#39
(そうだ……俺の〈等価交換〉が知られた訳じゃないんだ!)
見られたのは採取ポイントからの採取のみ。それさえ説明がつけば、ごまかせるはずだ。
(採取が増えたり、強化したりするスキルは……)
俺は〈等価交換〉のスキルリストを再度見直した。一つじゃ説明がつかないかもしれない。でも、複数あれば……
※
「なるほど、そう言うことでしたか」
次の日、冒険者ギルドに向かった俺達は挨拶もそこそこに素材の採取法について尋ねられた。ちなみにシンシアは鬼人達の治療に向かってるから、今は俺とリタ、オーレリアの三人だけだ。
「あなたが〈自然の恵み〉と〈広域化〉、そして彼女が〈採取名人〉のスキルを持っていると。だから、何もない場所でも素材が手に入れられたのですか」
目の前にいるギルド長と副ギルド長は流石に知っていたようだったが、この二つはハズレスキルの中でも特に珍しいスキルだ。
(〈自然の恵み〉は採取可能な場所を見つけ出すスキル、〈広域化〉は自分に与えられた効果をパーティー全員にも与えるスキル……どちらも実際に存在するスキルだ。
勿論〈等価交換〉で習得が可能で、実際に習得してきた。証明しろとか言われた時のためにね。
「盲点でした……確かにその二つのスキルがあり、〈採取名人〉のスキルを持つ仲間がいるのならこの辺りでも採取は可能ですね」
「ギルド長としてスキルには詳しいつもりだったが、こんなことにも気づかないとは……はっはっは! 恥ずかしいなぁ!」
副ギルド長が納得したように頷き、ギルド長は笑ってる。良かった……何とか納得して貰えたみたいだ。
(シンシアが考えてくれた俺達の素性も良かっただろう)
ちなみに俺達は“珍しい素材を求めて遠くから来た冒険者志望の旅人”と言う設定になっている。話の流れ次第では後で手続きをしても良いかもな。
「ただ、流石にこの辺りはかなり効率が悪いです。近日中に立つつもりです」
だが、俺達がそう言うと、二人の様子が変わった。
「っ!」
「それは困るッ!」
うわっ!
「今、この街は物流が途切れたせいで物資が圧倒的に足りない! 対策はしているが、どうしても時間がかかる!」
ギルド長は身を乗り出して大声を出し、早口でまくし立て始めた。
「君達の力があればより多くの物資を確保できるはず! 力を貸してくれ!」
まあ、そう来るとは思ってはいたが……まさか、こんな必死にこられるとはな。
「でも、僕らは冒険者ですらないですし……」
「勿論ライセンスは無条件で発行する。試験もパスだ。そして異例だが、D級から始めてもらうもりだ」
試験がパス……これはちょっと魅力的だな。試験には簡単な身辺調査があるって聞いたからな。
「君達の活躍は蒼風の爪からも聞いている。是非力を貸して欲しい! 勿論報酬は上乗せする! 更にこの窮地を乗り切った暁にはC級のライセンスを出させて貰うつもりだ!」
大盤振る舞いにも程がある。けど、別に高額の報酬が欲しいわけでも、冒険者ランクを上げたいわけでもないしなあ。
(恩を売れるかも知れないけど、今は他にしないといけないことがあるからな……)
鬼人達を治療し、早く村まで運ばないといけない。そのための手段を探さなきゃいけない。
「是非蒼風の爪と共に伏魔の森の近くまで素材を採りに行って来てくれ!」
「君達なら出来る!」
ん? 伏魔の森?
「伏魔の森の近く……蒼風の爪の皆さんがいた場所ですか?」
「ああ、そうだ。もうあの辺りしか採取が出来そうな場所はないんだ」
確か蒼風の爪は馬車いっぱいに採取した物を詰めてここまで運んでたな。あれと同じことをするってことか。
(ってことは馬車で伏魔の森の近くまで行って採取するって仕事か)
待てよ、ということはもしかして……
「少し考えさせて下さい。私達はまだ色んな方から呼ばれていまして……」
そう言って俺は手紙の束を見せたが、ギルド長と副ギルド長は中々俺達を離してくれなかった。必死なのは分かるけど、ちょっとはこっちの事情も考えて欲しいなぁ……
※
(ふぅ……疲れた)
呼ばれた人に全て会いに言って宿に戻ると、もう昼を大分過ぎていた。えらく時間を使ってしまったな。
(鬼人達のところに早く行かないと。アイテムが尽きているかも知れない)
鬼人達は皆生きているのが不思議な状態だ。ポーションや食料が不足すれば死んでしまう可能性さえある。
(大体あの人数をシンシア一人に任せるのには無理がある。早く行ってやらないと!)
準備を終えて鬼人達の元に向かうとしたその時、ノックと共に宿の女将の声がした。
「お客様、各ギルドの方々からの使いの方が来られています!」
な、何ぃ!?
いつも読んで頂きありがとうございます!
次話も頑張って書くのでよろしくお願いします!




