#41
「ユーリ、俺よりアキムを助けてやってくれ。あいつの方が重体だ」
ユーリが運んだ鬼人、レフさんは担架から馬車に移されて尚、自分が最初に助けられることに抵抗し、ユーリに詰めよっている。
(参ったな……)
鬼人達は仲間意識が強い。それは良いことなのだが、問題もある。仲間を思う気持ちが強すぎて自分だけ助かるなんて納得出来ないのだ。
(全員運ぶって説明してもこれだからな……)
多分命令すれば従ってくれるだろうけど、あまりそう言うことはしたくない。だって、言うことを聞いてもらうために助けた訳じゃないからな。
「違うんですよ、レフさん。あなたにはみんなのために協力して欲しいんです」
「えっ……協力ですか?」
俺の言葉が予想外だったらしく、レフさんは驚いた顔をした。
「はい。レフさんが言われた通り、もっと重体の方はいます」
「だろう? だから──」
「ですが、森まではかなり時間がかかります。あなたより重体の方が耐えられるかどうかは分からないんです」
これはウソじゃない。馬車はどうしたって揺れるから体に負担がかかる。だから、本来病人を運ぶには向いていない。
「悪い言い方をすれば、あなたは実験体です。レフさんの体調なら本当に具合が悪ければちゃんと教えてくれると信じているからです。だから、もしそれが嫌だと言うなら俺には止めることが出来ません」
これもウソじゃない。レフさんなら大丈夫だと思ってる。もし、彼でも駄目ならもっと体調の悪い人の移動法はまた別に考えなくてはならないだろう。
「し、しかし……」
うん、まあ中々うんとは言ってくれないよね。酷い人はまだ意識さえないんだ。その人達を置いて先に行けるような性格の人達じゃないってことは短い間でもよく分かってる。
(後一押しなんだけどな……)
この義理堅い性格は嫌いじゃないんだけど、今は何とか納得して貰わないと……
「まあ、そうだよな」
今まで味方をしていてくれていたユーリが急に態度を変えた。
「いくら皆のためでも実験体ってのは嫌だよな」
「は……? そう言う訳じゃ……」
予想外の言葉にレフさんがポカンとしている。が、ユーリは止まらない。
「いくら俺達全員を救うためとはいえ……しかもそれが命の恩人であっても……」
「待った待った! そう言う意味じゃない!」
ユーリの言葉を否定するようにレフさんは手を振る。
「行った先が安全かどうかも分からない。場合によっては一働きしなきゃいけないんだ。いくら目的地に一番に着けると言っても割に合わないってレフさんが考えるのはもっともだよな」
「分かった! 馬車に乗るよ! だから勘弁してくれ、ユーリ!」
おおっ!
「じゃあ、レフさん。危険な仕事ですが、よろしくお願いします」
「分かった。任せてくれ」
レフさんは内心はどうあれ力強く頷いてくれた。この分だと他の鬼人達の説得もユーリに任せられそうだな。
※
俺達は途中何度か休憩を挟み、ようやく伏魔の森までたどり着いた。
(森には……しばらくしたら入れそうだな)
原作知識によればしばらくすると近くから魔物がいなくなるらしい。その隙に村に行くことにするか。
「ユーリ、レフさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫だぜ」
「ああ、大丈夫だ」
二人共元気そうだ。馬車の揺れによる影響を心配してたんだが、やはり鬼人族はタフだな。
「この森がお告げにあった場所……」
「我々の行くべき場所についに……」
ユーリとレフさんが感慨深そうに呟いたその時……
ドクンッ!
何かが蠢く音! これは!?
「がっ……」
「ああっ!」
ユーリとレフさんが突然苦しみ始める。一体何が起こったんだ!?
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ!
何かが蠢く音はどんどん強くなる。この音は一体何なんだ?
「見て、ロイド! ユーリ達の体の印が!」
リタの言う通り二人の体にある禍々しい印が動き回っている。もしかしてこの音はこの印が?
(何とかしなきゃ!)
だが、こういう時に頼りになる原作知識はうんともすんとも言わない。何故だ? 今までは何か閃いたはずなのに!
(何か”鍵“が足りないのか?)
原作知識は最初から全て分かるわけじゃない。何か鍵になるような情報に触れるとそこから誰か──俺の中にいる誰か──が思い出すように降りてくるのだ。だから、多分鍵になるようなことを思いつけば良いはずだ!
(鬼人、仮面、呪い、印…)
俺は鬼人に関連することを次々に思い出してみる。だが、全く手応えがない。
“ロイド、鬼人達が!”
オーレリアの声がしたその時、鬼人達が黒い炎に包まれた!
いつも読んで頂きありがとうございます!
次話も頑張って書くのでよろしくお願いします!




