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32/51

#32

 魔物を避けて伏魔の森を抜けた頃には日が暮れようとしていた。


「今日は野宿かの?」


「徒歩だと近くの町に着くまでに夜になりますね」


 最近、魔物の動きが活性化していて以前のように遭遇を避けて森を移動するのが難しくなっている。


(魔族の襲来が近づいているせいかな……)


 俺がそんなことを考えていると……


「っ! 誰か魔物に襲われてる!」


 リタがそう言って指を指した先に冒険者らしき一行が魔物と戦っているのが見えた。


(相手はオーガか……)


 ベテラン冒険者でさえ警戒する魔物だ。冒険者達も上手く連携して善戦しているが、旗色は悪い。


(こんなところにまで何で……)


 伏魔の森の近くにはダンジョンもない上、魔物も強いから誰も近寄らないと聞いていたんだけど……


「行こう!」


「うん!」「お供します、兄様!」


 俺達が近づくうちにも冒険者が一人、また一人と倒れていく。


(陣形が崩されたか……)


 陣形が崩れ、チームワークが寸断されるとまたたく間に冒険者達は不利になっていく。俺達が馬車に着いた時には


「怪我人を治療します」

「私も行くね」


 そう言ってシンシアとリタが別れていく。なら、俺の役割は……


(不意打ちで数を減らす! オーレリア、頼む!)


”任せるのじゃ“


 言うが早いか、体と世界の接点が消えていく。俺達はそのまま冒険者に止めを刺そうとするオーガに近づき……


 ザン!


 足を切られたオーガの体がバランスを失う。デカすぎて首まで剣は届かない。だからまずは足からだ!


「ガッ!?」


 痛覚が鈍いオーガは視界が傾いた原因が分からないらしい。まあ、分かったとしてもあまり意味はないんだけどな……


 ズバッ!


 倒れ込むオーガの首と剣が重なった瞬間に実体化する。オーガの首はあまりに分厚く切り飛ばすには骨が折れるのだが、奴が倒れこむ勢いが加わったことで一刀両断にすることが出来た!


「えっ……」


 死を覚悟していたであろう冒険者が驚いた顔を浮かべる。まあ、そりゃそうだ。


(後二匹だな!)


“一匹はリタが足止めしとる。次はあいつじゃ”


 食べ物の匂いでも嗅ぎつけたのか、オーガが馬車に向かっている。


(そうはさせるか!)


 俺は隙だらけのオーガの背後に切りかかった!


 ズバッ!


 ミスリルソードが深々と奴の背中を裂く。すると、オーガが歩みを止めた!


“ロイド!”


(頼む!)


 俺達が姿を消すと、今頃痛みを感じたらしいオーガが苦悶と怒りの声を上げて地団駄を踏む。


(致命傷にはならなかったが、注意は引きつけられたな)


 なら……


(〈調合〉!)


 力と素早さを一時的にUPさせる薬だ。これなら……


 ズバンッ!


 この手応え……やったか!


「ガギ……ゴブッ!」


 先ほどのダメージもあってか、オーガは血を吐きながら倒れた。


(よし、後はリタの援護だな)


 俺はオーレリアと共にリタの元へと向かった。



「本当に助かりました。ありがとうございます」


「このお礼は街に戻ったら必ず!」


 オーガを片付けた後、シンシアのスキルで倒れていた冒険者達を助けた俺達は近くの街に戻る彼らの馬車に同乗させて貰うことになった。


「いえいえ、馬車に乗せてもらえただけで十分です」


「いや、そう言う訳にはいきませんよ!」


 リタの言葉に俺が助けた冒険者──彼らは五人で“蒼風の爪“というパーティーを組んでいるらしい──のリーダーのエドが首を振った。


「それにしてもオーガの群れをあんなに簡単に倒すなんて……実は高名な方なのでは?」


 ▲の視線がこっちに向いたのは、俺が仮面をしているからだ。可能性は高くはないと思うが、ウェルズリー家の者と顔を合わせると厄介だからな。


「いえ、これは魔物にやられた傷を隠すためのものですよ。それにオーガ達はあなた達と戦って消耗していたんでしょう」


「あははっ、気を遣って頂いて申し訳ない。ではそう言うことにしておきましょう」


 馬車は蒼風の風が拠点にしている街、スグルトに向かっていた。スグルトはウェルズリー家の領地の中心都市、ベルトルトのいわゆる衛星都市だ。


(身を隠しながら情報を集めるには丁度良いな)


 ベルトルトには良く行っていたから顔見知りも多い。ふとしたことで身バレしたら騒ぎになるからな……

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