#43
それから俺達は鬼人達を次々と伏魔の森まで運び、ソウザ族の皆の力を借りて鬼人達を村まで運んだ。というのも呪いが解けても体力が戻るわけじゃないからだ。
(呪いは解けたが、レフさんやユーリのように歩ける者はほとんどいないな……)
というか、二人だって満身創痍だ。だから、ソウザ族の皆が村まで運んでくれなければほぼ間違いなく衰弱していただろう。
「こっちへ運べ。ゆっくりな!」
「意識がまだ戻らない者は奥だ!」
さらに村の一角には病院まで建てられていて鬼人達はそこでゆっくりと休むことが出来そうだ。
「主様、勝手にこのようなものを作ってしまい、申し訳ありません。」
「とんでもない。むしろ感謝したいよ」
それにしてもソウザ族の皆がここまでして鬼人族を助けてくれるなんて……
「不思議ですかな?」
「いや……まあ」
疑問が顔に出ていたらしく、そう聞いて来た村長に俺は頷いた。
「憎しみは当然あります。それは鬼人族にどんな理由があろうとも関係ありません」
そうだよな……
「しかし、今は魔物を恐れる必要はなく、衣食住を心配することはありません。そればかりか、主様がいて下さればもっと村は発展できるでしょう。主様のおかげで私達はこれからの未来に希望を持って日々生活出来るのです」
大したことをしたつもりはないけど、そんなふうに思ってくれてたなんて……
「ですから主様が良しとされることには黙って従う、それが我々の最善です。しかし、鬼人についてはそうも行きませんでした。主様には深い御考えがある、それは疑いようがないのですが、感情が……憎しみが理性の邪魔をします」
村長はそこで少し口を切った。実際今も完全に気持ちを整理出来ている訳では無いのだろう。当たり前だ。死人こそ出ていないが、住処を追われたんだからな。
「ですから、私達は主様を最も知るリタに判断を任せました。憎しみと主様の考え、その双方を公平に見比べた時、どちらを優先すべきなのか……その判断を委ねたのです」
………
「そのリタが鬼人族を助けるべきだと言ったのです。ですから、私達は彼らを助けることに迷いなどありませんよ」
「……ありがとう」
村長の言葉を聞いて俺の口からこぼれたのは感謝の気持ちだった。
(この信頼に応えなきゃな)
ソウザ族の皆は俺のことを信じてくれているからこそ、今のある憎しみを一旦棚上げにしてくれているんだ。
(その決断を後悔させちゃいけないな)
そのために俺が出来ること……それは村を守ることだ。
(魔族が現れるまで後僅か……必ず村を守りきってみせる!)
そして、その先もずっと。
※
村までの道を何度も往復して鬼人達を送り、依頼の期日が来たら約束の品を馬車に詰めて返していると、ようやく終わりが見えてきた。
(次の依頼で最後の鬼人達を運べそうだな)
村に運んだ鬼人達もかなり回復して来たようで、今は魔族の襲撃にどう対処するかを話し合っているようだ。
(原作知識によれば、ここで鬼人族は全滅しちゃうんだよな)
ここからどうなるのか。それは俺には分からない。だが、せっかく助かったんだから鬼人達には生き残って貰いたいが……
(俺次第って事か……)
鬼人達の生死については原作知識は頼れないかも知れない。何せ原作では鬼人族は全滅しているんだからな。
(つまりこれは俺が原作知識を改変できるかどうかを確かめることでもあるってことか)
原作知識は今まで一度も間違ったことはない。それはつまり、原作知識通りにことが進んできたってことにもなる。
(可能かどうかは分からないが……どちらにしても相当頑張らないと駄目だろうな)
気合いをいれてやらなきゃな!
「次は冒険者ギルドの依頼だっけ?」
「そうだったな」
考え事をしている間に冒険者ギルドに着いた俺達が扉を開けると……
「イド様、お待ちしていました」
ドアを開けた先には副ギルド長が! まさかここでずっと待っていたのか?
「あいつが最近噂になっているイドか……」
「特例でD級からスタートして近々C級に上がるらしいぞ」
周りの話し声が聞こえてくる。何か目立ってるみたいだな、俺達は。
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