第十三話 子の責任は親がとるべきです
「失礼いたします。国王陛下」
国王のいる部屋に入ると、そこにはバラの香りが漂ってました。
この王城には、私の屋敷よりも広い庭園があります。
昔王子と一緒に遊ばされたものです。
七歳になる前の私は花が好きだったそうです。
しかし、なんやかんやで私は嫌いになりました。
むしろ、見ていると目がちかちかします。
それがいやなのです。緑は目の保養になるといいますけどね。
「よく来てくれた、アリアナ伯爵令嬢。隣にいるのは、レイラン男爵令嬢だったか」
「は、はい……!」
「レイラン。もう少し肩の力を抜きなさい」
かなり強張っているようですね。
もっと気持ちを柔らかくしてくれればいいのですが……。
まずは、レイランを椅子に座らせます。そして、私が隣に。
なんだか緊張してきましたね。相手はこの国で一番偉い人ですから。
「まずは、我が王子が無礼を働いてしまい申し訳なかった。親として謝罪させていただく」
「そんなもの不要ですわ。そもそも、武も中途半端。学院では平均値の王子だから引き受けなかったのですから」
「そういうアリアナ令嬢は学院に行ってないではないか」
はい、その通りですね。私は学院には通っておりません。
通うとしても、週に二回ほどでしょうか。
通う気が起きないのです。皆さん私よりも弱いですので。
それなら、大人とやり合った方が楽しいです。
大人は力があります。経験があります。
それを全て私にぶつけて欲しいのです。
「私は学院に興味はございませんので」
「それで何を学問としている」
「武術です。武術だけは自身があります」
基本的な動きはできます。応用も少し可能です。
ただ、どこぞの武人よりは弱いかもしれません。
これはまた別ですが……。彼女と同種にされたくありません。
「それで、なぜレイラン男爵令嬢がいるのかね」
「はい。本日は大事なことをご報告に参りました」
「大事なこと……」
「この度私アリアナ・メイリーンは、男爵令嬢レイラン・ラーレント様と婚約いたしましたことを、お伝えに参りました」
国王が驚きの顔をしていますね。それはそうでしょう。
本来であれば、私の隣には男性がいるはずなのですから。
ですが、今私の隣には女であるレイランがいます。
これが許されるはずがないことは、重々承知の上です。
それでも、これは改革のための第一歩。
少しでも理解してもらわないといけません。
「レイラン令嬢は男爵家の出身。アリアナ令嬢よりも身分が下。加えて、女相手だとは……」
「許されざることであるのもわかっています。ですが、私は彼女が好きなのです。心から愛しています」
「ぼ、ボクを……ですか?」
「ええ」
アドリブも程々にしたいですね。
想定以上に首を突っ込まれてしまっています。
実力行使は不可能ですので、言葉でしっかり伝えないといけません。
それにしても、このローズの香りが気になります。
少し強すぎるのではないでしょうか。
「国王陛下。この香りは少々強すぎるのではないでしょうか」
「ボクもそう思います。かなり強い気がします」
どうやら、レイランも同じことを思ったようですね。
いくら香水を使ったとしても、限度がありますから。
国王陛下は椅子から立ち上がります。
香水は入口に反対側にありましたか。
風が当たる位置なので、充満するのも無理がないですね。
「これでいいだろう。しばらくすれば香りが落ち着くはずだ」
「感謝いたします」
「それでだが、なぜ我が息子を選ばなかった」
「それは、先ほどお伝えした通りです」
この国王は痴呆症かなにかでしょうか。
さっきの話がすっぽり抜けているようです。
親もへなへなしているのなら、子供もへなへなしているものですね。
やはり、しっかりした人の下でないと、上手く育たないようです。
「レイランは国王陛下の子供よりもしっかりしています」
「それほど、我が息子をけなすのか」
「ええ。深淵深くまで、言いますわ。それだけ私を怒らせたのですから」
国王陛下はしっかりわかってくれたでしょうか。
もう少し話がしたかったですが、帰宅のお時間です。
席を立ち、屋敷へ帰ります。本当にあっという間でした。
「本日はお話ししていただきありがとうございました」
「こちらこそ礼をいう。レイラン令嬢。アリアナ令嬢と楽しく過ごしてもらいたい。今後もよろしく頼む」
「承知いたしました。国政の改革の検討をよろしくお願いします」
「うむ」
来た道を戻って屋敷へ。お昼を食べ損ねましたね。
売店で何か買いましょう。お金は一応持ってきてあります。
「レイランは何か食べますか?」
「じゃ、じゃあ、ボクはあそこのホットドッグを」
「では私も同じのにしましょう。子供の分も買って帰りますか」
「はい」
売店で買い物をして屋敷につくと、子供がお出迎えしてくれました。
ボサボサだった赤毛も綺麗にまとまっています。
なんて可愛らしいのでしょう。とても素敵です。
「名前は?」
「……」
「アリアナ。この子供、言葉を話さないんだ。どうにかしてもらえないかね」
どうやらお父様も手を焼いているようですね。
言葉を発することができない人は、筆談をするのが基本です。
私は使用人に紙とペンを用意させました。
テーブルのある部屋に行って、そこで会話をします。
子供にはペンを持たせて、私は声で伝える。
その解答を書いてもらうのです。
「さっきは突然で申し訳なかったわ。私はアリアナ。ここの令嬢よ」
すると、子供がペンを走らせます。そこには「ルーラ」と書かれてました。
ルーラとは彼女の名前でしょうか。ものすごぃ可愛らしいですね。
私も紙に書きます。同じ立場になるのが一番ですから。
「ルーラっていうですね……。初めまして、ボクはレイランです」
「……あ……。あり……」
ルーラがしゃべりました。しかし声が小さいですね。
頑張って振り絞っているのでしょうけど、あと一息足りないです。
言葉を発するのが怖いのでしょうか。なんだか親の気持ちになった気分です。
「無理する必要はないわ。ここに書いてくれれば、何でもしますから」
「……」
彼女は一体何が原因でこうなってしまったのでしょうか。
それでもルーラという名前なのはわかりました。
あとは、お父様次第ですね。彼女の面倒は責任とってみせましょう。
次は20時頃の更新を予定しています。
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