#38
スグルドに入り、宿に戻るとわざわざ女将が俺達を出迎えてくれた。
「遅いお帰りでしたね。心配しました」
「申し訳ない。仕事がはかどりすぎて……門限は何時なのでしょうか」
宿泊の手続きをした後、すぐにたったものだから規則とか聞いてなかった。迷惑をかけたのかも知れない……
「いえ、門限はないのですが、実は皆様を訪ねて来られる方があって……」
そう言うと、女将は何通かの手紙を俺に手渡した。
「置き手紙です。順に冒険者ギルド、商業ギルド、職人ギルド、それから……」
え、ええ!?
(うわっ、スグルドの領主からも呼び出されてる!)
一体何で!?
「とにかく部屋でご確認下さい。皆様また明日来られると言われてましたので」
「分かりました。ご迷惑をおかけしてすみません」
俺達は夕食をささっと済ませると部屋に戻り、分担して手紙を読み始めた。
「大体内容は同じだね」
「みたい」
手紙はどれも俺達が蒼風の爪と同行した際に採取した素材の入手先についてだ。
(ギルドだけじゃなく、個人からのもある……)
ちなみに個人からのものは欲しい素材について聞いてきてる感じだが、内容は大差ない。
「思った以上に注目されちゃったみたいだな」
「だね……」
「兄様の凄さがようやく皆にも分かってきたみたいですね!」
何故か嬉しそうなシンシアの笑顔を見ながら俺とリタはため息をついた。ちょっとした実験のつもりがまさかこんな大ごとになってしまうなんてな……
“良いではないか。礼はたんまり貰えるんじゃろ?”
あ、オーレリアの声だ。鬼人達のところにいる時には何も言わなかったから寝ているのかと思った。
「確かにそうだけど、言われたものをロイドのスキルで片っ端から出していったら騒ぎになるよ。小一時間採取しただけでこんなことになってるんだから」
リタの言う通りだ。この辺りの物資不足をちょっと甘く見過ぎていたのかも知れない。
(採取ポイントのことを教えてあげればスグルドの人達は助かるんだろうけど、俺のことを手放してくれなくなるだろうしな……)
冷たい言い方になるかも知れないが、俺はウェルズリー家を追放された身だからここの人達の生活を守る立場にはない。それよりも……
(俺はここの人達よりも村で待ってくれているソウザ族の獣人達のことや助けると決めた鬼人達のことを考えるべきだ)
となると、情報の出し方は考えないといけない。俺の行動に制限がつかないように……いや、俺やソウザ族のみんなにとって有利になるように動かないと。
「騒ぎが大きくなると兄様の素性が知られてしまうかもしれません。そうしたら兄様の偉大さを全く理解できない愚かな父はろくでもないことばかり考えるでしょう」
確かにそう言う危険もある。何もないはずの場所にモノが溢れかえれば父やダズリーは俺がここにいると気づくに違いない。
“なるほど、中々面倒くさいのぅ”
元々の性分なのか、記憶喪失ゆえの知識の無さの影響なのか、オーレリアはあまり興味が無さそうだ。まあ、彼女らしいと言えば彼女らしいが。
「たまたま見つけた……ってのは駄目だよね」
「それで納得してくれるかは分かりませんね。確かにあそこには何もありませんでした。それはここの人の方がよく知っているはずです」
周りには何もないからこそ蒼風の爪はわざわざ危険を冒して伏魔の森の近くまでやって来たんだろう。それを初めてきた俺達がたまたま見つけたってのは説得力がないか……
「何も明かさずに誤魔化すのは無理かもしれないな」
だが、何をどれだけ明かすか……その匙加減が難しい。
(実際にあるスキルで俺の〈等価交換〉に近いものは……ないか)
実際に存在するスキルを持っていることにすれば大きく目立たないかも知れないと思い、俺は〈等価交換〉で出てくるスキルリストを見て見たのだが……流石にそんなものはなかった。
「でも、兄様のスキルは今まで誰も発現したことのないユニークスキルです。そのお力の一部だけでも私達にとっては特別で、目を引きます」
「え? 採取出来る場所が分かるのも〈等価交換〉の力なの?」
リタにそう言われて俺はハッとした。
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