#42
ゴゥゥゥ……
鬼人達の体を包んでいた黒い炎はすぐに消え、ユーリとレフさんはその場にバタリと倒れた。
「「「ユーリ、レフさん!」」」
俺達が慌てて駆け寄ると……
「うっ……」
「ああ……」
良かった……二人共息がある!
(……!?)
これは原作知識!
”心配ないじゃろ。二人から呪いの気配が消えておる“
「えっ……」
「あっ、ユーリの額の印が消えてる!」
シンシアの言う通りユーリの額にあった禍々しい印が消えている。これはつまりユーリが呪いから解放されたってことだ。
「俺の体の呪印も消えてるな」
レフさんもユーリも驚いてはいる。が、それは予想外という訳じゃない。
(これは鬼人族の族長の力か……)
呪いに冒された後、鬼人族の長は自らの力を全て使い、目的地に着いた時に呪いが解けるように呪いをかけたのだ。
(それもあってレフさんは他の人を先に……って頑固に言い張っていたんだな)
だが、族長の力は呪いだから勿論代償がある。まず、この二つの呪いについては鬼人族以外には話せない。さらに目的地に着く以外の方法では呪いが解けなくなるというおまけ付きだ。
(背水の陣というか、分の悪い博打だけど……)
いくら目的地である伏魔の森にたどり着いても戦えなければ守れない。そういう意味では合理的に思えるかも知れないが、そんなことはない。何故なら……
(たどり着けない者は確実に呪いで死ぬんだからな……)
呪いで弱っていく体に更に鞭を打つような枷……まさしく呪い。まさに苦肉の策だったんだろう。
「えっ……どう言うこと?」
「呪いが解けたの?」
リタとシンシアが混乱した声を上げる。う〜ん、どう説明したものか……
「実は……」
族長の力による縛りがなくなったユーリは二人に何があったのかを説明し始めた。
「呪いに呪いを!?」
「使命を果たすためにそこまで……」
リタもシンシアも驚いた顔をしている。まあ、そうだろう。こんなこと思いついても中々やろうとは思えないだろうからな。
“まさかそんな事情があるとはな。しかし、ロイド、そなたはあまり驚いておらぬの”
(……驚いてるよ)
これは本当だ。今落ち着いているように見えるのは原作知識で一足早く事情を知ったからだし。
(そう言えば、今回は何が”鍵“だったんだろう?)
鬼人達が黒い炎に包まれた時、俺は原作知識が降りてこないかとあれこれ考えた。そのどれかが”鍵“になったから降りてきたんだと思うんだが……
“どうかしたのかの?”
(あ、いや)
まあ、今はそれよりも……
「俺はリタと一旦村へ戻る。シンシアはここで二人と待っていてくれ」
「分かりました、兄様!」
※
「主様ようこそお戻りくださいました」
「リタもお疲れ様!」
村に戻ると皆が出迎えてくれた。
(変わったことはなかったみたいだな)
村長からの話だと、特に変わったことはなかったらしい。村を守る柵も完成したし、食料などの生活物資にもまだ余裕があるようだ。
(さて……こっちからも色々話さないとな)
スグルトでの動きとか依頼のこととかも共有しとかなきゃだけど、一番に話さないといけないのは鬼人のことだ。
「俺からも話さなきゃ行けないことがある。実は……」
村長はそう言いかけた俺を制して、口を開いた。
「分かっています。私達の考えは既に固まってます」
!?
「で、リタ。どうだった?」
「私はロイドが正しいと思う。鬼人達のしたことは許せない。けど……」
リタはそこで一瞬押し黙った。それは鬼人の置かれた悲惨な現状に対する同情や使命に対する悲壮な覚悟に対する敬意……そこには一言では言えない感情があるに違いない。
「とにかく私達は今こうして幸せに暮らしているけど、あの人達は私達以上の地獄を味わってる。だから……」
リタがそう言うと、皆は顔を見合わせて大きく頷いた。
「よし! 皆、行くぞ!」
「「「「「「おー!!!」」」」」」
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