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6 こわいもの

イーサンに導かれ、回廊を抜けた先。

開けた空間に出た瞬間だった。


――キン、と。

金属が打ち合う、鋭い音が響いた。


リリアはびくりと肩を震わせ、思わず足を止める。

視線の先には、激しく剣を交える騎士たちの姿があった。

朝の光を受け、剥き出しの刃が白く閃く。

重く、速く、正確な動き。

訓練であるはずなのに、そこには一切の容赦がなかった。


その荒々しい熱気の中で――ひときわ「静か」な存在があった。

騒がしいはずの空間で、そこだけ別の時間が流れているような錯覚。

他の騎士たちが肩で息をする中、ただ一人、呼吸すら乱していない男。

動きは最小限。

それでいて、誰よりも速い。


次の瞬間、乾いた音が響き、対戦相手の剣が虚空を舞った。

「……そこまでだ」

低く、よく通る声。

それだけで、場の空気が凍りついたように止まる。

男は剣を下ろし、ゆっくりとこちらへ視線を向けた。


――息が詰まる。


冷たい、という形容すら生温かった。

感情の揺れが、一切ない。

ただ「見る」という行為だけを冷徹に切り取ったような、無機質な視線。


(……こわい)


何かをされたわけではない。

けれど、近づいてはいけないと、野生の血が警鐘を鳴らしていた。

その視線が、一瞬だけリリアを捉える。

――それだけだった。


興味も、関心もない。

ただ、そこに「物体」が存在すると認識しただけの視線。

すぐに、視線は外された。

それは誰に対しても変わらない、均一で平坦なものだった。


「カイル。朝の修練は終わりか」

イーサンが静かに声をかける。

「……ああ」

短い返答。

カイルと呼ばれた男は、無駄のない所作で剣を鞘に納める。

「ご苦労だった」

それ以上の言葉は交わされない。

ただ、それで十分だった。


リリアは、息をするのも忘れたまま、遠ざかるその背中を見つめていた。

すぐに視線を外されたはずなのに。

なぜか――その一瞬の「無」が、網膜に焼きついて離れない。

(……こわい、のに)

逃げ出したいほど恐ろしい。

そう思うのに、どうしてか、彼が視界から消えるまで目を逸らすことができなかった。

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