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有給休暇は異世界で  作者: 大正


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第16話:冒険準備

「とりあえず、冒険者として恥ずかしくない格好はしないといけないな……着たままの服一着だけでは洗濯もできないだろうし、サイバルさんのところへ行くか。服は……俺も一着しか持ってないけど、セルフィは女の子だし、洗濯して乾かしてる間の服も必要だろう。よし、まずは服、その次に装備、それが終わったら……時間があればお金を稼ぎに行こう」


「はい、頑張ります」


「とりあえず武器は……これを持っててもらうか」


 アイテムボックスからショートソードを取り出し、セルフィに見せる。


「それをセルフィちゃんに持たせたら、タカナシさんは何を使うんですか? 」


 イアンちゃんが不思議そうにしている。


「なに、俺にはちょいと不釣り合いな装備だ、もうちょっと小さいナイフなんかでもいいし、今薬草採取やモンスター退治に行くような範囲なら、これでもちょっと過剰装備なぐらいだ、どっちにせよ鍛冶屋には寄ることになるんだし、その時に店主のおすすめでも聞いて、もしかしたら逆にセルフィにナイフで俺にはショートソードのほうがいい、って話になるかもしれないしな。それに、もし剣聖ならナイフよりもショートソードのほうが様になるだろ」


「それはそうかもしれませんが……まあ、お付き合いします。私がついていればそんなに無理なことにはなりそうにはないですからね」


「それに、イアンちゃんに見立ててもらわないとセルフィの服装をまさか俺が選ぶわけにもいかないだろうからな。薬草採取やモンスター退治にも着まわせる服装を一揃いお願いするよ」


「まあ、そのぐらいはいいですけど。まずはサイバルフクショクテンに行くんですね? 」


「うむ、そうしよう」


「口調移ってますよ」


 宿から十分ほど歩いて、昨日ぶりのサイバルフクショクテン。店に入ると、ちょうどサイバルさんが店内の整理をしていた。


「うむ、タカナシどの。昨日ぶりですな。今日はどのような用事かな? 」


「こっちの子の服を見立ててもらいに来ました。昨日の収入のおかげで保護できた親類の子なんですよ」


「うむ、それはよかった。私も大金はたいただけの甲斐はあった。それが人助けに使われるならより結構なことである」


 イアンちゃんがセルフィの手を引いて、中古のほうへ回る。


 しばらく待つと、中古の服を立派に着こなした美少女が出来上がっていた。元がこれだけ美少女だと、父親はどれだけの美青年、もしくは美中年だったのだろう。ちょっと悔しいな。


「では、この服装と……肌着は新品のほうがいいだろう。三枚ぐらい買っておいで。そのぐらいの資金はある」


「はい。行ってきます」


 肌着を選ばせた後、今日はちゃんと支払いをして店を出る。まだ金貨三枚分ぐらいの金銭的余裕もあるし、最悪RMTで自分の貯金を切り崩すこともできる。まだまだ楽しめるな。まだ二日目だというのに、もうこんなにイベントが盛りだくさんだ。この調子なら明日にでも町がドラゴンに襲われてセルフィの秘められた剣聖としての力が覚醒したりなんかするかもしれない。


 さて、次は装備品だ。防具のほうはイアンちゃんお勧めの防具屋があったので、そこで頭を守る、日よけを含めた装備をそろえる。


「おそろいです」


「おそろいだな。似合ってるぞ」


「ご主人様もです」


 おそろいのリネンの厚手の帽子を被り、俺とセルフィが少し微笑みあう。その後で昨日も立ち寄った武器屋へ行く。


「……なんだ、不良品扱いで返品か? そこのは品質までは保証できないぞ」


 相変わらず不愛想な店主がこちらを見る。どうやら昨日の客を覚えているだけの脳みそはあるらしい。


「いや、この子に持たせるものを見繕ってほしい」


「……子供まで働かせるのか」


「訳あってな。ご主人様とお使いということになっている」


 訳あって、とつけることで訳ありだと匂わせるテクニックだ。これにより、もしかしたらお忍びの貴族の道楽かもしれないと思わせることができる。そうなれば、下手に愛想と売り物をケチるよりもいい結果が返ってくると思わせることだろう。


「……銀貨3枚。それでちょうどいいのを見繕ってやる」


 イアンちゃんのほうに顔を向けると、こくんとうなずく。どうやら適正価格のようだ。


「頼むよ」


「わかった」


 そういうと、色々握りや振りの具合や体重移動を計算した、現状で最も振りやすいと思われる一本を選んでくれた。その手間賃として銀貨3枚はプロ目線価格が入っているとはいえそう安くはないだろう。


「ありがとうな」


「また来な。お嬢ちゃんは成長期だ、すぐに駄目になるかもしれんからな」


「さて、装備は一通りそろえた。早速……と、冒険者登録が先だったな」


「そうです、忘れてないのは大事なことです。いつ思い出すかヤキモキしていました」


 イアンちゃんにも思い出した、えらい! と褒められた。40過ぎの……今の俺は40過ぎには見えないんだったな。


「なあイアンちゃん。俺いくつぐらいに見える? 」


「どうしたんですか急に……そうですねえ、20前半ぐらいだと思います」


 そうか、20年若返っていることになるのか。なら、昨日の作業で腰を痛めなかったのも納得だな。


「そうか、20前半か……俺、実は43なんだよね」


「異世界転移する際に若返っていることはよくあるそうです。なのであまり気にせずに、その分、疲弊していない自分の体を喜ぶべきでは? 」


「そうだな、そう考えるほうが自然か。よし、若返ってラッキーぐらいに思っておこう」


「??? 」


 二人の会話の流れが分かっていないセルフィが頭にはてなを浮かべまくっているが、さっそく冒険者ギルドに向かい、冒険者登録を行う。借金奴隷でも強制でなければ問題なく冒険者登録をすることは可能らしい。心で全力拒否していれば冒険者登録する際の水晶が弾き出し、その際は事情聴取される、という流れらしい。


 過去に、借金奴隷を無理やり冒険者にして肉壁として使おうとした例があり、大問題だとして全国的に一律禁止されている行為であるらしい。つまりセルフィはいやいや冒険者になろうとしているわけではない、ということが証明されたわけか。


 無事に冒険者証が出来上がったところで、時刻は午後三時ごろか。今からだと三時間ほど活動できればいいってところだな。今日はモンスター狩りにしよう。早速セルフィの腕前を見せてもらわないといけないな。本当に剣聖なのかどうか、判断するのは今からだ。剣聖なのか他のスキルなのか、しっかり見定めさせてもらおう。

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