第15話:仕掛け人ここでネタ晴らし
食事を終えた後、宿の部屋に戻る。メリーさんにはちゃんと今日から二人になるけど追加料金が必要かどうかを確認しておく。
どうやら一部屋いくらの計算らしく、よほどうるさくしたり人数を詰め込んだりしない限りは人数としてカウントしないらしい。それにセルフィはまだ子供でもあるし、子供で一人にカウントするのは問題だ、ということのようだ。ここはメリーさんの温情に感謝だな。
部屋に戻り、まだ何もない部屋に移動すると、さっそくセルフィと正面に向かって話し始める。こっちは椅子に座って、セルフィはベッドに腰かけて、足をブランブランさせながらこっちに向いて話しかけ始める。
「ご主人様は、私の親戚の人ではないですよね? 」
セルフィが、確信を突いた一言を真っ先に向けてくる。
「なぜそう思うんだ? 」
「私の親戚は私とみんな肌の色が同じでした。ご主人様は私ほど日焼けしたお肌をしていません。それなのに、どうして親類縁者だと言い張れるのでしょうか。ご主人様の持っていたカンテイのおかげなのでしょうか」
さてネタ晴らしをしていくか。
「鑑定の結果なのは間違いない。そして、君が俺とは血のつながりがないのも確かだ。だが、間接的に関係はある」
「間接的に……というと、どういう意味なのでしょう」
「君の先祖と俺とは同郷……同じ国の生まれなんだ。ここではない、特殊な生まれでな。かくいう俺も、あと300と18日すれば元の国に帰らなければならない」
「じゃあ、また私はそれだけの時間が過ぎたら捨てられて奴隷に逆戻りということになるんですか? 」
「そうならないように、それまでにセルフィ一人で暮らしていけるように色々教えていくつもりだ。といっても、俺も教わる側ではあるんだが……そこでイアンちゃん」
「え、私ですか? 」
自分の話になると思っていなかったイアンちゃんが驚いて自分を指さしている。
「冒険者として立派にやり遂げられていくかどうか、イアンちゃん目線で確認してほしい。もし俺かセルフィ、どちらかが冒険者としてやっていけないと判断するなら、その時点でセルフィは奴隷の身分のまま、奴隷商に戦闘用の奴隷として引き取ってもらうことにする。こういうことでどうだろう」
イアンちゃんは両手を組んで足でトントン……とリズムよく床を蹴っている。
「そんな浅いところまでの考えでよく人を買おうとしましたね」
「すまん、助け出すのがまず最優先だと思ってな」
「何の考えもなく助け出そうとしてないだけまだまし、という程度なのはわかりました」
イアンちゃんがかなり手厳しい意見で攻めてくる。おっしゃる通りで言い訳のしようがない。
「ですが、こちらの手落ち……つまり、以前の異世界転移者の残滓を何とか回収しようとしてくださったのはこちら側としてもありがたい所ではあります。本来なら、何の手掛かり一つ残さずに自然に消えてしまわなければいけないところですからね」
多分娼館か何かに通ったか、現地で出会いがあって、その結果生まれていった……ん、でもそうなると計算が合わないな。そんなに昔から有休強制消化法案があったわけではないはずだ。ということは、こっちの時間の流れと現実の世界の流れは時間が違う、ということになるのか。
そうなると、318日だと思っていた残りの時間ももしかしたらその通りではない可能性もあるってことか。よく考えておかないとな。とりあえずはあと318日は最低でもいられる、と考えておいたほうがいいだろう。それより長くなる場合、また別で考えておけばいいんだろうな。
「とりあえず、セルフィさんのお父さんなのか、お母さんなのか、それともお爺さんやお婆さんなのか、そこまではわかりませんが、鑑定スキルで判別ができるぐらいの血の濃さでの異世界転移者の子孫なのですから、おそらくはお父さんかお爺さんが異世界転移者だとは思うのですが、セルフィさん、お父さんかお爺さんで出会ったことのない人はいますか? 」
「私は父を知りません。お母さんに父のことを聞いても荒れるばかりでろくに教えてもらえず……お母さんは私をそのたびに叱りつけました。あんなやつのことは聞くな、と……」
なるほど、愛してると言ってたのに急に目の前から消えたからあんな奴……と。つまり、最長でも12年前には同じサービスを使った有給休暇消費者がいたわけか。
でも、12年も前からこんなサービスやってたならもうちょっと話題になっててもおかしくないよな。やっぱり時間の流れがずれてる気がする。もしかしたら、異世界に入り込むタイミングと現実の時間の流れは違うのだろうか。
「まあ、そういうこともあるでしょうね。異世界転移者でなくても普通にあり得る話です。タカナシさんのケースではなくても時々そういう男がいても不思議はありません」
なんだか俺まで責められている気分になってはいるが、俺は今回救う側だ。俺に対して言われているものではない、と信じておこう。
前の異世界転移者の残滓と混ざらないように、ある程度ランダムに決められているのかもしれないな。それでも、こうして出会ってしまった以上、一緒に暮らすことになっても仕方ない、のかもしれない。
「とりあえず、明日から二人で仕事をしよう。しばらく生きていくだけの資金はあるとしても、余裕があるうちに稼がないと、ぎりぎりになってからとれる選択肢を選ぶよりも明らかに仕事ができる幅が違うしな」
「私は何をすればいいんですか? 冒険者なんてやったことないんですが」
「そこは俺の鑑定で気になる言葉を見つけたところだ。君にケンセイの才能があることが分かった」
「ケン、セイ? 」
「ああ、聞いたことはないか? 」
念のため、剣聖という言葉やスキル、それに加えて他の意味でも聞いたことがないかを確認する。
「剣の才能を持った人、ということですかね。セルフィさん、剣を振ったことは? 」
イアンちゃんがセルフィに確認を取る。もしかしたら剣聖じゃなく拳聖であることも含めていろいろ確認を取らないとな。権勢をふるったりするケースもあるかもしれないからな。その場合、かなり厳しい生活になるだろうが、それでもできるだけ頑張る予定ではある。
「無いです。拳で殴り合ったことぐらいは何度か」
「その時、必要以上に人を傷つけたりしたことは? 」
「無い……はずです」
だとしたら、剣を握らせてみるか。運が良ければ、いや、こういう時は高確率で俺の勘は当たるんだ。そうやって生きてきた以上、自分の勘を充てにしていっちょ彼女の育成も含めてやっていくことにするか。
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