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レズビアンな暴君令嬢は、清楚系王子様になりたい  作者: 八ッ坂千鶴
第二章

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第十六話 怪力令嬢とは誰のことでしょうか

「……。あ……」


 ルーラが足を止めましたね。


 ここは湖畔のようです。青く澄んだ湖が広がっています。


 どうしてこんなところに来たのでしょう。


 彼女に関しては気になる点が多すぎます。


 やはり神の子だからでしょうか。使命を持つとは苦労しますね。


「あ、……れ……。こ……い」


「あれが怖い。ですか?」


「……」


 ルーラが指さしているのは、一隻の船です。


 それのどこが怖いのでしょうか。なんだかおかしい気がします。


 私が一隻と数えたのも無理はありません。


 この辺では普通の貨物船だったからです。


 この国は大きな湖に囲まれています。そこを貨物船が渡るのです。


 だからこそ、ルーラが言った言葉には違和感があります。


「ルーラちゃん。どうして?」


「あ……あ……。うぅ……」


 おやおや、泣いてしまいましたね。


 どうしましょうか。これでは状況が読めません。


 このままではあの船が、船着き場に着きそうですね。


 仕方ありません。今すぐ直行しましょう。


 ルーラが危険を察知しているのであれば、のんきに祭りを楽しめませんから。


「二人とも、私に掴まってちょうだい」


「はい! ルーラちゃん!」


「……」


「ルーラ……ちゃん?」


「だ……。だ……。だ……め……。だめ!」


 ルーラがはっきりしゃべりました。


 その声は貨物船の方へ向けられています。


 すると、どうでしょうか。貨物船が盛大に爆発しました。


 どうやら爆発物が積まれていたようです。


 とんだ大迷惑ですね。しかし、ルーラはどうして気づいたのでしょうか。


 もっと気になってきました。神の子って忙しいのですね。


 またルーラが走っていきます。今度はどこへ向かうのでしょうか。


 彼女を追いかけて数分。そこには、空挺が飛んでました。


 これも、何かのテロでしょうか。ルーラはそれを見つめています。


「だ……い……」


「あれは大丈夫だそうです」


「レイラン。ありがとう」


「……う、う……」


 ルーラがまた涙目になってますね。感情の脈が激しいです。


 空挺は王国上空を飛んでいます。地上から百二十メートルほどでしょうか。


 それにしても少し低い気がします。普段ならもっと高いところを飛んでいるはずですから。


 空挺は船舶と並ぶ移動手段です。物は貨物、人は空挺と呼ばれるくらいです。


 ですが、こんな低い位置を移動していれば、見張り台にぶつかってしまいます。


 これでは一大事のレベルではありません。


「た、た。も……。た……うぅ……」


「ルーラちゃん。無理しないで」


「……」


 ルーラがこくりと頷きます。可愛いですね。


 こうなったら、私が自分から行くしかありません。


 あの高さなら、家を伝って脚力マックスで飛べば着きます。


 ルーラをレイランに預けて、私は家の屋根に飛び乗る。


 そこから、猛ダッシュで助走をつけます。


 脚力の強さをためて、跳躍すると空挺の上へと辿りつきました。


 これくらい簡単です。余裕のよっちゃんです。


「さて、中に入りましょうか」


 空挺のデッキに降りて、そこから内部に侵入。


 そこには、空挺操縦士とチンピラがいました。


 どうやらハイジャックされてたようですね。


 これでは思うように動かすことができません。


 チンピラは排除しておきましょう。全員担いで、勢いよく投げます。


 弾丸のごとく飛んでいく姿は、ものすごく見映えがありますね。


 湖の中央で水しぶきを立てましたよ。お疲れさまです。


「操縦士、このままでは見張り台にぶつかるわ」


「わ、わかっています……! ですが、あの者たちに操縦桿を破壊されてしまい……」


「なるほど。そういうことでしたか。私にいい考えがあります」


 私は操縦席に立ちます。その状態から、どこが原因かを探ります。


 おやおや、レバー部分が外れているではありませんか。


 ハンドルの滑車もゴムが外れていますね。


 これは窃盗罪でしょう。なら、こうします。


「長いロープはあるかしら?」


「あ、ありますが……どうするのですか?」


「引っ張るのよ。私一人で十分だから安心なさい」


 これでは怪力令嬢という名が轟きそうですね。


 たしかに怪力の持ち主ではありますが、少し嫌です。


 やはり、暴君が気に入ってます。身体の暴れ狼が吠えています。


「これで……!」


「ありがとう。行ってきますわね」


「お、お願いします……!」


 私は前方デッキに出ると、空挺の船首にロープを結びます。


 結び方は罪人を拘束する際と同じです。


 この結び方は絶対に外れません。それくらい頑丈ですから。


 ロープの橋を持って外へ出ます。外の風が気持ちいいですね。


 秋の風は少しだけ肌寒いので風邪を引かないようにしましょう。


 ロープを手首に括り付けて、一気に引っ張ります。


 空挺の重さは巨大な城一つ分だそうです。わかりづらいですね。


 それでも、めいっぱい引っ張って方向を切り替えます。


 これは緊急着陸案件でしょうか。そのまま湖の方まで運びましょう。


 高度が下がっていますね。危険すぎるので、どうにかしたいものです。


「アリアナさん! 凄いです!」


「ありがとう」


「あ……が……れ……」


 ルーラが何か言いましたね。空挺の高度が上がっていきます。


 そのまま、私は湖畔へ移動し水上着陸させました。


 これでどうにかなるでしょう。と思ったら沈み始めましたよ。


 大問題ではありませんか。中の従業員は無事でしょうか。


「う……い……て……」


「ルーラちゃん?」


「う……い……て……」


 ルーラの言葉が大活躍してますね。空挺が水に浮きました。


 これで大丈夫です。空挺の人を外へ移動させましょう。


 なんやかんや事件続きでしたが、ルーラがいなければ祭りがめちゃくちゃだったかもしれません。


 それでも、こうして人の笑顔を……。


「あ……あ……」


「どうしたんですか?」


 どうやら、まだまだ事件は続きそうです。いつになれば祭りを楽しめるのでしょうか。

次回更新は、明日20時です。


よろしくお願いします

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