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レズビアンな暴君令嬢は、清楚系王子様になりたい  作者: 八ッ坂千鶴
第一章

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第三話 猫には甘く接しましょう

「幼少期からです。あの麻袋はボクが最初に貰ったもので、ボクの願いしか叶えてくれないんですよ」


 レイランの言葉、少し引っかかりますね。


 彼女の願いしか叶えてくれない。そんな麻袋があるわけがないです。


 もう一度言いますが、この世界には摩訶不思議な現象はありません。


 それはつまり、魔法や魔術が存在しないということになります。


「それは本当なのかしら?」


「はい。アリアナさんが秘密を守ってくださるのなら。実際に見せますが……」


 レイランは食事の手を止めました。さて何を見せてくれるのでしょうか。


 私は上目で見ながら、食事を続けます。このシチューとってもクリーミーで美味しいんですよ。


 彼女が平民でないことはたしか。しかし、なぜあんなボロ服を着ていたのでしょうか。


 そこがものすごく気になりますね。ですが聞くのは今ではありません。


 レイランの手品を見させていただくことにしましょう。


「アリアナさん。何か欲しいものはありますか?」


「欲しいもの……。特にないわね」


「そ、そうですか……」


「とりあえずなんでもいいわ。金貨一枚はどうかしら?」


「わ、わかりました……!」


 レイランは麻袋を持ったまま目を瞑りました。


 すると、袋が光り出しましたよ。


 魔法も魔術もない世界なのに、少し不思議です。


「できました。見てもらってもいいですか?」


「ええ」


 麻袋を渡されたので確認してみましょう。


 そこには、ポツンと金貨が光っています。


 中から取り出して、本物かどうかチェックしますと……。


「本物の金貨ね」


「は、はい!」


 こんな簡単に金貨を手に入れられるのなら、彼女は服を買えたのではなくて?


 しかし、それでは目立ちすぎます。だからボロ服を着ていたのかもしれません。


「そういえば、ラーレントは男爵家の家名よね」


「はい……。その通りです」


 どうやら、レイランは男爵家の出身のようです。


 私よりは地位が低いですね。それでも、裕福ではあると思うのですが……。


 待ってください。レイランが涙を浮かべています。


 私はなにか悪いことを言ったでしょうか。


 レイランが崩れていきます。そうですか。逃げてきたのですか。


「気に障ったなら謝ります。どうか顔をお上げなさい」


「あ、ありがとうございます……」


 ゆっくり立ち上がったレイランは、椅子に移動しました。


 しかし、その顔は真っ赤のままです。涙の熱が冷めてないのでしょう。


 私は外の様子を確認へ。はい、追っ手はいないようですね。


 ここが見つかってしまえば、私は連行されてしまいます。


 強制的に再婚約を締め付けされかねません。


 何度も言いますが、私は男に興味がないのです。


 本当に、この気持ちを理解してほしいですね。


「レイラン。私は布団の準備をしてくるわ。怖いのなら私と一緒に寝なさい」


「け、けれど……。それはダメなのではないですか?」


「問題ないわよ。ここは私しか知らない場所だわ」


 レイランにはゆっくり食事を楽しんでもらいましょう。


 こういう時は、少し静かにしてあげた方がいいですからね。


 小屋には、少しですが藁があります。それを、二日かけて編み込んだ布団です。


 幾重にも重ねているので、クッション性はあります。


 保温性も高いので、寒さが顔を出す秋口でも問題ないです。


 ただ、ここには枕がありません。なので、頭の部分を二回折ります。


 これで簡易的な布団は完成です。二人で寝るには少し狭いですが……。


「レイラン。食べ終わったかしら?」


「はい! 今から食器を洗うところです」


「わかったわ。そろそろ寝る支度もしなさい」


「わかりました!」


 その間に私はレイランが寝る部分の増築をしておきましょう。


 ずっと編み込みを頑張ってきましたので、数十分で終わると思います。


 編むときは籠を作るイメージで、縦と横の藁を用意します。


 何度も重ねて、引っ張って。まるで織物を作っているみたいですね。


 編み込んだら、その上も編み込みます。そして、縦に藁を入れて二つを繋げるのです。


「洗い物が終わりました」


「ありがとう。助かったわ」


「ところで、アリアナさんは何をしているんですか?」


 レイランが物珍しそうに私の手元を見てきます。


 おっと、そこから顔を出すと私の視界が真っ暗ですよ。


 もう少し距離感というものを学んだ方がいいのではなくて。


 私は、レイランに編み方を教えます。彼女は物覚えがよくて助かりましたよ。


 二人でやれば速度も二倍。あっという間に、布団がセミダブルになりました。


「レイランも寝なさい」


「は、はい。お言葉に甘えて……」


 少し恥ずかしいのでしょうか。レイランが固まっています。


 そうですね……。一旦私が離れましょうか。


 すると、レイランが布団に入りました。私も続きましょう。


 こうして、肌を寄せ合うとものすごく暖かいですね。


 今の私は、もう立派な大人です。十六だから子供ですって?


 この世界では十五で成人なのですよ。お酒も飲めます。


 それもあっての、私は下戸なのです。アルコールの病を患いたくありません。


「今日は……ありがとうございます……」


「どういたしまして」


「麻袋、持っていると落ち着くんです。ボクをいつも助けてくれるので……」


「そうなのね」


 彼女にとって、あの麻袋は大事なアイテムなのでしょう。


 対して私は大切にしているものがありません。


 世間では暴君悪役令嬢という肩書をもらってますから。


 気に入らないものは、とことん壊してきましたね。


 特にピンクのドレッサーは鏡がバッキバキでしたよ。


 たしか、椅子を投げつけて壊しました。可愛いものよりも、かっこいい剣がほしいです。


「レイラン。私でよければ、一緒に暮らしなさい」


「女同士の付き合い……ですか……」


「悪くないわよ。私としては大歓迎だわ」


「じゃ、じゃあ……。よろしくお願いします」


 交渉成立ね。これで恋仲が生まれました。


 まあ、付き合っているとまでは言い切れませんが、よしとしましょう。


 夜は深いです。外は危険です。ロウソクの明かりを消して寝ます。


「では、おやすみなさい。レイラン」


「はい。アリアナさん」


 それからしばらく目を瞑り、眠りに落ちていきます。


 本日の夢は羊の寝顔が可愛かったです。まるでレイランのようですね。 


 本人に言ったら怒られるのでしょうけど……。これは秘密です。


 そして翌朝。早速事件が起こりました。


 私の小屋が盗賊に包囲されているではないですか。


 きっと、逃げたスキンヘッドの仕業ですね。


 まあ、仕事が早いこと。さっさと排除させていただきます。

次回は明日朝8時です。


☆☆☆☆☆を好きな数投げてください。


ブクマもぜひどうぞ。

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