってことは、誰かが大勝してるとかじゃないかな」
確かに。そうでもなければこんなに人は集まらない気がする。
「おおー! また勝った!」
「何であんな一点賭けで当てられるんだ!?」
「スゲー! これで何連勝だよ!?」
やはり誰かが勝ちまくっているようだ。
「あ、兄さん! こっちこっちッス!」
……エイミーじゃないか。え、賭け事の才能があるのか?
「エイミー……。凄いチップの山だな……」
「どうッスか? 凄いでしょー!」
自慢げに胸を張るエイミー。確かに凄い。
「こんな才能があったとはな……」
「ん? 才能?」
「違うのか?」
「だって、玉がどこに落ちるかなんて、見てればわかるじゃないッスか」
「は?」
エイミーは冗談を言っている様子はない。え、自慢げにしてたのは、こんなに当てられて凄いでしょ、ではなく、根気良く続けられて凄いでしょってことか? やれば絶対当てられるってことか?
「それって……イカサマにはならないのかい?」
「え? 駄目なんスか? だって玉がどこに落ちるかを当てるだけのゲームだって……」
「あー、待ってくれ。一応聞いてみよう」
「いえ、聞いておりました。結論から申し上げますと、イカサマとは言えません」
「あ、大丈夫なんスか! 良かったッスー」
「しかし……大変申し訳ありませんが、ルーレットで遊ばれるのは遠慮していただくか、私が玉を投げる前に賭けていただけますでしょうか」
「あ、はい。すいませんッス……」
「いえ、お客様は何も悪いことはなさっていませんので、謝られる必要はございません。以降も当カジノでお楽しみくださいませ」
良かった。お咎めはないようだ。まだ遊んでも良いとは、なんとも器が大きい。
「ルーレットは止めておくか。別のゲームで遊ぼう」
「そうだね。悪目立ちしそうだ」
「あたしも一緒に行くッスー」
「クラリス、そろそろ帰るぞー」
「………………はい」
滅茶苦茶テンションが低い。というか今にも泣き出しそうだ。
「ど、どうした……?」
「全部……全部持ってかれましたわ……」
「そ、そうか。残念だったな?」
「全部1人の相手に持ってかれましたわーー!!」
おおう、1人に全部持っていかれるとは。なかなか大変だったようだ。
「ぐぬぬぬぬ……! ユーリさん! もう少しチップを……」
「ダメだ」
「そこを何とか!」
「もう少しとか言いつつ、手持ちの金を全部使いきりそうだ。絶対ダメだ」
「……ウチが少し出してあげようか?」
「ホントですの!?」
「ライラ、あまり甘やかさないでくれ。こいつは負けず嫌いなんだ。勝つまでやるとか言いかねん」
「えー!! 良いでしょう? 出してくれると言っているのですから……」
「部屋に帰るぞー」
「ユーリさああぁぁぁん!!」
「ふ、勝ったッス」
「いや、君のはズルすれすれだから」




