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貫き通せ我が騎士道  作者: 神木ユウ
第3章 清風国ウィンド
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第101話 愚か者の悪あがき

「さて、行くか」


 宰相を含めて5人で、魔法技術局に来た。相変わらず途方もなく高い建物だ。

 早速建物に入るため、扉に近づく。近づくだけで勝手に開く、仕組みがよくわからない扉だ。



「兄さん!!」



 エイミーの慌てた声



 開いていく扉、その奥に見える特殊部隊



 一斉に放たれる魔力弾



 それらは狙い違えず、俺に直撃した




「ば、馬鹿な……!」


 その声を上げたのは、特殊部隊の1人だ。まあ驚くよな。



 弾が直撃したはずの俺が、その場に立っていれば



「ユーリさん! 無事ですの!?」


「無事とは言えないな。命に関わるほどじゃないが、かなり痛い……」


 エイミーの声を聞いた瞬間、俺は反射的にソルを取り出していた。もともと敵があまりにも愚かだった場合、何をしてくるかわからないと警戒していたのもある。

 しかし、無傷とはいかなかったようだ。あの伝説では無傷で魔力弾を弾いていたはずだが、恐らく技術力の向上で、銃の威力も上がっているんだろう。

 一発毎に少しずつ表皮を削られた。それが何発も直撃したんだから、結構血まみれだ。見た目ほど酷い怪我ではないはずだが。


「皆は無事か?」


「こっちは兄さんがくれたネックレスの結界で守ったッス」


 誕生日に贈ったやつか。俺に警告しながら結界も張るなんて、良い仕事してる。


「治しますわ。動かないでください」


「いや、とりあえず後で良い。今はあの連中を片づけて……」


「待ってくれ、ユーリ君」


 そう言ってライラが前に出てくる。


「お、おい。危ないぞ」


「君たち! 今、何をしたのかわかっているのかな?」


 ライラが特殊部隊相手に呼びかける。何をする気だ?


「我々は命令に従い射撃を行っただけだ!」


「その射撃を行った相手がどういう立場なのかわかっているのかい? と聞いているんだ」


「どういう立場か、だと?」


「ウチが公爵だとかそういうことじゃないよ。宰相、見せてあげてよ」


「ん? ああ、命令書のことか」


 宰相が取り出したのは、陛下に書いていただいた命令書だ。一枚の公式文書として、形式も整えてある。


「これは陛下直筆の命令書だ。わかるかな? 君たちは今、反逆罪を犯した、と言っているんだ」


「な……!? ま、待ってくれ! 我々は局長に命令されていたんだ! 局を襲撃しようとしている輩が来るから、合図を出した瞬間に一斉射撃しろと! 相手が誰なのかは確認していなかった!」


 いや、仮に襲撃があるとしても、撃つ相手くらい見てから射撃しろよ。

 なんだこいつら。流石に愚かというだけでは違和感があるな。


「もし反逆罪で処刑されたくなければ、大人しく銃を下ろし、道を開けるんだ。我々は局長に用がある」


「あ、ああ。わかった」


 連中が大人しく道を開ける。


「じゃ、行こう」


 騙し討ちを警戒したが、特に何もされることなく、俺たちは昇降機に乗り込んだ。




「大丈夫かい? ゴメンね、ウチが巻き込んだせいでそんな傷を負わせちゃって」


 昇降機の中でクラリスの回復魔法を受けていると、ライラに謝られた。


「いや、気にするな。見た目ほど酷くはない。それより、さっきの連中だが」


「うん。あれは局が抱える特殊部隊だよ。ただその実態はね、ウチみたいに何らかの理由で逆らえない人たちで構成された、局長の意のままに動く私兵なんだ」


「そんなもんまで作ってやがったのか! ったく、もっと早く無理矢理にでも突撃しておくべきだったぜ」


「そもそも確実に犯罪があるってわかってなきゃ、命令書なんて書けないでしょ。このタイミングしかないんだ。今なら、例え証拠を隠されたとしても、反逆罪で処刑出来る」


 その時、昇降機が止まった。


「な、なんスか!?」


「落ち着いて。予想はしてた。敵が昇降機の動作を止めたんだよ」


「予想はしてたって……。なら何で昇降機を使ったんですの?」


「そりゃもちろん、ウチは性格が悪いからさ」


 そう言って、ライラはニヤリと笑った。







「昇降機は止めた。今のうちに証拠を隠して、逃走の準備を……」


 忌々しい小娘が。それに王と宰相もじゃ。

 なぜ儂が、あんな小僧共に屈さねばならん。儂はこの魔法技術局の局長じゃぞ?

 今までどれだけ長い期間、この国に貢献してきたと思っておるんじゃ。

 この儂の名が最も偉大なものとして語り継がれるのは当然のこと。その礎となれるのだから、あの小娘も感謝すれば良いのだ。


「魔法技術局局長、モルス! 大人しくしろ!」


「な、なんじゃと!? 早すぎる!」


 さっき昇降機を止めたばかり。昇降機の扉を開けて、階段でここまで上ってきたとして、なぜこんなに早い? ここは40階だというのに……。


「ウチがいるのに、昇降機を止めただけで足止めなんて出来る訳ないじゃないか。ただ上昇するだけの足場があれば、ここまで来るのは容易いって言うのに」


「この……小娘がああぁぁぁ!!!」


 こいつのせいか! 円盤のようなものを取り出して見せてくる。あれに乗ってここまで来たのか。

 忌々しい……! そもそもこんな小娘が儂より高名であることが許せんのに!


「小娘って……。おい、小僧。ウチはあんたが生まれる80年以上前から生きているんだけどね」


「黙れ!! 生きた年月など問題ではないわ! 貴様のような引きこもりと、多くの物を見聞きしてきた儂とでは経験が違うんじゃ!」


 この立場に上り詰めるために、儂がどれだけ苦労して知識を集めたか。こんな奴にわかってたまるものか!

 こうなれば、この場で撃ち殺して……




「黙るのはお前だ」









「……なんじゃと? なんじゃ貴様は」


「そんなことはどうでも良い。今、引きこもりと馬鹿にしたのか? ライラに対して」


「だったらなんだというんじゃ! そやつは引きこもり以外の何者でもないじゃろうが!」




「お前が閉じ込めていたんだろうがっ!!!」




「っ! だ、だからなんじゃ。儂は魔法技術局局長じゃぞ? ずっとこの国に貢献して」


「ライラはずっと! 貢献したくもないのに貢献させられていたんだ! お前のような奴のせいで!」


 150年。俺には想像することすら出来ない。こいつがいつから局長になって、いつからライラに開発を強要していたのかは知らない。

 だが、ライラがどれだけ苦しんできたのか。それを考えようともせず、くだらない自己顕示欲でライラを、他の人たちを食い物にしているこいつは……!


「黙れ! 貴様から撃ち殺してくれるわ!!」




「やれるものならやってみろ。お前に食い物にされた人たちの恨みを思い知らせてやる」




 ただ処刑するだけでは駄目だ。こいつは全くわかっていない。

 理解させなくてはいけない。ライラの苦しみを、悲しみを、恐怖を。

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