#50
魔物を使う? そんなこと……って、原作知識が!
(魔物の中には最初に見た生物を親だと思う習性を持つ種類や群れの長に忠実な種類もいる。そうした性質を利用して道具として使う人間もいる……だと?)
勿論簡単に出来ることじゃないしどの国、地域でも認められはいない。大体人を害する存在を利用するという考えがほとんどの人には受け入れないのだ。
「しかも恐らく、この魔物達はギルド長のものです」
「なっ……」
俺は驚きのあまり思わず声を上げたが、同時に納得した。道理でタイミングが良過ぎると思ったんだ。
「もしかして私達を正確に追跡できたのは……」
「貴方達ではなく、私を追っていたからでしょう」
犬型の魔物は嗅覚が優れていることが多い。事前にシルヴィさんの匂いを覚えさせていたら……
(そうなると、確かにギルドの人間が関わっている可能性が高くなるな)
シルヴィさんの同行も魔物に追跡させることが狙いだったのか? ってことは……
「待って。もし、あの魔物達がギルド長のものなら一体何が目的なの? わざわざ採取の邪魔をするなんて……」
リタがそう呟くと、シンシアがそっとシルヴィさんの方を向いた。
「私達に失敗させたかった……ってことですか?」
「……恐らく。依頼を失敗させて、再度貴方達に採取をさせるつもりだったのでしょう」
俺達が採取した素材は魔物に回収させ、再び俺達に依頼を受けさせる。それを繰り返せば大量の物資が手に入ると思ったんだろう。
(やり方が汚いな……)
手段も狙いも酷すぎる。こんな人が冒険者ギルド長だなんて考えたくはないな。
「言うまでもなくこれは違反行為、いえもはや犯罪行為です。私はギルド長を糾弾しなければなりません」
シルヴィさんの声は静かだったが、拳は硬く握りしめられている。真面目な彼女のことだからギルド長のしたことが許せないんだろう。
「俺達に何か出来ることはありますか?」
「いえ、これはギルドの問題です。貴方達の手を借りる訳にはいきません」
反射的に口にした俺の言葉をシルヴィさんはきっぱりと断った。俺達を巻き込みたくないという気持ちに加え、自分の手で方をつけたいという思いがあるんだろう。
「でも……」
シンシアが心配そうな顔をする。いくらシルヴィさんが強くても相手は組織の長だ。簡単には行かないし、危険も伴うだろう。
「大丈夫です。証拠はありますし、つてもあります。あとは少し時間があれば……」
もしかしたらシルヴィさんがギルド長を疑う理由は他にもあるのかも知れない。だとすると、今日のために前々から準備をしていたのかも知れないな。
(だとすると俺達が手を出したら邪魔になる可能性もあるな)
ちょっと心配だけど、ここは我慢してシルヴィさんから助けを求められるまで待つべきかも知れないな。
「貴方達は自分達のやり方で依頼を達成して下さい。私はギルドに行く前に合流します」
「分かりました。お気をつけて」
こうして俺達はシルヴィさんと別れ、当初の予定通り鬼人達を村に送り届けた後、〈等価交換〉で出した物資を冒険者ギルドに納品した。
*
スグルドでの依頼を全て終えた俺達は村に戻り、魔族を迎え討つ準備を始めた。
(ソウザ族の皆と鬼人族は思ったより上手く行っているみたいだな)
まあ元が元だから仲良しという状態からは程遠いが、互いに敬意を払って協力することは出来ている。不謹慎かも知れないが、今は共通の敵がいるって言うのも良いみたいだな。
(出城の建設も間に合いそうだな)
今、俺達は鬼人達の提案で森の入口近くに魔族と戦うための砦を作っている。彼らはそこで村を守る壁になるつもりだったらしいが、砦があればソウザ族も弓などで援護が出来るし、戦いで傷ついた人を安全に治療することも出来る。良いアイディアだと思う。
(誰も死なせない。そのために俺が出来ることは……)
俺が今しなければ行けないこと、それは目の前に積まれた金の使い道を考えることだ。
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