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レズビアンな暴君令嬢は、清楚系王子様になりたい  作者: 八ッ坂千鶴
第一章

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第五話 道は色で示すとわかりやすくて安全です

「アリアナー! なぜあのようなみっともない姿を……!」


 レオナント伯爵が走ってきました。


 絵にかいた激おこぷんぷん丸ですね。赤を通り越しています。


 しかし、そんな速度で来られても困ります。


 私はルイス兄様にレイランの相手をお願いしました。


 彼は快く引き受けてくれましたよ。あとは、お父様を足止めするだけです。


「……ふぅ」


 とりあえず、余分の空気を吐き出しましょう。


 勢いよく吸って、構えます。右拳に力を入れて、一発お見舞いです。


 するとどうでしょう。伯爵お父様が風圧で押し返されていきます。


 これくらい簡単ですよ。朝飯前でも余裕です。


 しかし、お腹が空きましたね。私は朝から動きっぱなしです。


「お父様。先に朝ごはんをいただいてもよろしくて?」


「う……うぅ……」


 風圧で腹部を痛めたのか、言葉を失っています。


 そんなに強くしていないはずですが、鍛錬の差ですね。


 横ではルイス兄様とレイランが手を叩いています。


 これは祝福なのでしょうか。もしそうであれば嬉しい限りです。


「使用人。レオナントお父様を部屋へ」


「承知しました」


「アリアナとレイランは、俺についてこい」


 おやおや、いつの間にかルイス兄様の口調が変化しましたね。


 彼の本性は少しキザなのですよ。それでも頼りになる兄です。


 そして、私には、もう一人妹がいます。


 まだ小さいので、外へは出ていません。


 歳は四つでしたか。私と一回り違うのですよ。


「まだ食事をしていないんだったな」


「はい。兄様」


「今から食堂に案内する。そこで待っていてほしい」


「了解しました。レイラン。行きますわよ」


 ルイス兄様は無自覚者ですので、人を傷つけたか否かを判別できません。


 私はものすごく強メンタルなので、大丈夫ですけどね。


 対して、レイランは少し肩がすくんでいます。


 ルイス兄様が怖いのでしょうか。まあ、初対面だけですからね。


 兄様は最初はいいのです。後が悪すぎるのです。


「兄様、レイランが怖がっているわ。もう少し口調をオブラートに包んだらどうかしら?」


「これでも、かなり控えているぞ?」


「そもそも論ですわ。もっと紳士的に接すれば婚約者も喜ぶのではなくて?」


 やはり、無自覚者を攻略するのは至難の業ですね。


 不用意に首を突っ込むべきではありませんでした。


 そういえば、レイランはこの屋敷が初めてなのでしたね。


 今向かっているのは食堂です。そこまでの絨毯はオレンジになっています。


「この屋敷は広いから、目的の場所がわかるよう絨毯の色を変えているのよ」


「そうなんですね。迷わなくて済みそうです。ボク方向音痴なので……」


 屋敷のホームルールが伝わってよかったです。


 ところで、さっきレイランが意味深なことを言いましたね。


 方向音痴ですか。だから、あの人の気配がしない路地にいたのですね。


 そこで盗賊に出くわしてしまったと。ふむふむだんだんパズルが揃ってきました。


 彼女も逃げるのに必死だったのでしょう。焦るのは当然です。


「今度は私がいるわ。安心なさい」


「はい! アリアナさん!」


 彼女は素直でいいわね。今後も付き合っていきたいわ。


 その前に、レオナントお父様を説得せねばなりません。


 今頃、ベッドでのたうち回っていることでしょう。


 恥かしい姿を見せるお父様が面白くて仕方ないですわ。


「アリアナ。何面白そうにしている」


「ええ。レオナントお父様が見事に無様を晒してましたので」


「そうか、まもなく食堂に着く」


 こちらとしては、沢山の野菜が食べたいところですね。


 食物繊維は必須です。もちろんパンも大事です。


「アリアナは今日も鍛錬をするのか?」


「ええ。もちろんよ。レイランも見るかしら?」


「見学できるのであればぜひ!」


 ほんと、簡単に落とせたわね。完全に眷属と化していますよ。


 さっきまで肩をすぼめていたレイランは、背筋を伸ばして歩いています。


 だんだん慣れてきたのでしょうね。慣れって怖いものです。


 私も男との関係に慣れればよかったのでしょうけど。


 正直それは無理でした。私はやっぱり女に限ります。


 そもそも、貴族の男は肝が据わってないのです。


 肝っ玉が、ものすごくちっちゃくてすぐビビります。


「兄様も、お化けが嫌いでしたわね」


「な!? アリアナそれは……!」


「今度また深夜に顔を出しましょうか?」


「それは、やめてくれ!」


 ほら御覧の通りです。彼は夜が怖くて、いつもぬいぐるみを抱いています。


 これでも二十歳目前なのですよ。子供過ぎて笑いがこぼれます。


 その点、レイランはしっかり者と見ました。


 昨日の小屋では、明かりを消しても怯えなかったのですよ。


 女に負ける男とはこういうことですね。きっと婚約者も気づくはずです。


 食堂に着くと、料理が並んでました。今日はパンとサラダ。スープの三点です。


 席に座ると、レイランが隣を狙ってきます。猫ってかわいいですね。


 レズビアンな関係では、女側を「ネコ」と呼ぶそうです。


 きっと男に甘えるかわい子ちゃんだからでしょうね。絶対服従してくれるかと。


 しかしそうされると、仕事が増えます。あまりよろしくないかもしれません。


「伯爵家の食堂って広いですね」


「そうね。ここでは、使用人も一緒に食事をするのよ。兄様、人数はどれくらいだったかしら?」


「約五十人だ」


「ですってよ」


 そう言いつつ、私はパンをかじります。


 どうやらライ麦パンのようですね。絶妙な香りがします。


 しかし、私はライ麦よりもフランスパンが好きです。


 あの硬いのが、顎の運動になって気持ちいいのですよ。


 しかし、フランスパンは庶民が食べるものです。


 貴族はライ麦かディナーロールくらいですね。


「ルイスさん。フランスパンの方が食べやすいです」


 おっと、レイランもフランスパン派でしたか。


 私と彼女は相性よきですね。嬉しいです。


 っと、ここでドアが開きました。


 そこから出てきたのは、腹を押さえているお父様です。


 顔も真っ青で具合が悪そうですね。ご愁傷様です。


 さて、ここからは説得と説教のお時間です。


 お父様。どうかご覚悟をお願いしますよ。

読んでいただきありがとうございます。


下の☆☆☆☆☆ を好きな数お願いします


次回は明日8時です!!!!

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