大悪魔の助言をおかげで命拾いをした聖女は王都の救世主となる①
そして、マレフィクスが口にした王位継承争いはその直後から本格化する。
多数派工作といえば聞こえはいいが、それはもっとドロドロしたものであった。
こうなると、能力に関わらず長子を後継者とすると定めたほうがつまらぬ揉め事は減るように思えるのだが、ことはそう簡単ではない。
理由はわからぬが、この国では長男の多くは無能。
いや。
長男と言わず、ほぼすべてが不出来の子。
十人以上の子の中で一人か二人どうにか標準に達する者が現れるというのが現状であり、実際に現王も前王の第八王子となる。
さらにいえば、ラングリア王国は周辺国と良好な関係とはいえない。
惰弱な王の出現は即他国の干渉や侵略が始まり、国の衰退、下手をすれば終焉に繋がる。
つまり、多くの副妃を持ち、多くの子を持つことは後継者を手に入れるための絶対条件でもあった。
だが、今回の王子たちによる王位争いはどう見ても「ドングリの背比べ」感が免れない。
そう。
出会った直後、マレフィクスがフランシーヌに対して冗談半分で「王になる気はあるのか」と問うたように、能力だけでいえば、現王の子の中で一番の適格者はフランシーヌであった。
ただし、この国は伝統的に男が王位に就く。
むろん、歴史上女性が王になったことはある。
だが、それは例外中の例外。
可能性は低い。
といっても、フランシーヌと王子たちとの才にそのようなことを無視してもいいくらいの差があった場合、父王はフランシーヌを次期王に指名する可能性はある。
そして、実際のところ、その差は歴然としていた。
第三王子フェルナンがフランシーヌ殺害を計画したのもそれが理由である。
だが、そのフランシーヌは王都を離れることにより、形式上はともかく、実態的には王位争いに加わらないことを宣言した。
ライバルたちはそう認識した。
残りは王位に就く。それだけが目標のゴミ王子。
奴らを潰せば王位は手にできる。
自らもその同類であることもわからぬ王子たちはお互いに相手をこき下ろしながら再び醜いだけの「ドングリの背比べ」を開始する。
そこに王子の親族となった大貴族たちも加わる。
彼らは王子たち以上に真剣。
なにしろ、王位争いに加わった以上、王子が王位に就くかどうかによって待っているのは「すべてを思いのままとなる天国」か「徹底的な報復による冷や飯食いの地獄」のどちらか。
さすがに王城に引きこもる王子本人を殺すわけにはいかないが、その後援者を消すことには躊躇はなかった。
野盗、または周辺国の間者を装っての襲撃や焼き討ちが頻発する。
そして、貴族たちに名を貸した者たちも独自の理由によりそこに参戦する。
王都アルセンシアの治安は一気に乱れる。




