第二話 悪者は蹴り飛ばすが吉です
「返してー。ボクの麻袋ー」
「へへっ。この小娘。まだあきらめない気だぞ。勝ち目はねぇのになぁ? あぁん?」
なんということでしょう。少女を襲っているのは、スキンヘッドの盗賊ではありませんか。
こんな現場だったとは、少し予定が崩れてしまいますね。
しばらく様子見させていただきましょう。
「お前ら! こいつから無理やりでも奪い取れ!」
「イエッサー!」
盗賊は五人組のようね。それも、みんなぎっざぎざのヤバそうなメンツ。
ここは正義のヒーローっぽく登場した方がいい気がしてきました。
おっと、青髪ヤンキーが無理やり麻袋を手に入れようとしています。
そして、黄色モヒカンと黒髪オールバックが少女の身動きを封じました。
「そうだ。そのままやれ!」
黒髪リーゼントが煽ってます。まるで極道の中の極道ですね。
そろそろ登場シーンでしょうか。ショ○カー撃退作戦開始です。
私はこっそりと陰から出て、黒髪リーゼントの背中をくすぐります。
するとなんということでしょう。リーゼントが大爆笑してしまいました。
後ろにのけぞったところで、数歩バック。腹を狙って回し蹴りしましょう。
嬉しいことに、履いているハイヒールのつま先がめり込みました。
リーゼントは横腹を押さえて悶えています。
「な、何者だ!」
「何者ですって? メイリーン伯爵家令嬢、アリアナ・メイリーンよ」
「アリアナ・メイリーンだと!?」
そう、私の家名はメイリーンです。代々アリストラ王家に仕えてきました。
伯爵家でありながら、王位継承上位者との婚約は確約です。
それほど認められている名門中の名門ですから。
と、色々考えていましたら、オールバックが殴りかかってきたではありませんか。
ふらりと酔拳風にでもしておきます。ちなみに私が下戸ですが……。
「攻撃が当たらないだと!?」
「大振りなのですよ。動きは見切り済みでしてよ」
ふらりふらりと身体を揺らしながら、正確に避けていきます。
時折足の移動場所を制限させて、もつれさせましょう。
すると面白いことが起こりましたよ。
黄色モヒカンと脚が絡まって転倒してしまいました。
あとは、青髪ヤンキーですね。しかし待ってくださいよ。
一人足りないではありませんか。麻袋は近くにあるので、逃げたのでしょうね。
「大丈夫ですか? 怪我はありませんこと?」
「だ、大丈夫です……。アリアナ・メイリーン伯爵家令嬢様……」
「アリアナでいいわ。貴方名前は?」
「レイラン。レイラン・ラーレントです」
レイランという彼女。ものすごく気に入りましたわ。
それにしても亜麻色髪の彼女が可愛くて仕方ありません。
こんなにも可愛らしい人が、私と一緒に暮らしてくれるのならば。
「レイラン。私と小屋で過ごしませんか?」
「え? でも、ボクは……」
「その麻袋。お金ですわね」
「あ、はい!」
私は麻袋を持って中身を確認します。
金貨が三〇枚ほど。親のへそくりでしょうか。
「ついてきなさい」
「はい……」
私はレイランを小屋へ案内します。
小屋まではすぐそこ。到着すると、お湯を沸かします。
小屋でありながら、入浴できる場所もあるのですよ。
ものすごく便利すよね。普通小屋は物置ですから。
そして、ここには私の着替えもあります。
おさがりになりそうな物もあるので、そちらをレイランに着てもらいましょう。
まずはレイランの服を洗濯しましょう。庶民めいた服は捨てた方がいいです。
「アリアナさん。この服どうして捨てるのですか?」
案の定レイランが質問してきました。
私はしっかり事情を説明。簡単に飲み込んでくれたので助かります。
服を脱がせたら、お湯をためたお風呂へ入れます。
竹炭を使った洗剤で全身を洗って、オリーブオイルで香りと保湿を。
ここには、クリーム系の洗顔料がないのでかなり困っています。
貴族とはいえ、ここでは庶民的な暮らしをしていますから。
オリーブオイルを塗った髪はべたべたするので、お湯でしっかりと流します。
あくまでもコンディショナー代わりです。
「レイラン。これで大丈夫よ」
「あ、ありがとうございます」
「服と下着は用意しておいたから、そこに置いてあるものを使いなさい」
「ありがとう……ございます……」
レイランが着替えている間に私も入っちゃいましょう。
しかし、このドレスを脱ぐのは難しそうです。
まずは腰回りのリボンをほどきます。
スルスルと下の部分が伸びていきました。
そのあと両肩の紐をほどきます。これでようやく腕と肩が解放です。
胸元の紐を緩めます。太い筒状になりましたね。
一気に脱ぐと狂気のコルセットが現れました。
「レイラン。コルセットを外すの手伝ってちょうだい」
「は、はい……!」
レイランにコルセットを外してもらい、なんとか裸体を晒せました。
あらま、腰から腹にかけて薄い青あざができてますね。
着付けの人が容赦なく締めたからですよ。次やったら胸倉掴んで差し上げますわ。
「アリアナさん、背中が真っ青です……」
「わかってますわ」
私はお風呂へ入る。お湯に溶かした竹炭で身体を洗い髪を洗い。
オリーブオイルで髪の保湿。しっかり流して出来上がり。
スッキリした身体で全身拭きながら出ると、何やら美味しそうな匂いがしてきましたよ。
普段着ているシャツとズボンに着替えまして、長い髪を後ろへ束ねます。
私の髪は青系の翡翠色。ここではかなり珍しいそうです。
「アリアナさん。夕食作りました」
「ありがとう。気が利くわね」
「いえ、助けていただいたお礼です」
今日の夕食は、シチューですか。ものすごく美味しそうです。
お米がないこの世界では、パンが基本。この生活は個人的に好きかもしれません。
前世でもパンばかり食べてましたから。理由は朝寝坊です。
レイランが食べ始めましたね。私もいただきましょう。
「けれど、レイラン。これどうやってあの短時間に?」
「秘密です。ボク、いつも命を狙われてるので……」
「それはいつから?」
「幼少期からです。あの麻袋はボクが最初に貰ったもので、ボクの願いしか叶えてくれないんですよ」
なんともおかしな話なのでしょう。麻袋の秘密が知りたくなりました。
きっと、謎が隠されているとしか考えられません。
では、レイランの話を聞かせてもらいます。
もちろん、秘密厳守の秘匿事項ですよ。
20時台に第三話を公開します。
ブクマ・高評価よろしくお願いします




