第九話 困りごとは話してもらえますでしょうか?
どうやらお父様の腹痛は数分で落ち着いたようです。
それはそうとして、応接間のこの状況はなんでしょうか。
今メイリーン伯爵家には、ラーレント男爵家の人が来ています。
きっとレイランを連れ戻しに来たのでしょう。
しかも全員男性の方。少し困りますね。全員ぶっ飛ばしましょうか。
「レイラン。なぜメイリーン伯爵家にいるのですか」
「そ、それは……。アリアナさんがボクを助けてくれて……」
「なぬ?」
なぜ男性は似たような口調で話すのでしょう。
まるで見分けがつきません。困りましたね。
しかし、レイランの声が高い分男爵家の人も声が高いです。
男声ではアルトパートに入るでしょうか。
声楽にはあまり興味ございませんので、そこまで詳しくないです。
ただ、少し耳がキンキンしますね。それだけ怒っているのでしょう。
「アリアナ。なぜこのようなことになったか。わかるか?」
お父様が質問してきました。と言われても、私に思い当たることはありません。
私は昨夜、盗賊に襲われているレイランを救い、かくまっただけです。
今朝も盗賊の群れを掻い潜って、ここまで逃げてきました。
お古の衣類は全て置いてきてしまいましたが……。
それでも、私の服はまだあります。
「アリアナ。きっと彼らは、レイランを危険にさらした人物と思っているんだろう。真実を伝えるべきではないか?」
「ルイス兄様……。そうですね……」
私は、昨夜からの話を全て伝えます。それだけで認めてくれるとは思っていません。
むしろ、反感を持たれる可能性だってあります。
それでもいいのです。もし私が気に食わなかったら、ぼっこぼこにすればいいので。
いえ、ぼっこぼこでは満足できませんね。ぎったんぎったんにしましょう。
「以上が、これまでの経緯です。ご理解いただけたでしょうか」
「うむ、我が男爵家の令嬢を救ってくれたことは感謝します。しかし、なぜアリアナ令嬢はレイランを気に入っているのですか?」
「私は、同性愛者ですからです。どこぞの男性よりも、レイランのような、か弱い女性が好きです。彼女はものすごく頼りになります」
敬語って苦手なのですよね。不自然だと変に思われてしまいます。
ここは普通にを意識しますが、これもまた難しい。もう少し軽い世界に生まれたかったです。
それでも、男爵家の人は食いつきがいいですね。お父様とは違って話しやすいです。
口調はどうであれ、中身が大事です。中身が悪ければ意味がありません。
どうやら世間で私は暴君令嬢とよばれているそうです。
これも、街で暴れまくったからでしょうね。悪いのは盗賊ですが……。
あの神のブレスレットを持っていた女性は、無事でしょうか。
少し気になります。また襲われてなければいいでしょうけど……。
「わかった、ここからはレオナント伯爵と相談させていただきましょう。いいですね。レイラン。アリアナ令嬢」
「承知しました」
「はい。父上」
あらあら、来ていたのはレイランのお父様でしたか。
退室をお願いされたので、私たちは廊下に出ます。
ちなみに、応接間までの絨毯は薄い菫色です。
個人的に私が好きな色でもあります。
やることが無くなってしまいましたね。
「アリアナ。レイラン。そろそろお昼だ」
「そうでしたわね。行きましょう」
「はい!」
私たちは食堂へ向かいます。
メインの廊下は赤色の絨毯です。
本当にここは広いので、ものすごく役立ちます。
隣のレイランを見ますと、ずっと下を向いてました。
なにかあったのでしょうか。
「レイラン。困りごとがあったらすぐに言いなさい」
「え、あはい……。わかりました」
「それで、なにか悩みがあるのでしょう? 表情が曇っているわ」
悩み事を抱えるのはものすごくストレスです。
しっかり吐き出して、毒抜きをした方がよいかと。
レイランが言うには、男爵家に迷惑をかけているという気負いのようです。
彼女は昨日、夜の買い出しに出ていたそうで。
「それで、道がわからなくなって……。盗賊に襲われて……」
「なるほど、そこをアリアナが救ったんだな」
「はい……」
これはいい方向です。しばらくすると、応接間から使用人がでてきました。
きっと進展があったのでしょう。食堂に向かう足を止めて、引き返します。
廊下の燭台が揺れてますね。ここは窓も何もないのです。
あるとしたら、外側の部屋と中庭だけですね。
少し空気の循環を高めた方が良さそうです。
「戻りました」
「みんな、席につきなさい」
「『はい』」
直後、レオナントお父様が大きなため息をつきました。
白い髪が少し嫌です。あとで私好みに染め上げて差し上げましょう。
「今日から、レイラン・ラーレント男爵令嬢を引き受けることになった。侍女にアリス・シュナウトを指名する。そして、レイランが行動をする際は、必ずアリアナが付き添うこと」
「わかりました。アリス様は少々苦手ですが、しっかりとレイランをお守りします」
「頼んだぞ」
「はい」
これで、レイランが伯爵家に住むことになりました。
今日からずっと一緒です。仲良くしていきます。
むしろ、同性愛者として同性婚でもしたいですね。
この世界では同性婚は禁じられてますが、形式的なことはできるでしょう。
正当に籍を入れることは、きっと不可能でしょうね。そこは我慢します。
これで、この件は終わりました。なんだかものすごくワクワクします。
「アリアナさん。よろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ。楽しみましょう。お父様。ラーレント男爵様。快諾していただきありがとうございます」
しかし、彼らはまだ納得がいってないようですね。
少しずつですが、同性愛もしっかりとした恋愛なんだと証明しましょう。
今できるのは、それくらいしかありませんから。
久し振りの更新です。読んでいただきありがとうございます。
ぜひブクマ・評価をお願いします!!!!!




