第14話:価格交渉
話し合いが終わり、さっきまでいた店員を呼びに奥へ顔を出す。
「すまない、話し合いが終わった。この子を買い取ることにしたい。いくらだ」
「そうですか。お決めになりましたか。この子は……正直なところ性格も暗く、まだ幼いのでこれから育つ分も考えると……金貨4枚というところでしょうかね」
指を4本、差し出してきた。
「ちなみになんだけど、人が一年間生活するのにいくらぐらいかかる? 」
小声でイアンちゃんに確認する。
「そうですね、家がある前提だと金貨2枚ってところでしょうか。なので人一人分としてはかなりお安い値段になってると思いますよ」
「なるほど、ここからさらに値切るかが俺の腕にかかってるわけだな」
「どうするつもり……あ」
イアンちゃんは気がついたらしい。そう、俺には鑑定がある。奴隷をそれぞれ鑑定して値札をつけさせることによって、商売上の売り文句になるってわけだ。どんなスキルを持っているかわからない奴隷より、はっきりわかっている奴隷のほうが売れ行きが良くなるんじゃないか。
「さて、金貨4枚用意できますか? 」
「用意できる。それはさておき、ちょっとした商売の話をしないか? 」
「ほう、商売ですか。どのようなものをお出しできるのですか? 」
「俺は鑑定のスキルを持っている。バアさんたちみたいに固定で居るわけでもなく、それらのスキルを人数分、書き出すことも可能だ」
「なるほど、奴隷に値札をつけてくれるってことですか。……それはなかなか魅力的な相談ですね。2人で銀貨1枚ってところでどうですか? 」
「それはさすがに安すぎる。出張サービスつけて、3人で銀貨2枚だ。これ以上は譲らん。そっちとしても、奴隷が1人売れてさらに安値で出張鑑定までしてもらえる。これで十分だろ」
「んー……そうですね、それで納得しておきますか。では、次々に連れてきても? 」
「ああ、さっそく始めよう。紙とペンを頼む。それぞれの奴隷に自分の価値を文字として付けてやりたいからな」
鑑定結果はすべてカタカナで浮き出てくるが、実際の効果が同音異義語で別のスキルだったとしてもそこまでは責任は負えない。例えば詳細鑑定なんかのより上位のスキルがあって、ここでは漢字やひらがなを使用できるほどに成長するならばまだ商売っ気にもなりそうだが、今のところは鑑定レベル1ってところだからな。
より詳細な鑑定ができるようになるかの実験も含めて、ここで人数を稼がせてもらってしっかりと経験値にしていこう。剣術のレベルも1とか2がついてたわけだし、鑑定だって人数を稼げばレベルが上がってよりわかりやすくなるかもしれない。それに賭けてみよう。
次々に奴隷が運ばれてくる。こんなに人数いたのか、と思うほどに大量の人数だ。だが、これも仕事のうち。それぞれの人を見て、ついているスキルを鑑定し、カタカナで出力して次の人に回る。イアンちゃんとセルフィちゃんにも手伝ってもらって、スキルを書いた紙をどんどん渡してもらって、それから奴隷の整列にも協力してもらう。
半日かかって、150名ほどのスキルリストを書き出した。そしてその人数分として、金貨1枚を受け取る。
「正直助かりました。これで奴隷の売込みもより積極的にかけることができます」
すっかり商人口調になった奴隷商からお礼を言われる。完全に対等な商売相手として見られているのが口調の変化から見て取れる。
「こっちも、実質金貨1枚割り引いてもらったようなものだからな。気にすることはない」
「では……今回の取引どうもありがとうございました。こちらも精いっぱい商売をやらせていただきます。では、遅くなりましたが奴隷の所有権の移譲手続きを始めさせていただきます」
奴隷商が使役術を使って、自分の所有している奴隷から、所有権を俺へと移していく。セルフィちゃんの手の甲に刻まれた文様が光り、そして俺の手の甲にほのかな光を放ち始めたが、すぐに消えた。
どうやら、奴隷の主としての文様もこちらの手の甲に刻まれるらしいが、主のほうは“奴隷使役紋がある”という瞬間だけ光り、普段は消えたままらしい。奴隷の主であることは隠して生活できるようにすることができるようだ。
「これにて、契約の更新は終了です。試しに、何か命令をしてみてください。人間としての尊厳を辱めるような行為でなければ借金奴隷なら問題なく聞くはずです」
「では……セルフィちゃん、立って」
セルフィちゃんはそういうと、素直にビシッと立つ。
「右手上げて、右手下げて、左手上げて、右手も上げて、つま先立ちになって、両手下ろして」
言う通りの動きをしていくセルフィちゃん。元気があって可愛いなあ。
「セルフィ、自己紹介と年齢、それから……これから何をしたいかを言ってみて」
「はい、セルフィです。年齢は12歳です。これからは……ご主人様のお役に立てるように頑張ります」
素直に自己紹介をする。セルフィが自分の名前を名乗ったところからしても、どうやらこの世界で名字を名乗ることはないらしい。つまり、俺はタカナシで通すことになるわけだな。
「タカナシだ。セルフィ、家族だと思ってくれていい。これから頑張っていこう」
「家族……タカナシさんも私を借金のかたに売り飛ばすんですか? 」
あ、やばい。また目元が暗くなって声が震えはじめた。これはまずい話を引いたかもしれない。急いでとりつくろわなければ。
「ごほん、言い直そう。ご主人様のままでいい。俺の人生の目標は君を奴隷身分から解放することにしていくよ」
「そこまでして、私を買ってくれる、その理由はなんですか? そして、私だけを救ってもらえるわけはなんですか? 」
「それは、おいおい話していこう。とりあえず今日はここでできることはやった。もう昼を過ぎたことだし、ゆっくりその辺を話していこうじゃないか」
そのまま奴隷商を出る。もう日は高く昇っていて、今から昼食……というにはちょっと遅い時間かもしれない。どこかの屋台で済ませることにしようか。ホーンラビットの串焼きが売っていたのでそれを買う。一本銅貨2枚。肉の量からして……三本で一匹分、というところかな。
9本頼んでイアンちゃんと俺とセルフィで三本ずつ。これで昨日自分で狩った分のほとんどは自家消費してしまったことになる。なんだかもったいないな。でもまあ、これで腹は膨れたぞ。さて、宿に戻って今後の確認をしていかないと。まずはセルフィに事情説明を始めるところからかな。
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