#48
次の日、俺達はある程度採取を終えた後に集まった。
「シルヴィさん、これを」
「お願いします」
リタとシンシアが採取した素材が入った袋をシルヴィさんに渡す。何故そんなことをするのかと言うと……
「じゃあ、後で」
シルヴィさんが俺達から離れて走り出す。するとそれに少し遅れて周りにいた犬型の魔物も動き始めた。
(よし、作戦通り!)
シルヴィさんの考えというのは簡単に言えば彼女が囮になって周りにいる魔物を引きつけるというものだ。
(奴らの狙いが俺達が採取したものならそれをまとめて持っているシルヴィさんを追うはずだ)
で、あらかじめ決めた場所で俺達が追いついて挟み撃ちにするという作戦だ。単独行動するシルヴィさんがちょっと心配だったんだけど、そのことを口にしたら逆に“私よりも貴方達だけの方が心配です”とたしなめられてしまった。
(シルヴィさんは副ギルド長でLV50以上。下手したら俺達全員よりも強いかも)
ひょっとして失礼なことを言ったかも知れない。後で謝った方がいいかな。いや、ここまでしてくれたことにお礼を言った方がいいかな。
”ロイド、そろそろ行った方が良いのではないか?“
”だな“
シルヴィさんは俺達が魔物達に見つからないように風上を選びながら目的地に向かっている。奴らの嗅覚の高さを考慮しての対策だ。
”リタ、先頭を頼む。奴らに気づかれないように距離を保ってくれ。シンシアは周囲の警戒を。俺は背後を見る“
オーレリアを介して返ってきた皆の返事を確認すると共に俺達は先へと進み始めた。一人になってもシルヴィさんが奴らに遅れを取るとは思わない。が、彼女一人に任せておく訳にもいかないからな。
(……それにしても静かだな)
元々魔物がほとんどいない森だが、今は気配さえない。素材がないせいか?
“着いたよ! もう囲まれてる!”
考え事をしながら進んでいると、すぐに目的地についた。崖には例の犬型の魔物が集まり、その先にはシルヴィさんが剣を抜いて構えている。
”シンシア、合図を“
“分かりました、兄様”
シンシアが預かっていた魔道具で俺達が着いたことを知らせる合図を送る。後はシルヴィさんの合図と共に……
ザン! ザン! ザン!
動いたと思った次の瞬間、三体の犬型の魔物が崩れ落ちる。これがシルヴィさんの剣……凄い!
「はぁぁぁっ!」
次々と隙のない斬撃を繰り出すシルヴィさんに奴らが怯む。よし、今だ!
「くらえっ!」
「やあ!」
俺達はわざと目立つように姿を現し、攻撃をしかけた。奴らの動揺を誘うためだ。逃げられると厄介だが、こうして奴らをシルヴィさんと挟み撃ちにしているからそのリスクはかなり低いはず。
「ギャン!」「ギャン!」「ギャン!」
一匹、また一匹と犬型の魔物が倒れていく。奴ら、何故か逃げ出す様子はないな。
(思ったよりも順調に事が進んでいるが……)
混乱して逃げだす奴もいるかと〈等価交換〉で魔物用の網まで用意していたんだけどな
「これで終わりですね」
遂に最後の一体!
(こいつを倒せば終わりだ!)
俺が一歩踏み出した瞬間──
「ガアアアァァァ!」
森の奥から叫び声が聞こえてきた! 何だ一体!?
「この声は!」
シルヴィさんは何かに気づいたらしい。が、彼女が何かを言うより速く……
ドカッ!
森から出てきた何かが犬型の魔物に飛びかかる。あっさりと倒れた犬型の魔物から袋を取り上げようとして、ソイツは俺達の方を向いた。
「ガアアアァァァ!」
体長は五〜六メートルほどの熊のような姿をしているが、鉤爪が異常に長く、腕は金属を思わせるように光る硬そうな皮膚に覆われている。この魔物は確かクロムグリズリー! 北の方に住む圧倒的な腕力とタフネスを誇る厄介な魔物だ。
(何でこんなところに!?)
間違ってもこんな街に近い森に現れるような魔物じゃない。一体なんで……
「……やはり」
でも、シルヴィさんは何かに気づいたようだ。一体何が分かったんだろうか。
「こいつは私が倒しま──くっ!」
シルヴィさんはクロムグリズリーの攻撃をかわしながら剣を振るう。洗練された見事な動きだが、その一撃は手甲のような皮膚を纏う腕に防がれた!
(相性が悪い!)
シルヴィさんの剣は鋭いが、奴の分厚い皮膚を貫くには力が足りない。というか、あのクロムグリズリーはそもそも一人で戦うような相手じゃないんだ。
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