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40/51

#40

(今帰ったところなんだけど!?)


 これはつまり断らせないつもりだろう。全く勝手な人達だなぁ……


(断る時間も勿体ないな……)


 こちらがうんと言うまで帰らないつもりだろう。何か助ける気が急に失せてきたよ……


「どうしよう、イド?」

「そうだね……」


 俺はリタに自分の考えを説明した。あ、イドって言うのは俺の偽名だ。


「確かに……それしかないね」


「お客様! イド様! 皆様をお通ししてもよろしいですか!?」


 女将の悲鳴がドアの外から響いてくる。どうやら限界みたいだ。


「今出ます」


 俺達は荷物を持つとドアを開けた。


「イド様、私冒険者ギルドの──」

「商業ギルドの使──」

「どけっ、俺はスミス様の──」


 ドアを開けた途端、我先にと七〜八人の男が俺達に詰め寄って来た。しかも……


「どけっ、邪魔だ!」

「お前が邪魔だ! 俺の主人の方が先だ!」

「何だと! ギルドに楯突くつもりか!」


 押し寄せてきた男達は今度は喧嘩を始める始末。やれやれ、どうしようもないな。


(この間にも鬼人達は辛い思いをしてるってのにな……)


 それは勿論彼らには知る由もないことだけどね……


「落ち着いて下さい。お話は聞いています。ですか、まだどの方のお話をお受けするかは決めかねています」


「でしたら、まず我が主の依頼を! どの依頼よりも報酬が高いはずです!」


「ふざけるな! ギルドの依頼が先だ! ギルドの評価以上に価値があるものなんてあるか!」


 やれやれ、また喧嘩か……


(決めかねてるって言うか、どれも似たり寄ったりだけどね)


 どの依頼も欲しい物と報酬が違うくらい。けど、金品は俺にとってあまり意味がない。貨幣は〈等価交換〉で一応アルに変えられるのだが……


(価値は使われている金属の価値と同じなんだよね)


 つまり、金貨や銀貨を貰っても同じ重さの金や銀と変わらないのだ。それにそうすると色々と問題もあって……


「聞いてください。ですので今ここで決めたいと思います」


「「「「「「「っ!!!」」」」」」」


 罵り合っていた皆が静かになった。


「このクジを引いて皆さんの依頼を受ける順番を決めます。」


 俺が出したのはさっき紙に書いたあみだくじだ。折って隠した先には数字が書いてある。線を引きまくったから俺にもどれがどれだか分からないけど……


「どなたから引かれますか?」


「「「「「「「……」」」」」」」


 さっきまで罵り合っていた男達は顔を見合わせる。互いに牽制し合ってるんだ。


「勿論、更に線を書き加えて頂いても構いませんよ」


「「「「「「「っ!!!」」」」」」」


 男達の目の色が更に変わった。何番目に線をどこに何本書き加えるのか……考えたって分かりようがないけど、この男達は考えるのを止めることは出来ないだろう。


「俺達は明日の準備をして来ます。戻るまでに決めておいてください」


 そう言って俺とリタはその場を後にしたが、男達は誰も引き止めなかった。だって、今はそれどころじゃないからな。


「上手く行ったね!」

「だな」


 無事に宿を出た後、笑顔を浮かべるリタに俺はそう言って頷いた。


「でも、何でクジにしたの? 後で確認しに行かなきゃいけなくなるけど」


「あの場でどの依頼を受けるか決めても絶対に揉めただろうからね」


 男達は自分の主人の依頼を受けさせようと必死だ。恐らくあの場で誰を選んでもすんなりとはいかなかっただろう。


(だが、俺やリタ以外の何かがその鍵を握っていたとしたら、意識はそっちに行くはずだ)


 ちなみに誰の依頼を受けるのかではなく、受ける順番を決めるのも面倒事を避けるためだ。多分、やるというまで彼らは離してはくれないだろうが、順番にやると言えば納得するだろう。


(順番に不満があるのなら彼らで決めて貰えば良い。どの依頼も俺にとってはあまり変わりがないからな)


 どうせ〈等価交換〉があればどの依頼も一瞬で終わるんだし。


「シンシアや鬼人達が心配だ。急ごう」

「うん!」


 俺達は急いでスグルドから出ると、鬼人達がいる森へと向かった。

 次話も鋭意執筆中! もしよろしければブクマやポイントをポチッとして頂ければ執筆力が爆上がりします! まだの方は是非お試し下さいm(_ _)m

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