第十七話 神の子も大変ですね
ここはどこでしょう。
ルーラについていったら変なところに来てしまったようです。
周囲には教会のようなものが見えますね。
白を基調とした建物です。それがいくつもあります。
こんな場所、初めて来ました。この十六年色々歩き回りましたが。
今回ばかりは、私も迷子になってしまいそうです。
「ルーラちゃん。ここはどこですか?」
「う……、う……」
ルーラが上手く言葉を話せないこと。
なんだか慣れ始めました。彼女もそれを理解し始めてるかもしれません。
ルーラは一人で教会を見て回ります。建物は全部で五つ。
私にはその違いもわからないです。ですが、彼女は気づいているのでしょう。
しばらくすると、教会から紫色の靄が出てきましたね……。
あれは瘴気というものでしょうか。かなり怨念が詰まっているようです。
それが、私やレイランを置いて全部ルーラの方へ。
彼女はその瘴気を全て受け止めるのかもしれません。
これでは、彼女がどうなるかもわからない。
私はルーラのところへ向かいますが、障壁で弾かれてしまいました。
すると、ルーラの正面にいたレイランが口を半開きに……。
「浄化……。全て……自分が……」
たった三つの単語。それに呼応するように瘴気が吸収されていきます。
彼女は神の子。同時に聖女である可能性も濃厚になってきましたね。
足取りはおぼつかないのか、その場で崩れていきます。
するとどうでしょう。空気は澄んで、空も雲が無くなりました。
きっと、檻から出てきた理由は、この教会の怨念を浄化するためだったのでしょう。
彼女は気づいていた。このままでは、この国が悪い方向へ向かうと。
命をかけてでも、この国を守りたい。国政を改革したい私と似ています。
国をよくすれば、情勢も何もかもがよくなっていく。
それは、住民が望んでいることかもしれません。
「ルーラちゃん! ルーラちゃん起きて!」
「レイラン。無理に揺さぶれば体調が悪化するわ」
「アリアナさん……。でも、彼女は……」
私はルーラの脈を確認します。まだ八歳くらいの彼女。
まだ幼いのに、こんな任務を任されているなんて放ってはおけません。
今彼女は取り込んだ瘴気の浄化をしているのでしょう。
苦しいはずです。痛いのかもしれません。
だからこそ、親の目線にならないといけないのです。
「ルーラを屋敷に連れていきますよ」
「は、はい! 麻袋……。お願い、この場周辺の地図を出して……!」
レイランが神の麻袋を使って地図を出そうとします。
しかし、麻袋は光るどころかピクリともしません。
ここが神聖な場所だからでしょうか。
そこで、ルーラの瞼が動きます。声が届いたのかもしれない。
ふわりと彼女の身体が浮き上がると、私たちの前で停止しました。
「アリアナさん。レイランさん」
「『!?』」
突然ルーラが普通に話し始めました。どういうことでしょうか。
私はレイランと顔を見合わせます。
失語症と言われていたルーラの声を、初めてはっきり聞いたのですから。
ルーラはふわふわと空を飛びながら、私の周りを動き始めました。
なんだか、彼女だけ周囲と違います。
「二人とも、ありがとうございます。自分はルーラ・レイス。二人が推測していた通り、神の子です」
「ルーラ・レイス……。聞いたことがない姓だわ」
「そうだと思いますよ。自分は、本物の神の間に生まれた人間です。勉強のために、この世界に降り立ちました」
ルーラ・レイス。それが彼女の本当の名前でした。
記憶力が高い私でも名前のデータベースにはありません。
加えて黒い服はいつの間にか純白に染まっています。
彼女は神。それが分かった今、状況がよりわからなくなりました。
ルーラは地面に足をつけます。ゆっくりと歩いてくると、レイランの麻袋に触れました。
「この麻袋は、自分が渡しました。レイランさん。貴方が選ばれたんですね」
「は、はい……!」
「効果が切れてる……。少しだけ預かってもいいですか?」
「はい……」
レイランがルーラに麻袋を渡します。
この段階で、地位は私よりも上です。国王よりもルーラが上です。
なんでそれを隠してきたのかわかりません。
きっと声を一つ言えば叶ってしまうから、押さえていたのだと思います。
「はい。直りましたよ」
「ありがとうございます」
「どういたしまして。ここの浄化も終わったし、会場に戻りましょう。自分は普段通りにしてますね」
ルーラはそう言って、表情を暗くさせました。
今の彼女は私たちが知っているルーラです。
ぼそぼそと言っているのは、どうしてでしょうか。
声もかなり細くなっていて、聞き取れないです。
まあ、それがこの世界での本来なのでしょう。
「ここから出るまでは普通に話します。街が近づいたら片言になりますが……」
「それでもいいです! ルーラちゃん。ううん。ルーラさん」
「さん付けとは……。少し恥ずかしいです」
ここでもレイランとルーラが仲いいのですね。
もう少しよそよそしい関係になると思いましたが……。
むしろ、結束力が高くなった気がします。
多分気のせいではあると思いますが……。
私たちはルーラの案内で街へ向かいます。
途中チンピラから絡まれましたが、全員私がぶっ飛ばしました。
それはものすごく爽快でしたよ。気づけば人の絨毯が出来上がってました。
街につくと、イベントも終盤戦。ボルテージが上がってきています。
ルーラはというと、少し寂しそうな感じの顔をしています。
「……」
街に入ったからか、黙り込んでしまいましたね。
まあ、本人が約束を守っただけです。
私とレイランを含めた三人で、普通の会話をすればいい。
今はこの秋祭りを楽しみましょう。これからバザーイベント開始です。
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