#44
「ギルド長がお待ちです。すぐにこちらへ」
「あっ、はい」
副ギルド長は俺達を半ば連行されるように連れて行こうとする。まあ、それだけ切羽詰まってるってことか。
「新人のくせにギルド長直々の依頼かよ」
「しかもシルヴィさんに声をかけられるとか、許せん!」
シルヴィというのは副ギルド長の名前だ。シルヴィさんは銀髪をショートカットにした美人さんということもあってスグルドの冒険者の中ではかなりの人気者らしい。
(……ていうか、俺はやたらとヘイトを買ってるみたいだけど)
目立ちたい訳じゃないんだけどな……
「こちらです。ギルド長、イドさんです」
「すぐに通せ」
急き立てられるようにギルド長の部屋に着いた俺達は押し込まれるように部屋に入った。
「さて、やっと俺達の番だな。切羽詰まってるからな。手早く頼むぞ」
ギルド長はそう言うと必要なものが書かれた紙を俺に手渡した。
(これくらいなら、ニ〜三日ってとこか)
頼まれるものは一応レア度を調べて持って来ても怪しまれないかを調べている。ありがたいことにこう言ったことにも原作知識が役立ってくれるから、“これなら大丈夫”とか“これはヤバい”みたいなことが分かる。
“しかし、この街の者は皆現金よの……”
まあ、オーレリアがそう言うのも分かる。皆、自分の都合しか言わないもんな。
(まあ、それならそれでこっちもこっちの都合で利用すればいいさ)
”ロイドは大人じゃの……“
いや、単にウェルズリー家のやり方に慣れてるだけだけどな。
(鬼人達はこれで皆村へと送れる。余った時間はどうするかな……)
残された時間はあまり多くない。効率的に行かないと……
「ではこれで」
俺がそう言って席を立とうとすると、ギルド長が手を挙げた。
「待て。まだ一つだけ話がある」
まだ何かあるのか?
「難しい話じゃない。今回の依頼にはシルヴィを連れて行け」
「「「!?」」」
俺達が揃って困惑した顔をするとギルド長はそれ以上にびっくりした顔をした。
「どうした? シルヴィがいると何か不都合があるのか?」
「いえ、私達のような新人に副ギルド長が同行して下さるなんて恐れ多くて……」
何も言えなかった俺とリタに代わってシンシアがそう言うと、ギルド長は納得したように頷いた。
「確かにな。だが、理由についてはお前達もここに来るまでに何となく気づいているはずだ」
ギルド長にそう言われて俺はハッとした。
「……俺達は目立ち過ぎてると?」
「ああ。気づいているなら良かった」
ここに来るまでの周りの視線に気づけば嫌でも分かる。だが、それと副ギルド長の同行とどう関係するんだろう。
「妨害される可能性があると?」
「残念だがな」
シンシアの言葉にギルド長は苦々しい表情を浮かべた。
「君達への依頼が失敗するのは困る。だが、ギルドが大っぴらに君達を助けることは出来ない。それこそ君達への嫉妬や妬みを助長することになるからな」
元々俺達が特別扱いされている(ように見える)俺達への依頼にギルドが手を貸せばさらにそう見えるようになるだろう。
”別にロイド達が特別扱いしてくれと言った訳じゃないのにのぅ……“
まあ調査なしに冒険者になれたのは有難かったけど、ここまで騒ぎになるのはな…… メリットとデメリットのどちらが大きいのかは難しいところだ。
「だから、“査察”という形でシルヴィを同行させるということだ。勿論表向きの話だからな」
だが、今の話がギルド長の思惑の全てとは限らない。副ギルド長の同行が完全に俺達の護衛だけかと言うとそれは怪しい。
(俺達が秘密の採取ポイントを知ってるんじゃないかとか思ってる可能性はあるな)
俺達の採取方法については報告しているが、それはあくまでも俺達の自己申告で証明するものは提出していない。
(そもそもスキルに関することはギルドといってもおいそれと追求しないというのが暗黙のルールだからな……)
だから、おおっぴらには聞かないがこう言う搦手から調査するってのはあり得ることだ。
(困ったな。これじゃ、鬼人達を村へ送ることが出来ないぞ)
かと言って断るのは不自然だ。それこそ表向きは“査察”なんだから。
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