大悪魔の助言をおかげで命拾いをした聖女は王都の救世主となる③
二日後。
その日から乱れに乱れていた王都アルセンシアの治安は劇的に完全する。
悪魔と天使というとてつもなく不可解なチームで編成による自称王女フランシーヌの私兵が動き始めたのだ。
構成員が悪魔と天使、しかも、そのすべてがエリートである以上、当然と言えば当然なのだが、この私兵、非常に強いうえに容赦がない。
さらにいえば、その一部は袖の下で手を打とうとした顔役から大金を受け取ったものの、その直後その相手を叩きのめすという悪党より悪党のような行為を公然とおこない、それまでふんぞり返っていた悪党たちを振るえ上がらせた。
もちろんそれをおこなった天使たちの言い分によれば、「金を受け取ったのは事実だが、相手の要求を受け入れなければ、賄賂ではなく、ただの浄財」ということらしいのだが。
とにかく法的には問題になりそうな行為は相当数あったものの、三日間で王都にのさばっていた悪はほぼ消滅し、元のような王都に戻る。
いや。
以前より遥かに住みやすい王都へと生まれ変わる。
そして、その結果、王女フランシーヌの評判はさらに上がる。
そう。
アンゲルスが口にしていた「王子たちはなぜ動かないのか?」とはこのことを示していた。
王城を出たフランシーヌはともかく、王城にいる王子なら近衛兵や王城の騎士団を動かすことは可能。
そして、相手の大部分はチンピラ。
王城の正規兵を動かせば沈静化はそう難しいことではない。
そうなれば、王都に蔓延る悪党どもも駆逐したとして評価は上がる。
むろん、王へのPRになる。
その夜。
フランシーヌが寝室に入ったところで、大悪魔と大天使は酒を酌み交わしていた。
「まあ、僕に言わせれば、この程度のことにも気づけないというこの一点だけでも王子たちには王位は相応しくないのだが」
アンゲルスの言葉にマレフィクスが頷く。
「それについては私も同感だ。だが、王子は馬鹿でも彼らには後ろ盾になっている大貴族もいるだろう。奴らも気づかないとはどういうことだ?」
「つまり、王子と同類。と言いたいところなのだが、おそらく違う」
「では、なんだ?」
「彼らこそ王都を蝕んでいた悪党の黒幕。だから、動く気はなかった。まあ、これを利用して自分の権益を増やしたい。王子を焚きつけてライバルの貴族が抱える悪党の拠点を襲いたいところなのだが、当然報復がある。動かなかったのは損得を天秤にかけた結果だろうね」
「おそらく、大貴族たちはどこかで集まり、動かない約束をしたのだろう」
「だが、協定の枠外から予想外の一手が打たれた」
「まあ、皆平等に利権が葬られたのだから、恨みっこなしだ。いや。もしかしたら、共通の敵ができたかも」
「ああ。おそらくそうだろう。それについては発案者が責任をもって対処すべきだな」
「丸投げかい」
マレフィクスの言葉にアンゲルスは盛大に文句を言うものの、その表情は言葉とは真逆の感情を有しているのはあきらかだった。
「楽しそうだな。アンゲルス」
「それはお互い様だろう。マレフィクス」
「残念だが、否定できない」
「それこそお互い様だ。まあ、とにかく楽しくなりそうだ。そして……」
「どうやら、目指す方向は同じようだな」
「ああ」
「ただし、問題はある」
「なんだい?」
「フランシーヌ本人にその気がないことだ」
「それは従者が説得すべき事案だ」
「何が従者だ」
「じゃあ下僕か」
「なおさら違う」
「まあ、こればかりは強制するものではなく本人がそうなるべきと納得するまで待つしかあるまい。だが、その間、馬鹿王子やその取り巻きたちが手を出さぬようにすべきだとは思うが」




